第33話 [家庭教師 土岐みさき]待ち合わせとショッピングモール。
「遅れたかな、ごめんね。あれえ……?」
待ち合わせの時間の5分前。時間は大丈夫だったけど、かわいい教え子と一緒に大好きな人がいた。
「全然! 5分前だよ!」
「ごめんなさい、先達庵のお二人に葉書でお礼状はお出ししたけれど、お借りしたハンカチだけは代わりに新しいものを購入したくて。由都にお願いして同伴させてもらったの。ハンカチを買えたら地下で食料品のお買い物をして帰宅するけど、でも、みさきさんにご挨拶はしたかったから」
「……というわけ。葉書はここに来る前に出してきたよ! お母さんにはお父さんが付き添うから、私とお買い物しようね、みさきさん!」
お礼状、代わりのハンカチ……。
メッセージアプリだけで済ませてしまった私とはものすごい違いだ。
……好きです、しずるさん。あ、大好きです、だ。
ハンカチ……。お借りしたハンカチ、私が持ってる。……洗濯して……家に。
「すみませんでした、私がハンカチをお預かりしたままだから……。洗濯はしたんですけど……」
先達庵に次に伺う時までにアイロンをかけようと思ってたんだ……。
「大丈夫よ。元々私がお話に感動して泣いてしまったからなのだし。みさきさんがそのまま持っていてね。売り場でそのまま配送手続きをして頂くから安心して、ね?……あ、由都ちゃん? 感動して、よ?」
「うん、大丈夫。みさきさんが居てお母さんが泣くようなこと、うれし泣きか感動してかしかないからね! 違ってたら相手がどうにかなってるから私かお父さんには連絡来るだろうし。……あ、お父さん!」
うう、由都ちゃんに心配かけまいとするしずるさんもかわいいなあ。
で、私はしずるさんをそういう意味で泣かせた奴がいたら天誅、と。
……確かに。
……そうそう、伊勢原先生に。
「こんにちは。ご無沙汰しております」
「こんにちは。すまないね、土岐さん。今日は僕がしずる……しず、で良いかな? をエスコート、になるけれど由都をよろしくね。……皆、昼は食べてきた?」
私がはい、と伝えるとしずるさんと由都ちゃんもええ、うん、と返事。
何気にしずるさんの呼び方を私に確認して下さった伊勢原先生の細やかな気遣い。……学びたい。
「じゃあ、僕はしずの買い物に付き合って、それからしずをショッピングモールのバス停まで見送る、と。二人との再集合は17時に本館五階のエレベーター前。それまでは別行動。何かあればすぐにスマホに。……良いかな?」
「はい」「分かった!」「ええ」
ショッピングモールからはしずるさんと由都ちゃんのお家の最寄り駅(先生のマンションも)までの巡回バスが出ている。しずるさん達はそれに乗ってここに来たのだろう。
……先生、しずるさんの荷物が多いとか、もしもの時はご自宅までお送りするつもりなのだろうなあ。
それに、集合場所の本館五階、ってレストラン街だし。集合したらそのまま私達と食事を取ることが出来る様に配慮してくれているんだ。
……やっぱり、いちいち洗練されてるんだよな、伊勢原先生の行動。押し付けがましくなくて、とても自然で。
あと、服装。スタイルも容姿も、本気出したら凄いんだよ、この方は。偏屈物理教師の時との差が……。
今日の服装は黒のタートルとオフホワイトのチノ。コートはキャメルで、眼鏡のフレームは赤。今日は黒髪を流して一つ縛り。
……大人だなあ。
しずるさんは栗色のジャケットが新鮮。由都ちゃんのスカートと合わせてるんだな。
私はグレーのパンツスーツ。一応由都ちゃんともしかしたら先生と、のお出かけだからそれなりに見られる格好にしたんだけど……。しずるさんがいらっしゃるなら、なんかもう少し……だったかなあ。
「土岐さん。しずるの爪」
先生の声だ。……あ。
「そうだよ、私が勧めたの!」
すると、控え目に爪を見せてくれるしずるさん。
……我ながら、現金だけど。
「行こう、由都ちゃん! しずるさん、先生、また!」
「うん」「ええ。またお誘いするわね」
お二人にご挨拶をした私は、声がかなり大きくなっていた。
「……ありがとうね、由都ちゃん」
逆に、この声は小さく。
「気にしないの! さあ、行きますよ!」
ショッピングモール南入口。
由都ちゃんと入って行く私のテンションはかなり、高かった。
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