第7羽 ありがとう! ――を食べるね??

「くしくし......くしくし......」

 自分の体を丁寧に毛づくろいするこむぎちゃん。ウサギさんは毛づくろいの時に二本足で立ち上がる。こうすると前足が自由になるから、まるで両手のように動かせる。

「くしくし......くしくし......」

 時々口に前足を当てているのは、唾液を染み込ませているからなんだって。ウサギさんの唾液は殺菌効果があって、とても衛生的だって店長さんが言ってた。

「うぅん、届かない......!」

 もちろん耳の毛づくろいもするんだけど、こむぎちゃんは耳が短いのか前足が十分に届いてないの。これはこむぎちゃんに限ったことじゃなくて、ネザーランドドワーフにありがちな光景なんだって! それでも必死に前足を伸ばして毛づくろいする姿は健気。そんな必死なこむぎちゃんは可愛くてたまらない!!

「ゆきちゃん! 笑わないで!!」

 こむぎちゃんが怒っちゃった。けど、怒ったこむぎちゃんも可愛くて好き!!

「......よいしょ」

 毛づくろいを終えたこむぎちゃんが股を開くと、突然お股に顔を埋めたの! 一体何だろう??

「おいでよお腹のもりもり!」

 こむぎちゃんは意味不明な呪文を唱えながら何かやってる。あぁ、これはもしかして店長さんの言ってたあれかも??

「集まれお腹のもりもり!」

気分を悪くする人がいるかもしれないから、雰囲気だけ伝えるね。ウサギさんは食べ物を一度で消化できないから、あることをして食べ物の栄養をきちんと吸収するんだって。

「飛び出せお腹のもりもり!」

 よく分からないけど、草は消化するのが大変みたい。ウサギさんの習性、店長さんは何て言ってたかなぁ......? しょくべに? りんぷん?? 何かそんな感じの言葉だった気がするけど忘れちゃった! 気になる人は調べてみてね!

「ありがとう! ――を食べるね??」

 こむぎちゃん、その言葉だけは言っちゃダメだよ! 気にする人がいるから!!

『キーーーッッッ!』

 通りすがりのおじいちゃんが急ブレーキを踏んだみたい。それを聞いたこむぎちゃんは耳をピンと立てた。

『ダンッ!!!』

 うわっ!! 何なにっ!? こむぎちゃんが両足で思いっきり床を踏んだよ!!?

「ななな、何だぁーーーっ!!?」

 こむぎちゃんがびっくりして家中を走り回っている。あとで店長さんに聞いたんだけど、ウサギさんが威嚇や警告の為に地面を踏み鳴らすことを足ダン・・・って言うんだって。こむぎちゃん、自転車のブレーキ音がよっぽど恐かったんだね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る