140字短編集・ほのぼの系

藤崎 柚葉

僕が住む町

「見てごらん。ここがお前の住んでいる町だ」


 幼い頃、父が僕に見せてくれたように、僕は新天地の景色を恋人に見せた。


「ほら、これから僕たちが住む町だよ」


 十数年後、僕は家族を作って故郷に帰ってきた。


「見てごらん。ここが僕らの住む町だ」


 遺影の中の妻が「素敵な町ね」と、微笑んだ気がした。

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