50th mission 毒に染められる自分
──吸血鬼となったペチュニアおばさんと戦う事になった俺。しかし、ガリレオもサマンサも彼女の毒のせいで立ち上がる事ができない。女は、自分の体内の血液を操る能力を持っており、例えば空気中に漏れ出た血液を固めてバリアを作ったり、巨大な長い真紅の槍を作ったり、小さい針を作って幾重にも飛ばして来たり……と血を操ると言っても多種多様でかなりこれが厄介な魔法だった。
最終的に彼女の手足や体全体を聖なる証で作った銀のけん玉の糸で拘束する事に成功するも……背中から生えて来た紅色の触手のような8本の足のせいで自由に行動できるようになってしまい、そのせいで太陽を目指して地上の扉を開こうとしていた俺は、吹っ飛ばされ……更には触手で手足を拘束されて、血で作った毒液を体内に流し込まれてしまうのであった……。
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──飲んでしまった。コイツの毒液を。絶対に飲まないと喉を動かさず、口で堰き止めていたが……抵抗も虚しく俺は、飲んでしまった。この女の体内で作られた毒液を……。しっかりと飲んでしまったのだ。
そして、これを自覚し始めたタイミングで俺の体にすぐ異変が起き始めていた。──まず、お腹が鳴り出す。ギュルルルルと大きな音が鳴り出し、そしてその音が体内で波紋のように毒を広げていったのかお腹だけでなく体の全体に毒の痛み、苦しみが回っていく。
そして、ついに毒が自分の喉ヘまで侵食して来た所で俺の苦しみは最大にまで達した。
首にかけていた禁断の石がついたネックレスが大きく揺れて、触手から解放された俺は地面にのたうち回る。苦しいという感情が溢れ出す。
「うっ、うううぐうううぅぅぅ! うううぅぅがぁぁぁぁぁぁっああああ!」
体のあちこちが心臓のように鼓動しているのを感じる。それが余計に俺を苦しめる。
──痛い! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
激しい痛みは、やがて何とも表現し難い悪しき感覚に変わり、窮屈で苦しくて、痛くて、気持ち悪いが入り混じった激しい感覚に苛まれる。
──毒……か。
これを自覚した頃には、もう自分が手遅れである事を感覚で理解していた。そんな俺の元に吸血鬼の女は言って来た。
「……アンタには、特別に私の毒を直で、しかも原液で投入した。当然、あそこにいる2人よりも強力だ。原液だからまぁ、せいぜい耐えられても5分がいい所。しかし、それもお前がどれだけ強いかによる。お前の心がどこまでこの毒に耐える事が出来るか……。心が弱ければ、お前は今すぐにでも死ぬ!」
──おいおい……。それじゃあ、前の世界でクソニートしてた俺じゃ、即死じゃねぇかよ。クソッ! こんな苦しいのは、御免だっての……。
俺は、朦朧とする視界の中、頭の中にふと思い出した事があった。
それは、俺がまだ前の世界にいた頃の話。小さいガキだった頃だ。
――俺は、当時……小学校の中でいじめを受けていた。その時、よくあった事として俺は、よくいじめっ子達に手足を拘束された状態で砂を口の中に入れこまれた事があった。そのあまりに強烈ないじめに俺は、よく苦しめられていた。
――痛かった……。あの時も……口の中が苦しくて……沢山咳をした。
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あの時のような事は、もう二度と起きて欲しくなかった。けど、まさか……あの時以上にえげつない事をされるとは……。
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――苦しい。苦しくて……苦しくて……。もう辛い。咳が込み上げてくる程度なら良い。身体が痛い。熱くて……熱くて……痛い。
とても苦しかった。そんな俺の姿を見て女は、言った。
「……ふふふっ。どうやら、耐えられないようね。アナタは、時期に死ぬ。もう終わりよ……」
俺は、その言葉を最後にそれ以降……耳も何もかも塞がって聞こえなくなってしまった。
死ぬのだ。自分は、もう……長くないどころか……死ぬ。
それを悟った。
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――その時だった。その時、俺の胸につけられていた禁断の石のネックレスが僅かに輝きだしていたのを……俺はまだ知らなかった。
そして、それこそが……この戦いを決着づける輝きであると……まだ分からなかったのだ。
――To be continued.
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