第45話 逮捕

翌日、俺は首都イデアルに向かった。

黒のスーツ姿でバッチリ決め、ユースティティア本部があるビルの所へ、ロジャー・セラノに会うために、向かった。

以前、妹と会談したのも、ここだったな。


ロジャー・セラノ、現在32歳、18歳の時にユースティティアに構成員として、入り、それから、他のマフィア組織を潰したり、組織内で裏のビジネスで組織の拡大に貢献、メキメキと頭角を現していった。


だが、奴のサクセスストーリーもここまでだ、本部があるこの20階建てのビルの周りには、突入するため配備された警察がいる。

本部の厳重な警備を掻い潜り、隠密の為に、パトカーは無く、警官それぞれが、ビルの周りに植えられた木々の裏で隠れている。


そして俺は万が一、逃亡されない為の釣餌みたいなもんで、奴には、昨日、事前に偽の案件を用意していた。

偽の案件とは、麻薬の取引で俺は、スーツケースに、その麻薬もとい、中はダミーの小麦粉を持っている。


エレベーターで登り、20階にある本部のある所まで、たどり着く。

事前に渡されたインカムで通信を取る。

小型で、通信範囲も広く、地上から20階まででも、連絡が出来る優れものだ。

勿論、盗聴対策もしてあり、準備はバッチリだ。

エレベーター内で通信が入り、コーベットから『確認の為、スカーフェイス、ロジャー・セラノに会ったら、例の偽の案件を持ち出して、時間を稼げ、我々はその間に突入する』


『了解、時間稼ぐから、早くこいよ!突入の合図の言葉は、“らりるれろ”だったな 』


『そうだ、健闘を祈る』


何で、こんな回りくどい作戦をやっているかって、言うと、初めは、最初から警官突入で、身柄を拘束する筈だったが、アザレアがそれに対し、意見したんだ。


「オススメは出来ませんわ、警官突入しても、20階建ってのビルから、彼はジェットスーツで逃亡する恐れがありますわ」


アザレアの意見により、わざわざと今回の作戦に切り替えたんだが…上手くいくだろうか? いや…上手く行ってみせる。


キーン、と音が鳴った。

着いたようだ、本部の扉を開けオフィスには、ロジャーがいた。


「ガーベラ様、いや、スカーフェイス様の方が貴方には宜しかったかな? 商談の件は、驚きました、貴方から持ちかけて来るとは! 」

ロジャーはスーツ姿で、相変わらず、一癖二癖もある様子で俺を出迎えた。

バレているのか、そんな様子には見えないが…応接間まで、通されると黒服達が、立っている、ロジャーの警護の為だろうが、今回の作戦で、その黒服達は役に立つかな?


「で、スカーフェイス様、商談とは? 」


俺は机の上に、スーツケースを乗せた。

麻薬もとい小麦粉を30キロもあるんで、机に乗せた際には、ゴン!!っと鈍い音がした。

そして、スーツケースの中を開いて見せた。


「これさ!? 売り捌いてみる気はないか? 」


「これは…また、大量に用意しましたね」


ロジャーは、眉一つ動かさずに、ぶつをじーっと眺めていた。

流石に、疑っているな…。


「貴方が急に薬物売買の話をするとは、どんな心変わりで? 」


鋭い目つきで、こちらを伺っている…。


「いやー、この世の中は所詮、金よ、愛とか友情に、愛想がついたというかさ! 」


「ほほー、愛想がね…貴方の仇である私を目の前にして、それは、嘘臭く感じますな」


「へん、そちらだって、組織の腫れ物の俺にわざわざ会うたぁ、どういった心境の変化だよ」


それに、ロジャーは俯き、少し間をおいてから答えた。


「それはですね、見たかったんですよ、スカーフェイス! 」


流石にバレていたか、だが時間は稼げた、俺は事前に打ち合わせしていた合図を送る。


「らりるれろ」


今頃、警官がこのビルに押し寄せて、来てるだろう、だが、念には念をだ、ここで奴が逃げないように、更に時間稼ぎしなきゃな。


「フフ、ぶつの中身は、どうせ小麦粉なんかでしょ? 確認するまでもない」


妙に落ち着いた様子に、俺は違和感を持つ、コイツ…逃げないのか?


「おい、逃げないのか? 」


「逃げる? どうやってですか、最新のジェットスーツで、20階から逃亡するとかですか? 甘い、甘い、それも、アザレアの入れ知恵なんかでしょうが…貴方達、兄妹が何をしようともこのままでは、終わりませんよ」


余裕そうに構えてるのは、以前からの政治家共との癒着だろう。

だが、今回は違う。


「お前が頼りにしてる政治家共なら、諦めな…もう同じ手は使えない、政治家共々、豚箱行きだ! 」


「何ですって!? 」


「お前らと癒着している政治家は、今回、検事、特捜部が動いて以前のように、お見逃しは期待出来ないって言っているんだ」


ロジャーは、あちゃーっと手を頭にやり、一本取られた様子で、俺を睨みながら「今回は一本やられましたね、ですが! このままでは私は終わりませんよ…」


負け惜しみか…と思ったが、こいつの腹の底は分からん、また、悪事を働く為に、動くのかも知れん。

俺がそんな事を考えてるうちに、警察がやって来たようだ、その中にはコーベットもいた。


「ロジャー・セラノ、貴様を薬物、人身売買等、の罪によって身柄を拘束する!! 」


※※※


ロジャーや抵抗した黒服達は、手錠をはめられビルを降りて、パトカーへ連行されていった。

去り際に不気味な笑顔を俺に見せ、そのまま、去っていった。


「お兄様! 」


アザレアが警官がたむろしてる中、俺へ駆け寄って来る。

俺に抱きつき、俺の安否の心配してる。


「銃とかで撃たれなかった? 」


「ああ、何事もなくな、これで俺の復讐も一段落ついた訳だな…」


これまで、色々あった…破門されたり、冤罪をかけられそうになったり、だが、これで…マークにも顔向け出来るよ。

思いにふけっていたら、アザレアは「これから大変ですわよ…事実上のトップが居なくなり二百十万人の構成員が、これからどうなるやら…」


「ああ、分かっている」


これから先の事なんて、誰も分からないさ、やるだけの事をやり、出来ないのであれば、誰かに、助力を頼む…行き当たりばったりようで、悪いが…それが俺が選んだ道だ。

誰にも文句は言わせない。

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