第2話

少女の携帯には、今日も今日とて、ある人物からのメッセージが1件。


『かわな、今日もやる?』


栄養ゼリーを一息で吸いながら、跳ねた寝癖を整える。


『ごめんカシちゃん!今日お昼まで忙しいんだ!夕方からならできるから!』


夏休みの狂った生活習慣は、1日2日では取れるものじゃないと、少女は昨日までの夜更かし癖を恨んだ。


『そうなの?了解。頑張ってね。』


慌ただしく制服に着替え、少女は向かう先は─


『はーい!』


学校。夏休みに学校に赴く理由といえば、言わずもがな。


…補習である。




~~~~~~




セミの慟哭がけたたましく鳴り響く、蒸れた猛暑日の学校にて。


「あれ、ちょっと早かったかな。まだ誰も来てないや。」


かわなは、補習が行われる教室を眺めていた。


「というか今日何人来るんだろう。…もしかして私ひとり?」


「…入らないの?」


背後から響いた声は、かわなを吃驚させるには十分な声量だった。


「わぁぁ!?…ごめんなさい!びっくりしちゃって!」


後ろを振り返ると、輝くような赤髪が。


「…や、いいけど。」


かわなには、この髪に見覚えがあった。


「(あ、確か同じクラスの…須磨さん!須磨さんだ。)」




~~~~~~




『はい、じゃあ小テスト始め。時間は30分。分からないところがあったら、随時聞いてくれて大丈夫だからな。』




~~~~~~




カリカリと進むペンの音と、時折聞こえる教員の欠伸。


涼しげな部屋の中では、小テストが行われていた。


「…(あー!やっぱり古文苦手だ!全然分からない!)」


頭を抱え、かわなはペンの進みを止める。


苦手なものに古文もねじ込んでやろうか、と、頭の片隅で呟いて。


「…先生。ここ、分からないんですけど。」


『ん…問3か。童田はどうだ?おまえも解説欲しいなら、黒板に解説書いていくけど。』


そうだ、とかわなは思い出す。


「あ、いります!解説欲しいです!」


聞いても大丈夫だったんだ、と。


『了解。じゃあ─』




~~~~~~




『はい、じゃあ小テストおしまい。15分後に漢文やるから、それまで休憩しとけー。』




~~~~~~




教員は資料を取りにいき、教室には生徒だけが残った。


「いや〜…須磨さん、難しかったねえ。」


…といっても、生徒は2人だけ。


童田 かわなと─


「…まあ。 ‪…てか、‪”‬須磨さん‪”‬ じゃなくて ‪”‬古音‪”‬ でいいよ。苗字呼びは堅いでしょ。」


赤髪の少女、須磨すま 古音ふるねだけである。


「分かった!私のことも ‪”‬かわな‪”‬ でいいよ!…古音ちゃんも古文苦手なんだ?」


「…苦手。何書いてるか全然分からんし。」


苦手教科を皮切りに、2人は会話を進めていく。


「あ、そうだ!さっき、先生に聞いてくれてありがとう!解説貰えるの頭からすっかり抜け落ちててさ。すっごい助かったよ〜!」


「…いや、ウチも分からなかったから。」


突如、かわなは思い出す。


今が休み時間であることを。


「あ、古音ちゃん、ちょっとゲームしていい?」


「…ウチの許可いる?」


「ちょっと音出してやりたくてさ。うるさかったら言ってね。」


急いで家を出たため、しっかりとイヤホンを忘れてきたかわな。


しかしこのゲーム、なかなかどうして曲が良い。


3日前に初めて知ったゲームなのにも関わらずプレイ時間が20時間を越しているのは、かわなを飽きさせない魅力が尽きないからである。


「…ん。」


「よーし。15分あればボス1体くらいは…」


「…ん、もしかして ‪”‬あやなに‪”‬ ?」


‪”‬あやなに‪”‬ とは言わずもがな、『あやしあやかし、あなにやし』の略称。


公式の略称ではないが、ファンは総じてこの略称を使っているらしい。


「そうだよ!古音ちゃんもやってるの?」


「…やってる。」


「そうなんだ!マルチで一緒にやる?」


「…いいけど。ウチそんなに強くないよ。」


「大丈夫!私なんか始めてまだ3日だから!」


「…そうなん。」




~~~~~~




《《Su-Ma》が参戦しました。》




~~~~~~




徐に携帯を取りだした古音は、かわなのパーティへと早速参加した。


「おぉ〜!古音ちゃんのアバターかわいい!犬かな?…いや、猫?」


「‪‪”‬すねこすり‪”‬ ね。犬か猫かは…ごめん、ウチも知らない。」


犬のようでもあり、猫のようでもある。


どのみち可愛い、それが妖怪‪ ”‬すねこすり‪”‬ 。


「へぇ〜。あ、撫でるモーションある!よーしよし‪よしよし…」


大きく水掻きを広げ、わしゃわしゃと大胆にすねこすりを撫でる河童。


初めて見る絵面に、かわなは少々昂っていた。


「そういうかわなは…河童?」


「うん!キモカワいいでしょ!」


「…分かる。気取りすぎてない目元とか。」


つぶらな瞳が、こちらを見つめる。


「そうそう!ちょっとリアルな手先とか!」


繊細な手指を、ワキワキと動かす。


「…古音ちゃんもキモカワ好き?」


何故か存在するダンスのモーションで、かわなは河童を踊らせる。


「好き。…へぇ。ウチら、意外と話合うね。」


未だ類を見ないキモカワトークに花を咲かせるうちに、2人の間の壁は剥がれていく。


「ね!なんで今まで話しかけなかったんだろ私!」


「…顔じゃない?」


「へ?顔?」


「…や、ウチの顔って結構恐いじゃん。目ぇ鋭いし、歯ぁ尖ってるし、髪色もこんなだし。」


「‪なんで?」


かわなには、言ってる意味がよく分からなかった。


…いや、言っていることは分かる。


「 ‪”なんで‪”‬ ってそりゃ…恐かったら嫌でしょ。近寄り難いでしょ。」


「ぇ…だって、人の顔見ただけじゃ、中身まで分からなくない?」


‪ただ、”‬顔が恐い‪”‬ から話しかけない、という心理が、かわなには理解できなかった。


「…まあ、それはそうだけど。」


「今まで話しかけてこなかったのは、機会がなかっただけで。古音ちゃんの顔立ちがどうこうとか、そんな瑣末なことは関係ないよ。」


「…ふーん。そうなん。」


《レイドボス:酒呑童子が付近に現れました。》


「あ、古音ちゃん、レイドボス出たよ!倒しにいく?」


「…ウチらだけで火力足りるかな。河童もすねこすりもDPS微妙だけど。」


河童は水辺付近じゃないと100%の力を発揮できないし、すねこすりは攻撃が得意ではない。


フィールドは山で、水辺はごく一部にしかない。


「…まあ、やってみないことには!」


「…ん。了解。」


ダメ元だけど、今は勝ち負けなんてどうでもいい。


ただ古音ちゃんと遊びたい。かわなはそう思っていた。




~~~~~~




『はーい休憩終わり。次漢文なー。携帯仕舞え〜…って、どうしたお前ら。やけに慌ただしいな。』


「っ先生!あと15秒だけ待ってください!」


「…絶対15秒で終わるんで…!」


『お前らしかいないから別にいいけど…一体なんのゲームだよ楽しそうだな。あとで先生にも教えてくれよー。』




~~~~~~




朝より更に日は高く、陽炎揺らめく正午過ぎ。


「はい、アイス。半分あげるね?」


「…ん、いいの?さんきゅ。」


2つに割れたアイスを片手に、少女たちは帰路に着く。


「いやー…さっきのボス、ギリギリだったね〜!」


「…ね。あの15秒はデカかった。」


「指疲れて漢文集中できなかったよ…」


「…ふふ。なんのための補習なん。」


結局涼しい教室の中で、補習が終わった後も少し残ってゲームをした2人。


「まあまあ。おかげで古音ちゃんとも友達になれた訳だし!」


有象無象のクラスメイトから、気心の知れた友人へ。


「友達…」


古音は、口角を僅かに上げた。


「あ、そういえばさ。古音ちゃんもこっち方面なの?」


「…ん。かわなもなん?」


今日知り合った仲なので、当然お互いの住んでいる場所など知る由もない。


だから話を広げるついでに、お互いのことを少しずつ教えあう。


「そうだよ!この先の駅から3駅乗ったとこ。」


「…ウチは6駅。結構近くに住んでんだ。」


「全然知らなかったなあ…」


「…ね。3駅離れりゃ小中学も違うか。そりゃ全然知らないわけだ──」


古音が歩みを止めて目を顰め、遠くのほうを睨んでいる。


「んぇ?どうしたの古音ちゃん?」


「…いや、あれ。公園の水飲み場に…人?」


20mほど先に見える公園の水飲み場には、ぐったりと倒れ込んでいる人が1人。


「ほんとだ!誰か倒れてる!あんまり大きくない…子ども!?大丈夫ー!?」


近寄ってみると、かわなより少し小さな子どもが。


体格だけでみれば、小学校4,5年生くらいだろうか。


『…うぅ…あづい〜…』


火照った頬に熱い身体。一刻も早く冷やさなければ。


「古音ちゃん!水持ってる!?」


「…ここ水飲み場だし、水出るんじゃない?…ってうわ。水枯れてるし…」


「とりあえず私の食べかけでごめんだけど、このアイスあげるね!」


食べさしのアイスを手に持たせ、なんとか優しく舐めさせる。


「水は…あー無い、空だ。…さっき自販機あったよね。ウチ買ってくる。」


「お願い!」




~~~~~~




冷えた水を脇に挟ませ、一通りの介抱を終えた後。


『いや〜…助かったよ〜。ありがとうお姉さんたち。』


「ほんとに大丈夫?」


「…まだ動かんほうがよくない?」


木陰に移動した3人は、水分を摂りつつ涼んでいた。


『や、だいじょーぶ。久しぶりに外出たから、ちょっと夏の暑さに当てられただけだよ〜。もう平気。心配しないで〜。』


明朗に笑うその顔色は、先ほどよりも多少マシになっていた。


「…と言われてもね。流石にそんな状態の子ども放っておけないし。」


「うん。…お家はこの辺り?それとも遠くから来たの?」


『そんなに遠くないよ〜。自転車で来れる距離。今日も自転車で出かけたし。』


「…?その自転車はどこにあるん?」


『そこだよ〜。チェーン外れちゃって…押して歩いてたら、いよいよ疲れてきちゃってさ〜。』


公園の入口には、少し違和感のある自転車が。


「なるほど。…古音ちゃん、チェーンの直し方って知ってる?」


「ウチ?…や、全然詳しくない。」


「ごめん、私も全然詳しくないよ…」


『あ、ボク知ってるんだった〜。』


朗らかな口調が、2人を驚かす。


「「え?」」




~~~~~~




『いや〜、あっつくて忘れてたよ〜。直し方、最近動画で見たの。』


手際よくチェーンをはめ直し終え、再び陽気に笑いだす。


「…まあ、直せたなら何よりだけど。」


「すごい…こうやって直すんだね。」


『じゃあね、お姉さんたち〜!ありがと!助かったよ〜!』


とっとと自転車に跨るやいなや、急いで公園を飛びだしていってしまった。


「…行っちゃった。」


「…あれ、あの子なんか落としてったけど。」


「学生手帳かな?…えーと、狗風いぬかぜ そらちゃん。女の子だったんだ。」


「…中学生なん。…って、これウチが通ってた中学の手帳じゃん。」


「あれ、そうなの?じゃああの子…」


「…6駅ぶんも自転車で走ってきたんだ。すごいバイタリティ。」


「すごいねぇ…。」




~~~~~~




轟々と鳴り止まない冷房装置が、火照りきった身体を冷まして数分。


そろそろ芯まで冷えるかというタイミングで、かわなの降りる駅がやってきた。


「あ、私次の駅だ。」


「ん。…あ、連絡先交換しとく?」


「そうだね。交換しとこ!‪”‬あやなに‪”‬また一緒にやろうね!」


「…ん。休みで基本暇してるから、いつでも誘ってくれていーよ。」


「分かった!じゃあねー!」


「…ばいばい。」


歓楽のままに手を振るかわなに、小さな手振りで返す古音。


「………」


かわなの姿が見えなくなっても、上がった口角は下りなかった。


「…高校入って、初めて友達できたな…」


嬉しい。ただその気持ちでいっぱいだったから。




~~~~~~




舞台は変わり、再び ‪”‬あやなに‪”‬ の世界へ。


『よっし。ボス討伐終わり。古音ちゃん、ナイスアシスト。』


かわなに誘われた古音は、先客がいたかわなのパーティに混じって狩りをしていた。


『《Shizuka》さんも、サポートありがとうございます。』


「今の動きすごかったなー!どうやったのそれ!?」


『 ‪”‬すねこすり‪”‬ 専用のコンボだよ。結構難しいけど、上手くいけば転倒させられるし、ローリスクハイリターンな良い技だと思う。』


『…詳しい。』


『サービス初期からやってるからね。全種族のアピールポイントは暗記できてるよ。』


「カシちゃんすごい!流石ネトゲ中毒!」


『かわな、言葉には気をつけようね。私はまだそこまでいってないから。』


『…1日何時間プレイしてるん?…ですか?』


『あっはは。いいよ砕けた喋り方で。歳もそんな離れてないし。』


『…ん。1日何時間プレイしてるん?』


『ええと…大学行ってない時間は大体してるね。1日平均4,5時間くらい?』


「十分中毒者だね!」


『中毒者は言い過ぎだってば。』


コンスタントに4,5時間は相当なのでは、と、かわなと古音は思った。


『あの、《Shizu…カシちゃん。』


‪”‬砕けた喋り方で‪”‬ と言われたからには、いっそのことアダ名で呼んでみる古音。


『お、カシちゃんって呼んでくれた。』


『カシ…ちゃんは、かわなとどういう関係なん?ゲム友?』


『半分そうだね。よく一緒にゲームしてるし。それに加えて─』


かわなが言う。


「カシちゃんは私の従姉なんだ!」


『へぇ。従姉なん。仲良くていいね。』


「古音ちゃんにも年上の従姉っている?」


『…いや、ウチより下の子しかいない。正月とかは、いつも親戚あやしてる。』


『面倒みの良い良いお姉ちゃんだね。』


「偉いなあ。私逆にいちばん下だから、そんな経験したことないや。」


『…まあ、悪い気持ちはしないよ。可愛いし。小さい子。』


「保育士さんとか向いてるんじゃない?」


『保育士…まあ、こんな恐い顔の保育士…嫌でしょ。多分。』


『顔?』


「うーん…古音ちゃん、顔が恐いの気にしてるみたいで…」


『そうなの?…うーん…』


《Shizuka》の通話アイコンが、一瞬静かになった。


『そうだ。古音ちゃん、笑顔って得意?』


『…や、苦手。』


「えー?私と話してたとき、すっごい自然に笑ってたよ?」


『…そうなん?』


「うん!」


『そうなんだ。なら、そう遠くないうちに苦手意識は薄れるよ。人って自然な笑顔だけでだいぶ変わるからさ。もし練習したいんだったら、遠慮なくかわなに言いなよ。』


「任されました!」


‪”‬練習‪”‬ という文字列に、多少恐怖を覚える古音。


『ぇ、練習って何するん…こわ。』


「えー?何だろ。こちょこちょとか?」


『…ウチ効かないよ?』


「え?そうなの?じゃあ何か面白い話を…」


『…っふふ。そこまで考えなくていいんじゃない。今日だって、特別な話なんてしてないし。』


「確かに!じゃあ、私とのなんでもない話が楽しかったってこと!?嬉しいな〜。」


『…まあ、そういうことじゃないん。』


仲睦まじく話す2人からは、一定数の幸せホルモンが感じ取れる。


『‪…うんうん。若い子たちが仲良くしてるのは良いものだね。そういえば、古音ちゃんの話は今日かわなから初めて聞いたけど、2人はいつから仲良いの?入学してから?』


「今日だよ?」


『え、今日?』


間の抜けた声が響く。


『…うん。今日補習で一緒になって、初めて喋った。』


『えぇ…?すごいね。今日初めて会った子の仲の深さじゃないよ…?』


「えへへ。褒めてる?」


『すっごい褒めてる。そんなコミュ力私も欲しいな。』


『…あ、2人とも。ドロップアイテム分け合わん?そろそろ消滅しそう。』


「『あ。』」


『…消えた。』


ドロップアイテムは、放っておくと消滅するタイプなようだ。




~~~~~~




先ほど倒したボスをおかわり。


『よし。もう1体討伐できた。』


『…今度はさっさと回収しよ。』


ボスが居たところの跡地には、やはり光るものが沢山。


「あ、これレアドロップかな?」


金色に輝く魔法の杖。


豪華な装飾の施されたその杖は、神々しく煌めいていた。


『…や、普通のやつ。そんなレアじゃない。』


「えー。見た目結構良いのになー。」


『杖かー。魔女系統のキャラしか使えないやつだね。』


『…やっぱりカシちゃん…物知り。』


『古音もすぐに憶えられるって。』


「沙悟浄とかいるんだし、河童も使えたらいい

のに。」


『そういえば…杖持ってるね。』




~~~~~~




《Sizuka:ぉすぐに覚えられるって》


《Kawana:沙悟浄とかもいるんだし河童も使えたらいいのに。》


《Su-Ma:そういえば杖持っ》




~~~~~~




全体チャットに、以上の文が書き込まれる。


「ええ?何これ、私たちの名前だ。なんで勝手に入力されて…」


『あれ?なんかさっき私たちがしてた会話に似てるね。』


『…音声入力じゃないん?これ。』


「ああ、確かに!さっき一瞬出てきたよ!」


『私のにも。』『…ウチのも。』


『しかも全体チャットの方に入力されてるし…危ない危ない。誰かの名前入ってなくて良かった。』


『危うく身バレ…いやまあ、身バレするほどの情報喋ってないけど…ていうかそもそも、なんで?』


「ん?ねえねえ2人とも、何かメッセージが私のところに届いたんだけど…」


『ん?何だろ。私のところには何も…古音は?』


『…や、ウチんところにも何も。かわなのところだけかな。』


「えっと、読むね?」




~~~~~~




《すかい:この前回避ばっかりしてた子だよね〜?私もパーティ入っていい?一緒に戦いたい!》




~~~~~~




かわなにとっては、非常に見覚えのある平仮名3文字。


「…って、あの人だ!」


『すごい。まさか本当に再会できるとはね。』


『…?あの人?』


「私がこのゲーム始めたばっかりの時に、ピンチを助けてくれた人!パーティに入っていいか聞いてきてるんだけど…」


『私はいいよ。』


『…ウチも。呼んだげな。』


「分かった!えーと、承認ボタンを─よし!」




~~~~~~




《すかい:こんにちは!お邪魔しま〜す!》


《Shizuka:こんにちは。この前はありがとうございました。》


《Kawana:ありがとうございました!》


《すかい:いいよ〜!また一緒に狩りできて嬉しい!》


《Su-Ma:初めまして。》


《すかい:はじめまして!》


《すかい:あれ? ‪”‬すねこすり‪”‬ 使いのキミ、どこかで見たことあるよ!ボクのフレンドさんじゃないかな〜?》


《Su-Ma:あれ、本当だ。フレンドになってる。いつの間にか共闘してたんですね。》


《すかい:今日もよろしくね〜!》




~~~~~~




その後数回、《すかい》も含めた4人で狩りをして。


『おお。やっぱこの人強いね。装備もそうなんだけど、動きがすごい洗練されてる。』


『…システムの使い方が上手い。技のフレームとかも暗記してるんじゃ…』


「すごい勢いで敵倒れてくね!私ほとんど何もしてないや!」


と、ここで古音からひとつ提案が入る。


『…かわな。これさ、チャットで意思疎通とるのメンドくない?』


「ん、通話ルームに入れようってこと?」


『確かに。いちいち打つのは面倒…だけど、見知らぬ人を入れるのは…私はどうかと思うな。相手、何歳か分からないよ?』


相手が見えないインターネットでは、細心の注意を払って臨まなければならない。


『…この人のプロフィール見たけど、どうも小学生中高学年くらいの雰囲気があるんよ。親戚にそのくらいの子いるから何となく分かる。』


「私はいいよ!1人だけ意思疎通しづらいのはやりづらいし!」


『う〜ん……まあ確かに…小中学生が書きそうなプロフィールではあるけど…う〜ん…』


一頻り悩んだ後、捻り出した答えは。


『…まあいいか。ヤバそうな人だったらキックするからね。』


「ありがとう!えっと、通話ルームのURLは…」




~~~~~~




《Kawana:すかいさん!もしよければ、通話しながらやりませんか?URLは──です!》


《すかい:いいの!?するする〜!》




~~~~~~




『…よし。鬼が出るか、蛇が出るか。はたまた可愛い柴犬が出るか。』


『柴犬だといいんだけど…』


『─ん゙ん。こんにちは〜!あれ、もうこんばんはかな。こんばんは〜!』


一瞬の咳払いのあと、朗らかな声調が鼓膜を揺らす。


「あれ?なんかこの声…」


『…聞いたことあるような。』


『え、何なに?2人の知ってる人だった?』


「んー‪…思い出すね。」


かわな、古音の2人は、聞き覚えのある声調を探して、脳内フォルダを片端から漁り散らす。


『ええと、こんばんは。《すかい》さんで間違いないですか?』


『うん!《すかい》だよ〜!よろしくね!』


…と、ここで。


「…あ!分かったかも!多分‪…」


『…だよね。…ね、《すかい》さん。アンタ今日の昼間、自転車壊して公園で倒れてなかった?』


帰ってきた返答は、おおよそ2人が求めていたもので。


『─ぅえ!?なんでなんで〜!?なんでお姉さんそのこと知ってるの〜!?』


『…やっぱり。聞き覚えあると思った。…ウチ、昼間アンタに水あげた高校生。赤い髪のほう。』


「私は黒髪のほうだよ!」


『え〜!!??』


高く抜けた叫声が、歪んで辺りに響き渡った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




須磨すま 古音ふるね

年齢:15歳(高校1年生)

身長:171cm

性別:女

髪色/髪型:赤/ウェーブボブ


[特徴]

・少し強面な女の子。顔が恐いのを気にしてる。

‪・面倒見がいい。

・あんまり動じない。冷静。




【初めてできた友達】


「…ただいま。」


『おかえりねーちゃん…え何。何ニヤついてんの。怖い怖い。』


「…友達できた。」


『えぇ!?あの仏頂面で強面のねーちゃんに!?…いだっ!』


「…気にしてんだけど。」


『いだだだだだ!かわいい!ねえちゃんかわいい!美人!美人局!』


「…美人局は褒め言葉じゃないし。‪”‬美人‪”‬ って入ってるけど。」


『いでででで…あれ?いつもより短い。』


「…今日は機嫌がいいの。だからこんくらいで許したげる。」


『…行っちゃった。』


『…高校入ってからねえちゃんが笑ってるの、久しぶりに見たな…』

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