ヒロイン達の暴走を止めてね、頼んだよ!と最高神は頼んだ。

確門潜竜

第1話 悪役令嬢はもう逃げ出しました

 あー間に合った。王立魔法学院の卒業式の最後のイベント、ダンスパーティーだ!ここで、卒業式の挨拶をし終わった王太子ロレンツィオ殿下は、婚約者であるスフォルツア公爵令嬢カテリーナとダンスを、皆と踊ることになっているんだよね、彼女は卒業生だから。将来の王太子妃、ひいては王妃として、あらためてアピールすることになっているんだよね、2人の仲のよい姿を見せ、ダンスを皆と踊ることで。

 でも、彼女は現れないんだよね。もう昨晩、自分付の侍女と執事を連れて、家出しているんだよね。公爵が困った顔で弁明しているね。まだ、四十を過ぎたりばかりの、やり手の、政治的には保守派だけど、のなかなか魅力的な金髪の中年男で、体格も堂々としている。それが、冷や汗をかきながら、

「娘は、急に体調が悪くなり…それで…そういうわけで…申し訳ないありません。」

「体調が悪ければ仕方がない。大事な婚約者であるから、すぐにでも見舞いに…。ここは、弟のジュリアーノに任せて…。」

「いえ、それには…我が娘の体調のせいでせっかくの卒業式が…。そ、それに安静が必要と医者からも…。」

「それなら、王宮医師長を呼び…。」

 あ~あ、ロレンツィオも意地悪だね、彼女がもう家出しているのを知ってるくせに、まあ、そのくらいいじめたいという気持ちは分かるけどね。

「このようなことで騒いでは、彼女に迷惑がかかるか…。分かった。公爵殿、ご令嬢には、私が心配していたと伝えてくれたまえ。」

 人がいいね、それで許してあげたんだ。公爵は、何とか助かったと、安心したね、一時のことなんだけどね、この困っていることは寝て起きたら解決しているわけないのにね。困っている指揮者に、音楽をスタートしてよろしいと指示を出したね。あれ、ジュリアーノ君が。金髪でスマートな超男前で文武両道の弟を呼んだんね、どうするのかな?

「お前が、誰かと踊ってくれないか?王族が参加しないと始められないからな。お前なら、誰でも…だし。」

「しかし、兄上が誰かと…。兄上こそ、誰でも喜んでパートナーとなるでしょう?」

「婚約者が病気なのに、他の女性に鼻の下を伸ばすわけにはいかないだろう?だから、頼むよ。」

「兄上は、其所まで…。分かりましたよ。」

 うん、まあ、二人とも、合格な対応だ。始まったね。さあ、まだやることがあるよ。

 え?僕?この世界の最高神、さっきまでここにいなかった、忙しくてね。また、何所にでもいると同時に何所にもいなかった。いる、いないとの認識を超えていると同時に人間にはその存在の有無が把握されない存在なんだ。まあ、深く考えないでね。この世界の最高神を押し付けられただけなんだから、面倒を押し付けられたという感じでね。

“全く、あの馬鹿娘ときたら…。こんなに王太子様が心にかけてくれているというのに…。”まあ、しかたがないよ、お父さん、彼女は、乙女ゲームの婚約破棄されて、断罪されて処刑される悪役令嬢に転生したと信じているんだから。理屈じゃないの、心から信じているんだから、しかたがないのさ。まあ、彼女は無事、取りあえず上手くやって、彼女自身は害が及ばないことになっているから。

「殿下。わが娘と踊って…こら、お前からも…何をやっている。」

 パッツィ伯爵、娘のイッポーリタは恐怖で震えているんだよ、分からないかな?彼女は、自分を見初めた王太子とともに、彼が婚約破棄して追放した悪役令嬢にざまあされる、乙女ゲームのくずヒロインに転生したと信じ込んでいるんだから。ゲーム世界の強制力に捕まると恐怖しているんだよね。明日、予定通り、彼女も家出するんだ。

「失礼。婚約者の病気中に他の女性と踊る不実な男には、なりたくないから…明後日にも、お詫びに屋敷にうかがおう。」

 人が悪いな…、パッツィ伯爵、何を喜んでいるのかな。

「それでは、私とならばよいのではありませんか?」

 声をかけてきたのは、あれ?ハイエルフの、エルフにしては長身だけど、やや小柄の見事な銀髪をなびかせた優しい顔立ちの美人、ハイエルフの、ある国の女王様だ。何故、彼女がここに?ああ、2年前の卒業生だから、招かれたんだ、半年前、女王に即位したから。招待されたというより、この国、ああ言い忘れていた、トスカーナ王国との友好関係のために、ロレンツィオと話をするために、色々と裏交渉もして、半ば強引に招待を勝ち得たんだった。ロレンツィオは、5年前、この学校卒業後直ぐに、実際の国政を、病気がちな父国王から丸投げされているからね。あ~あ、後ろでハイエルフの女騎士が怖い顔している~。主よりやや背が高い、やはり見事な銀髪を後ろに束ね、厳しいながらも美人さん、しかも、ボディは主様より肉惑的。

「美しい陛下と踊ってしまっては、なおさら婚約者に悪いですから…。」

 頭を下げて…優雅な動きではないけど、紳士だね~。

「では明日、ゆっくりとお話しを。」

「楽しみにしております。」

て2人は頭を下げて…内容はシビアな外交問題なんだけどね。

「陛下。あの男には、気を付けて下さい!」

 ロレンツィオ君のもとから去る女王の耳元で女騎士さん。まあ、彼女、ロレンツィオに陵辱の上殺される、もちろん国は滅ぼされる、運命から生き戻り、時間逆行した…と思っているから、しかたがないよね。明日、途惑うことになるだろうけど。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る