あやしあやかし、あなにやし。

とまそぼろ

第1話

茹だるような暑さが続く、とある夏の日の宵の口。


少女は独り、夏だというのに布団を深く被り、寝台の上でカタカタと震えていた。


「うー……カシちゃん、私が怖いもの苦手だって知ってるはずだよね……?」


少女の名前は童田わらべだかわな。


苦手なものは、水辺とホラーと夏の空。とことん夏と相性が悪い少女である。


『♪』


「ひぃっ!?」


軽快で簡潔、どこか無機質な通知音が、かわなの心臓を貫いた。


「…って、あ。カシちゃん…」


恐る恐る開いたトーク画面からは、先程送られてきたリンクの送信が取り消されていた。


『かわなが怖いの苦手なこと、送ってから思い出したよ。ごめん、迂闊だったね。』


『…ううん、もう大丈夫。だって私もう高校生だよ?そもそもあれ絵だし。あんな陳腐でありふれた怖い絵に脅かされるなんて…』


なんて…


「………」


…書きかけた文章を、1文字1文字削除する。


「っ怖かったなあ…」


少女のホラーへの耐性は、幼い頃から止まったまま。


…そして。


少女が友人からの誘いを断るのは、夏休みに入ってこれでn回目。


「…はあ。またお誘い断っちゃったな。せっかく誘ってくれたのに。」


今回のホラー(と思しき)ゲームのお誘いは、一体何回目だっただろうか。


「…はあ。」


携帯を置き、寝台の上へと仰向けに身体をうずめる。


「…苦手なものは苦手でいいとは思うけど、それにしたって私、ほんと夏を楽しめないなあ…」


夏休みはあとひと月以上も残っている。無為に過ごすのはいただけない。


「変わりたいなあ…」


口の端から漏れ出た懊悩は、網戸を通って、夏の夜空へと融けていく。


「…いや、‪”‬なあ‪” じゃダメだ!‬変わる!変わろう!取り敢えず眠いから話は寝てか…ら…。」


言い終わらないうちに、少女は意識を手放した。




~~~~~~




『カシちゃん!昨日のゲームのリンク、もう1回送ってくれない?』


そんなメッセージを送ったのは、ひと晩しっかりと睡眠をとった後。


‪”‬変わりたい‪” ‬という志は、どうやら夜を越えられたらしい。


『え、いいけど…大丈夫?公式サイトは流石に誇張しすぎだけど…ゲームの中、結構怖いの出てきたりするよ?』


「うっ…」


少し怖じる。…だが。


『大丈夫!その言い方だと、全部が怖いわけじゃなさそうだし!』


でも念の為、恐怖による口の渇きを潤すために、持ってきたグラスに氷とサイダーを入れておく。


『そう?う〜ん…分かった。じゃあもう1回送るね。』


軽快な通知音が鳴る。今度はもう怖くな―


「わっ!」


反射的に、着ているパーカーのフードを被ってしまう。


「…大丈夫。怖くない、怖くない…」


フードを少しずつずらし、できた隙間からサイトをじわじわと覗きこむ。


「…あ、意外と大丈夫だった。」


サイトに散りばめられた妖怪の絵は、昨日の晩に見た時ほど怖くはなかった。


やはり夜とホラーの相乗効果は恐ろしい。


陽の光の有難みに、ひとつ拝んでおこう。


「お天道様、ありがとう…暑いけど。」


『どう?サイト見れた?』


『うん。ダウンロードももうすぐ終わるよ!』


『おっけー。早いじゃん。じゃあフレンド申請するから、取り敢えずチュートリアルまで終わらせといて。』


『分かった!』


ダウンロードの終わったアイコンをタップすると、画面はすぐさま暗転する。




~~~~~~




[ ♪ 和を感じるホラーBGM ]


(ナレーション)

『あやしあやかし、あなにやし。』




~~~~~~




魂のような形をしたエフェクトと共に流れてきたのは、このゲームのタイトルだろうか。


「あやしあやかし…あなにやし?」


暗い背景に不気味な字体が浮かび上がり、スピーカーからは意地の悪そうな薄ら笑いが聴こえてくる。


「どういう意味なんだろ。あやし…‪ ”‬怪し‪‪”‬?あやかしは…‪ ‪”‬妖‪”‬ かなあ。で、‪”‬あなにやし‪”‬?」


聞き馴染みのない字列に、少女は軽く首を傾げる。


「う〜ん…まあいっか。えっと…この ‪”‬始め‪”‬ でいいんだよね。」


‪”‬始め‪”‬ と書かれたボタンを押すと、意地の悪い笑いがより一層大きくなって、再び画面が暗転した。




~~~~~~




(???)

『…おや、こんばんは。こんな夜更けに森を歩くなんて不用心だよ。感心しないなあ。…君は何者だい?どこから来たんだい?』


▷ 分からない…

▶ 無視して歩く


(???)

『おや、無視かい?まあいいさ。好きなだけ歩くといい。君が何者で、どこから来たのか。それは私の知ったことではないからね。』


(???)

『……………。』


(???)

『…ん゙ん。…おーい、聞こえているかい?』


▷ 話に応える

▶ 無視して進む


(???)

『……………。』


(???)

『おい。聞こえてるんだろう?いい加減無視するのはやめてくれ。』


▷ 話に応える

▶ 無視して征く


(???)

『ああもう分かった!ぼくから名乗ろう!』


(???)

『ぼくは月読命ツクヨミノミコト!夜を統べる神様だ。』


▷ 月読命?

▶ 夜を統べる神様?


(月読命)

『やっと返事をくれたね!そうだ。夜の始まりも夜の終わりも、全てはこのぼくの一存によって決められている事象なんだよ。』


(月読命)

『…と、そんな自己紹介は置いておいてだね。』


(月読命)

『キミは、誰なんだい?』


▶ 分からない。

▷ 思い出せない。


(月読命)

『 ‪”‬分からない‪”‬ か。そうか。』


(月読命)

『うん。まあそんなことだろうと思っていたよ。…この森に迷い込む者は、誰も彼もが自分のことを忘れてしまっているんだ。』


(月読命)

『そして、その容姿もね。キミ、自分が今どんな姿をしているか分からないだろう?』


▷ 頷く

▶ 見えてるはずなのに、何も見えない。


(月読命)

『それもこの森に迷い込んだ者に共通する事柄なんだ。名前も忘れ、容姿も忘れ。意識だけが残った者が、どうやらこの森に訪れるらしい。』


▶ 私は何者?

▷ 僕は何者?


(月読命)

『…ごめんね。ぼくもそれは知らない。…でも、キミを‪ ”‬何者か‪”‬ にする術をぼくは知っているよ。』


▶ 何者か、

▷ とは?


(月読命)

『キミに名前と容姿を与えるのさ。幸い、ぼくにはそれができる力があるからね。』


▷ 名前を?

▶ 容姿を?


(月読命)

『ああ。何もないのは不便だろう?そして名前と容姿を得た暁には、この深い深い森からキミは出ることができる。』


▷ 森から?

▶ 本当?


(月読命)

『ああ。ぼくは嘘をつかない。本当だよ。…どうだい?いるかい?』


▶ いる。


(月読命)

『分かった。じゃあ、先ずは名前を決めようか。呼んでほしい名前はあるかい?』


[入力]《Kawana》


(月読命)

『‪ ”‬Kawana‪”‬ か。うん。いい名前だね。それでいこうか。』


(月読命)

『じゃあ次は容姿だ。君はどんな姿をとりたい?』


▷ 巨大な体躯の、骨の怪物

▷ 小さく素早い、愛玩妖魔

▷ 風を操る、山の妖異

▶ 水に生きる、甲羅の異形

▷次へ


(月読命)

『ほう。俗にいう ‪”‬河童‪”‬ だね。水中での活動時にその頭角を現す妖怪さ。代わりに、地上での活動にはそれなりの水が必要な種族だね。本当にそれで大丈夫かい?』


▷ いいえ

▶ はい


(月読命)

『よし。これでキミは何者か、最低限の定義をすることができた。』


(月読命)

『ほら、出口が見えているよ。そこの薮からこの森を出なさい。』


(月読命)

『キミの旅路に、幸多からんことを。』




~~~~~~




「っは!」


カランと響く音に驚き、少女の意識は現実へと引き戻される。


五分ほどに注いだサイダーは、溶けた氷で大きくかさ増しされていた。


「すごい…今のところ全然怖くないし、世界観もすっごい私好みのゲームだ…」


薄まったサイダーを喉へと流す。少し甘い。


『カシちゃん!このゲーム面白いかも!』


ゲームの方はというと、よくあるソーシャルゲームのホーム画面が表示されている。


ホーム、編成、ガチャ、設定。


お決まりのように並べられた項目欄には、何とも言えない安心感がある。


『あ、面白そう?なら良かった。…そうだ、チャットだけじゃ説明しづらいから、通話してもいい?そっちのほうが教えやすいし。』


『分かった!』


通話アプリに指を伸ばす。


『ん゙ん。どう?かわな、聞こえてる?』


「うん!聞こえてるよ〜。」


『おっけー。戦闘チュートリアルはもう終わった?』


「まだだよ。今から始まるところ。」


『先にフレンド申請しといてもいい?フレンドなら、離れてても場所分かるからさ。コード教えて?』


「うん!えーと…」




~~~~~~




[ ♪ 法螺貝のような音]


(渋い声のナレーション)

『 出 陣 !』




~~~~~~




少し時代区分を遡ったような気に浸れそうな音が、スピーカーから響いてきた。


「お〜!すごい!始まった!…戦国武将モノみたいな始まり方だね…」


『っふふ。ちょっと分かるなそれ。』


戦闘チュートリアルが始まると同時に、画面右上に光る文字が現れる。


《《Shizuka》が参戦しました。》


「あ、これカシちゃんだよね?」


『そうだよ。お邪魔します。…っと。かわな、河童にしたんだね。』


「うん!キモカワだったし!そういうカシちゃんは……わぁぁぁ!?」


可愛いとも気持ち悪いとも、なんとも筆舌に尽くし難いキャラデザの河童が振り返ると、そこには─


『あはは。驚いた?大っきいでしょ、私のアバター。』


背丈は、河童の3倍はあるだろうか。


「おおお大っきいし何何何それ!ガイコツじゃん!」


下卑た顔立ちの髑髏しゃれこうべが、にんまりと河童を見つめていた。


『 ‪”‬がしゃどくろ‪”‬ っていうみたいだよ。現実の私とは大分違うでしょ。大っきいし。』


少女は液晶から視線を外し、ひとつ、ふたつ、みっつ呼吸を調える。


「……ふう。怖くない、怖くない…」


幼い頃に見た絵本に出てきた怪物に、あのガイコツはそっくりだった。


『…あ、もしかして怖い?このゲームだと結構怖い方の種族だからなあ…』


怖いか怖くないかでいえば、断然怖いのひと言に尽きる。


…しかし。


「…大丈夫だよ。私、怖いのもう平気だから!」


ひとつ、虚勢を張ってみる。


『…本当?』


「………本当。」


嘘だとしても、言葉だけでも、強がってみたい。変わってみたいから。


『間があったよ。』


「…ないもん。」


『なんで強がってるのさ。私の前では別に強がらなくたっていいよ。』


痛いところを突かれる。強がる意味なんて、かわな以外には分からないだろう。


「…だって、私の友達、カシちゃんも含めてみんなホラー好きなんだもん。私が苦手なせいで、もう何回も遊びのお誘い断っちゃったし。」


本来なら友達と過ごせていた時間。


かわなは、今はそれをとても惜しんでいる。


『…う〜ん。無理しなくていいと思うけどなあ。』


「いや変わる!変わるよ私は!海にも行けるようになりたい!夏といえば海とホラーだもん!」


『え、海も?昔あんなに嫌がってたのに。』


「昔っていっても、最後に行ったの小学生の頃だし!年も経ってるし行ける気がする!」


気がする。


…気がするだけで、確かな証なんてひとつもないのだれけど。


『…まあ、変わろうと意気込んでる手前、無碍にするのはお門違いか。応援するよ。頑張って。』


スピーカーの先から聞こえてくるのは、いつもかわなを純粋に応援する姉貴分の声。


「ありがと!」


『無理はしないようにね。なんでもそうだけど、楽しむことを一番に考えるんだよ。』


「うん!」


かわなは、昨日の時点より、苦手を乗り越えられる気がしてきた。




~~~~~~




15分後。


一通りの戦闘チュートリアルを終えたかわなは、スタート地点である ‪”‬拠点‪” から少し離れた場所で‬、先輩の手ほどきを受けていた。


『…で、これが回避ね。敵の攻撃に合わせて…そう!上手いじゃんかわな。』


「っ楽しい!回避のモーションめっちゃ凝ってる!バリエーションもある!ずっと回避だけしてたいよこれ!」


『攻撃しないと勝てないよ。』


方向によって変わる3種類の回避を気に入ったのか、かわなはそれらを延々と繰り返している。


『まあ確かにこのゲーム、色んなところに拘りを感じるんだよね。武器の納刀モーションとか。私のアバターは剣使えないけど。』


がしゃどくろのメインウェポンはその体躯。


腕を振り回すだけで、辺りの地形は形を変える。


「河童もみたいだよ。武器はお皿しか出てこないし。」


一方河童は、頭の皿を投げたり、口から水を噴射したり。


『200種類くらい種族があるけど、どれも戦い方が違って楽しいんだよね。ある程度レベルが上がったらアバター変えられるから、かわなも色々試してみるといいよ。』


各アバターにそれぞれの戦い方があるのが、このゲームの魅力であるとスピーカーは語った。


『私のオススメは─っ!?』


「わ、えぇ!?何何!?」


辺り一面が、暗い水色に光りだす。


轟く音に呼応して、ひとつの山が動き始めた。


《レイドボス:ダイダラボッチが出現しました。》


『…あちゃー。こちとら初心者ひとり抱えてるんだけどなあ…』


「え、何何!?カシちゃんよりももっと大っきい…敵!?」


見上げても見上げても茂る山。


その体躯は、がしゃどくろの比にならないほどに大きい。


『うん。いわゆるレイドボス。こんな目の前に来られたら逃げられないかな〜…』


「どうする!?戦う!?」


『まあ負けても拠点に戻されるだけだし、戦うだけ戦ってみる?チュートリアル戦闘レベル1000くらい。』


「勝ち目なさそうじゃないそれ!?」




~~~~~~




レイドボス出現から早5分。


初心者1人というお荷物が大きく、流石に劣勢一方の状況は免れなかった。


『全然削れな─よっ…あ、マズい。次の回避間に合わない。』


「カシちゃん大丈夫?薬草揉む!?」


『塗って使うものだよ。…っ痛。』


「わー!HPゲージが!」


『大丈夫大丈夫。あと1回は受けきれるから─ってかわな!上、上!』


矮小な河童の頭上には、圧倒的な質量が叩き込まれ─


「へっ?─わぁぁぁぁ!」


『…ごめ、間に合わな─』


《すかい が参戦しました。》


「っすごい風!…わ〜!どんどんHP減ってくよ〜!」


─なかった。


『!違うよ、見てかわな。減ってるゲージはレイドボスのやつ。かわなのHPゲージは緑のままだよ。』


「あれ?ほんとだ。」


『…すごい。もう倒しきっちゃった。』




~~~~~~




《すかい:なんかピンチそうだったから助けたよ〜!》


《Sizuka:ありがとうございました。今受けたダメージ分の回復薬など、こちらからお渡しさせてもらいますね。》


《すかい:だいじょーぶ!1ダメももらってないから平気だよ!それじゃあね〜!》


《Kawana:ありがとうございました!》




~~~~~~




突如吹き荒れた突風と共に、レイドボスは断末魔を残し、夜の影に沈んでいった。


「風みたいな人だったなあ…」


『ね。…いやー助かった助かった。あの人が来てくれなきゃ負けてたね。』


「?さっきの敵の足元、何か落ちてるよ?ドロップアイテムかな?」


光るものが、そこにはあった。


『そうみたい。…おお。これは。』


「何なに?レアドロップ?」


水色に、光り輝くペンダント。


高い解像度のソレは、仮想世界でも価値のあるものだとひと目見て分かる。


『うん。そこまでレア度は高くないけど、初心者にはかなり嬉しいヤツ。』


「あ、でも…さっきの人が倒してくれたんだから、勝手に貰っちゃうのは良くないよね…」


先ほどの救世主の行方は知れない。


『う〜ん…さっきの人かなり装備揃ってたし、フレンドでもないから渡しにいきようがないんだよね。…よし。かわな、ありがたく貰っときな。』


「えぇ!?うー…いいのかな…」


目覚めるのは、多少の罪悪感だった。


『いいっていいって。その装備が本当に欲しかったら、ちゃんとドロップ確認して…回収していくと思うんだ。』


「まあ…それは確かに…」


『だから貰っときなって。またあの人に出会ったら、その時は…今度は逆に、レイド狩りでも手伝ってあげたらいいんじゃない?』


折衷案を受け入れ、かわなは装備を手に入れた。


「…分かった!」




~~~~~~




それから数時間。


「よっ!ほっ!よし、倒せた!」


『そうそう。上達早いねかわな。無駄な回避がやけに多いけど。』


すっかりこのゲームの虜になったかわなは、順調にゲームを進めていた。


「だって、すごくモーション凝ってるもん!しかも、回避した後の攻撃モーションも可愛くてかっこいいし!」


敵の攻撃をいなした河童は、綺麗なフォームで相手に皿をぶつけている。ちょっと滑稽。


『頭のお皿投げてるね。それ投げちゃっても大丈夫なやつなんだ。』


1枚投げたら即座に回復、なんなら連射もできてしまうようで。


「投げても速攻回復するからね!…それから、さっきのこの装備、かなり強い気がする!」


効果はシンプル。攻撃力と防御力の上昇。


ザコ敵を葬るには、十分過ぎる火力の上がり幅だった。


『良かったじゃん。いいスタート切れたね。』


「あの人にもう1回会いたいなー!しっかりお礼したいもん。」


吹き荒れた突風を思い出す。


あの風がまた吹いたら、あの人は来てくれるだろうか。


『そう都合よく会えるかなあ…』


「カシちゃん、あの人また見つけたら、フレンド申請しといてほしい!私も探すから!」


語気を強めて提案する。


『了解。…あ、もういい時間だね。かわな、そろそろおばさんが呼びに来る頃─』


3回、部屋にノックが響く。


「─あ、お母さん?ご飯できたー?分かった、すぐ行くねー!」


『おお。ビンゴ。』


お昼過ぎから始めたゲームに、とっぷりと数時間もハマりこんでいたことに気がつく。


「ごめんカシちゃん、晩ご飯できたみたいだから私抜けるね!」


『うん。長い間ありがとね。バイバイ。』


「ばいばーい!」


仮想世界に一旦の別れを告げ、家族の待つ食卓へと足を運ぶかわなであった。




~~~~~~




仄暗い部屋の中で、少女は独り─


「あっははは〜。あの子、回避してばっかだったなあ〜。」


煌々と光る電子の海を眺めている。


「…えっへへ、嬉しいな。」


その相好は、どこか喜ばしいようで。


「明日もあの狩り場にいるかな〜。…ふあ〜あ…眠い…今日はもうげんか〜い。」


満足げな笑顔を浮かべたまま、夢の世界へと身を預けた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




童田わらべだ かわな】

年齢:15歳(高校1年生)

性別:女

身長:156cm

髪色/髪型:黒/ボブ


[特徴]

・ホラーと海、夏の空が苦手な女の子。

・キモカワいいモノが好き。

・人に対して物怖じしない。




【尻子玉】


『そうそう。河童には即死コマンドがあるんだよ。』


「即死コマンド?」


『一撃必殺のコマンドだね。』


「何それ!知りたい知りたい!」


『まずは一定数ダメージを与えて。』


「よっ…はい!」


『で、そこからアッパーカット。』


「…はい!」


『相手がダウンしたら、背後に回って。』


「はい…あ、コマンド出た!」


『押してみな。』


「…えっ、えっちょっと…なんでおしりに腕突っ込んで…わっ!なんか光ってるの出た…!」


『それが一撃必殺コマンド、‪”‬尻子玉抜き‪”‬ 。強いよ。』


「うぅ…見た目が嫌すぎるよ…」

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