取り憑き影

@sho-pasta

取り憑き影

「最近、この学校のまわりでよく人が失神するらしいよ」


そんな噂は私のところにまできた。同級生のみんなはこの噂に便乗して、あることないことを付け加えて面白可笑しく話していた。


こうなってしまうと何が本当の話しなのかがわからなくなるのが常だ。


ある人は「失神した人は一日前までのことを忘れる」だとか、またある人は「影に通り魔が潜んでいる」だとか言った。


しまいには「悪霊に取り憑かれて性格が様変わりする」と言い出す人までいた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



今日は部活が長引いて、既に夕陽の落ちた空が赤く染まっていた。友だちと校庭を出て、とりとめのない話をしながら下校した。


友だちの家の前で「じゃあね」と言って別れようとすると、「影に気をつけてね」と返された。手を振りながら、「そんなのいるわけないじゃん」と応えて一人となった家路を進む。




「いるわけ、ない……よね?」


私は自然とそう呟いていた。


「脅されたからそう思うだけだよ……」


街灯がいつもよりも鈍く光っている。そんなわけない、と言い聞かせても、不安は収まりを見せず、逆に不安が渦巻いていくように感じる。


足はおのずと早くなった。にじみ出る汗は冷たい。握りしめた手はあまり良い感触がしない。



そのとき、フッと目の前通り過ぎる『物』があった。


ヒヤリとした。


首を無理やり『物』に向けようとすると……








◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








気がつけば自分のベッドの上にいた。


「あの後私は……」


寝起きの頭で考えるまでにしばらくかかった。私の体は温かい布団の中で震えていた。

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