ゆきとウサギの悪魔
みそささぎ
第1羽 ありがとう! 君の命を貰うね??
「ありがとう! 君の命を貰うね??」
私はゆき。突然だけど、目の前のウサギさんにそんなことを言われてビビってます。だって、愛くるしい瞳で見つめるあの子がそんなこと言うはずないでしょう??
「......ありがとう! 君の命を貰うね??」
ウサギさんは一度首を傾げると同じことを言ってきた。きっと、聞こえてないと思ってもう一度言ってくれたんだね。けど大丈夫、ちゃんと聞こえてるよ?
「ありがとう! 君の命を......」
ウサギさんは潤んだ瞳でその言葉を繰り返した。もう、ちゃんと聞こえてるから! ちょっとびっくりしちゃったけど、ウサギさんにちゃんと返事をしないとね?
「あげないよ!」
ケージ越しのウサギさんは瞳を潤ませている。どうしたのかな? もしかして悪いこと言っちゃったかなぁ??
「......やぁだぁ! 命欲しいっっっ!!!」
うさぎさんはまるで駄々っ子のように泣きじゃくり始めた。そんなこと言われたって、私の命は簡単にあげられないよ?
「お姉ちゃん、この子が気になるかい?」
私がウサギさんのリアクションに困っていると、ペットショップのおじさんが顔を出してきた。そうじゃなくて、私はどうしたらいいの!? てか、値札に『ブタ』って書いているし!! 確かにぶぅぶぅ鼻を鳴らしていたけど、どう見てもブタさんには見えない。なんだろう......私は何となくこのウサギさんが可哀想に思えてきた。
「このブタ、やけに耳が長いんだ。珍しいだろう? もし良かったら、タダで譲ってあげるよ??」
ウサギさんもそうだけど、このおじさんも何だかヤバそう。髪はボサボサだし、何だか体中から酸っぱい臭いもする。それに何だか、お酒を飲み過ぎた時のお父さんみたいに目が据わっているように見える。
私の第六感が今すぐこの場から逃げろと言っている。私の背中に何とも言えない悪寒が走っているのが何よりの証明だ。怖くなった私は、ペットショップから全速力で逃げ出した!!
「はぁ、はぁ......。ここまで逃げればきっと大丈夫」
運動が苦手な私にとって猛ダッシュは正直キツイ。けど、私の逃げ足って意外と早いみたい。みんなに言い忘れていたけど私はゆき、妙徳小学校に通う5年生です。今日の放課後、通りかかったペットショップを眺めていたら、さっきのウサギさんに命を取られそうになったんだ。びっくりだよね!
さて、もうすぐ私の家だ! 今日のご飯は何かなぁ??
「お帰りなさい! あらぁ、可愛いウサギちゃんねぇ??」
お母さんはニコニコしているけど、ウサギさんいつの間に!!?
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