第11話 ラリー・フィールド

ラリー・フィールドは最高のボクサーだった。

闘争心溢れるボクシングスタイルで会場の客を熱狂させて、KOの山を積み上げる人気ボクサー。

人格も申し分なく、俺や未経験の練習生にも、なんの隔たりもなく接し、特に当時、荒れていた俺が横暴な態度で、接しても意に介さなく、ボクシングの練習でも、良く助言をしてくれた。

だが、そんな最高のボクサーが、今はこの世にいない。

世界ランキング一位になり、世界王者に挑戦することになったのだ。

世界王者…パウンド・フォー・パウンドでTHE・ONEとも呼ばれた男と試合し、その試合でKO負けで、亡くなり、リング禍としてこの世を去ったのだ。

ボクシングではありえる話だ。

試合中、打ちどころ悪かったとか、その日のコンディションで体調が優れない状態であがり、脳へのダメージからか、試合後に帰らぬ人となったとか、あり得る話しなんだ。

親しくしていた人が、もう動かなくなるを目の当たりにするのは、それが初めてだった。

…2年後、俺はプロボクサーになった。

でも、試合後に親友でマネージャーのマークを亡くし、犯人であるマフィア、ユースティティアへの復讐を胸に誓って……。


武者修行しにあれから一ヶ月立っていた。

「スカーフェイス!力み過ぎている、もっとリラックスしろ……良し、ナイスファイトじゃ」


スパーリングをしているとダマトのおっさんから檄が飛ぶ。

スパーリングパートナーは、リカルド・クエバス、ズィクタトリア、フェリクス州出身で、俺と同じBクラスのボクサーで、オードソックスなスタイルで丁寧なボクシングをする!

俺がジャブを飛ばせば、パーリングで弾き、ある一定の以上は、距離を詰めさせない。

そう思っていたら、右ストレートをダッキングで躱し、カウンターで左アッパーを繰り出してきた。

まだまだ、手の内を明かしていないな…どうこれから、展開するんだろうか。

すると、ブザーがなり、休憩にはいる。


「ここまでにしておけ、練習相手替えて、もう30ラウンドこなしてるじゃないか」


「ああ、そうだな…そうする」


俺はリングを降りて、グローブを外した。

練習生やプロが混じって、練習するジムは、汗でむせ返るような暑さがある。

そんな中に、タケシがジムに入り、俺に近づくと、次の対戦相手が決まったことを報告しに来たのだ。

しかも、中々の興奮気味だ。


「どうした、タケシ、そんな興奮気味で…」


「ちょいと、デーモスクラトスに戻ってな、あんたの対戦相手を物色してたのさ」


しばらく、見ないなと思ってたら、マネージャーらしく仕事していたのか。


「そうしたらよ、次の対戦相手はあのビクター・タイソンだぜ」

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