第4話 熱源

「失礼しまーす」


 リオはそう言って店の中に入った。

 後ろからライナも付いて入る。


 店内には商品の靴がたくさん並んでいるが、誰もいない。


「こんにはー、白魔術師のリオ・クラテスと言いますー。熱が出ていると聞いてお伺いしましたー。よろしければお力にならせてくださーい」


 リオは店の奥まで聞こえるように大きい声でそう言ったが反応はない。


「留守ですね。帰りましょう」


 これ幸いと踵を返し出ていこうとするライナの襟首をがしっとリオが掴む。


「熱で意識なくなってるかもしれないでしょ。奥まで確認するわよ」


 リオはそう言ってずかずかと奥に踏み込んでいき、ライナははぁとため息をついてついていく。


 店のカウンターを越えて、バックヤードに入っていくと、そこは靴を作る工房になっていた。


 そして、部屋の端に長ソファがあり、そこに60代の男が横たわっていた。


「大丈夫ですか!?」


 リオは老人の元に駆け寄った。


「ああ.........あんたは.........」


 老人は目を開き、声を絞り出した。


「白魔術師のリオ・クラテスと言います。熱がでていると聞いてお伺いしましたが、かなり衰弱しているとお見受けします。よろしければ治療させてください」


「ああ........白魔術師様とはありがたい.........お願いします.........」


「では、まず、症状について聞かせてください。咳や痰、喉の痛みはありますか?」


「いえ........ありません.........」


「では、腹痛や下痢は?」


「ありません..........」


 そこで、リオは怪訝な顔をする。


 伝染病らしい症状がない.........


 伝染病とは、感染症のなかでもヒト-ヒト感染するもののことを指し、空気感染や飛沫感染する呼吸器感染症と、接触感染する消化器感染症が大部分を占める。


 だが、この老人にはどちらも当てはまらない。


「では、熱以外に何か症状はありますか?」


「右膝が.........とても痛いんです.........」


 膝!?


 リオは思っていたの全く異なる症状に驚く。


「ちょっと見せてください」


 リオは老人のズボンを捲くり上げ、右膝を確認する。


 老人の右膝は赤く腫れ上がっており、触ると熱感があった。


 リオは確信した。


 熱源はこれだ!!



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