35th mission 更なる力を目指すために……。

 ――決意表明を終えてすぐ後、俺とサマンサはガリレオに連れられて村の端っこのとある場所を訪れた。そこは、ツペッシュ村東部の森やワラキア城のある場所とは正反対の西側で、家々が並ぶ平地だった。そこに……俺とサマンサ、ガリレオの3人はやって来る。俺達の先頭を歩くガリレオが一言告げる。




「……着いた」


 その言葉を聞いた俺とサマンサは、ピタリと立ち止まって目の前に見えるただの農家の小屋を眺めた。俺が、文句ありげにガリレオに言った。




「……なんだぁ? こりゃあ。……わざわざ呼んどいて、こんなボロ家に連れ込むつもりだったのかよ?」




 すると、珍しくガリレオは冷静な声で俺に言った。




「……君達2人は、実力はあるのだろう。……何となくそれは分かる。認めよう」







「……あぁ?」



 ――何が認めようだ。このアホ面ネズミ!




 心の中で毒づいた俺にガリレオは、真剣に喋り続けた。




「……しかし、実力はあったとしても……君達はまだ弱い! ノース・ヘラトゥ相手に傷1つつけれなかった! これは事実だ。君達は、まだ弱い。……特にお前だ! けん玉の使い手。お前は、まだ自分に宿ったその古代魔法の力の全てを使いこなせていない……!」






「……なっ、なぁにぃ~!?」



 驚く俺にガリレオは、更に追い打ちと言わんばかりに喋りまくる。




「……意味の分からない謎の技を開発するのも良いが……自分自身に宿った魔法の真なる力を……少しは、使いこなせるようにならないとダメなんだ! そうでないと……ノース・ヘラトゥには敵わない。だから、今の実力不足なお前を俺が鍛えてやる! 決戦は、3日後! 正直、あまりにも時間が足りなすぎるが……しかし、やれる事はやってやろう!」





 ガリレオは、真剣だった。真剣に俺の目を見てそう言った。彼がそう言う風に言う理由も分かる。……けど、それでも俺はなんでだか我慢ならなかったのだ。





「……なんで、お前に教えられなきゃならねぇんだぁ? 他にもっといい先生がいても良いんじゃねぇか?」




 すると、ガリレオは言った。



「……古代魔法を教えるなら同じ古代魔法の使い手である俺が特訓させた方が良いだろう? それに……俺は、君より強い。君がまだ解放できていない上代魔法の真なる力だって少しは使える。だから、それを君にもマスターしてもらうのだ!」





「……ざっけんなぁ! テメェの教えだけは御免だね! ここまで色々な奴と戦ってきたけど……俺は、戦いのセンスだけはあるみたいなんだ! 次だって俺のセンスで切り抜けてみせるぜ!」





「……寝言ほざいてんじゃない! 言っただろう? この先の戦いは、熾烈を極める。……何が起こるかなんて誰にも分からないんだ! センスだけでどうこうなる単純な話ではない! 分かったか? クソカス蛆虫! 分かったら……俺に従え」







「……チッ」



 舌打ちをした。どうしても我慢ならなかった。理由は分からない。ただ単にこの男がムカつくからなんだけど……。だからこそ、もう我慢ならなかった。こぶしを握り締めて……下を向いていた俺は、あの男の顔を睨みつけてそして……。






「……ケンダ魔法!」



 咄嗟に触れたガリレオの鋼の鎧に自分の魔法をかけて……その鎧をけん玉に変化。そして、形の変わったシルバーのけん玉を持って俺は、それを振り回しだす。






「……そんなにテメェが強いというんなら見せてみやがれェェ!」






「大我やめろ!」



 サマンサの注意する声が聞こえてきたが俺の耳には、そんな言葉通用しない。俺は、ひたすらにけん玉の先の鉄球を振り回す。――しかし、俺のそんな攻撃は野郎には通用しない。ガリレオは、軽い身のこなしで俺の攻撃をかわしていく。俺は、さっきから攻撃がそもそも当たらないと言う事にイライラを覚えだす。すると、ガリレオがそんな俺をおちょくる感じに言ってきた。





「……そんな単調な攻撃では、吸血鬼は絶対に倒せないぞ! この俺でさえ、次にやって来るお前の攻撃パターンが読めちまう。それくらい分かりやすい身のこなし方だな!」



 そんな事は、知らない。聞いてない。俺は、怒りに身を任せて更なる攻撃を開始した。





「……うっせー! ガタガタ抜かしってと……ぶっ飛ばすぞ! 食らいやがれ! ベースボール・ブレイク!」



 ――鉄球をガリレオの胸の辺りに向かって飛ばす。しかし、鋼の鎧はビクともせず、跳ね返って来る。それを応用して跳ね返って来た鉄球をけん玉の持ち手の部分をバットのように使って打ち返し、もう一回ガリレオの所へと飛ばす!






 しかし……。





「……だから言っただろう! お前の攻撃は単調過ぎる!」



 ガリレオは、その跳ね返って来た鉄球をも軽々しく避けてしまう。そして、避けた後に彼は、左手のまだ装着されている銀の鎧に自分の右手を触れてそして、宣言した。







「……奴を貫く剣となれ! ベイゴ魔法!」




 瞬間、その銀色の鎧がベイゴマに変化する。そして、変化したそのベイゴマを野郎は早速巻き付けて投げ込んで来た。





「……俺だってバカじゃねぇんだ! その攻撃は、もう攻略法を知ってるんだよ!」




 俺は、放たれたそのベイゴマ目掛けて自分のけん玉をぶつけにいった。






「くらえ! ベース・ボルンコリン! 千本ノックじゃあああああああああ!」






 俺の今現在使える技の中で一番の攻撃力を持つ超連続攻撃技。それを繰り出した。俺の鋼でできたけん玉の持ち手と鉄球がベイゴマに向かって飛んでいく。……そして、野郎のベイゴマに俺のけん玉2つが激突すると……俺達の武器はそのまま火花を散らし合いながらぶつかり合うのであった……。








「……うおおおおおおおお! 負けんな! 俺のけん玉ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」






 俺が気合を込めてそう言うと対するガリレオは、冷静な声で告げた。



「……いいや。悪いがこの勝負、俺の勝ちだ。……それを今、見せてやる!」







 ガリレオは、そう言うと自分の放ったベイゴマに向けて掌を向けて何かの魔法をエネルギーを送り込んだ。野郎の掌から強烈な魔法力が放出されて、それがベイゴマへと吸い込まれていく……。






「……なっ、なんだぁ? こりゃあ?」



 その現象に意味が分からず固まっていると……ガリレオは、大きな声で詠唱を始めて、宣言してきた。













「……貫全制覇槍装撃かんぜんせいはそうそうげき! この世のありとあらゆるものを貫き……突き進み続ける唯我独尊の力……我の元に発現せよ!」







「……!?」



 ――これは、一体!?







 その時、野郎の投げたベイゴマが強烈な光を放ち始めて……さっきまで互角だったはずの俺のけん玉を少しだけ押し出し始めた……。俺が驚いていると野郎は更に大きな声で宣言した。










「……目覚めろ! 古の時代に眠りし魂を解放せよ! ベイゴ魔法! 魂業見虎ソウル・マニフェスト!」





 刹那、ガリレオの宣言と共に野郎のベイゴマが俺の放ったけん玉を砕いた。……それも最初にひびが入ってそれが徐々に広がっていき、たちまち……けん玉が砕かれたのだ。跡形もなく……無惨に……。







「……そっ、そんなぁ!? だって、使ってるものは確かに一緒だったはず……」



 ショックだった俺は、そう言うとガリレオが自分の所に帰って来たベイゴマをキャッチして淡々と話し出した。







「……これこそ、お前が今まだ持っていない上代魔法の真なる力。その一部だ。分かっただろう? これで。……今のお前は俺よりはるかに弱い! その程度じゃ吸血鬼と戦っても返り討ちにされるだけだ」









「……くっそ…………」




 バラバラに砕けた鋼のけん玉の欠片たちを見つめながら俺は、野郎の話に耳を傾けていた。ガリレオはきっぱり言った。







「これでもう分かっただろう? お前は、これから……みっちり鍛えなければならないんだ! 少しでも強くならないと……お前までやられてしまうかもしれないんだからなぁ!」















 俺は、ガリレオのその言葉に……もう頭を横に振る事なんてできなかった。かくして、俺の短期集中特訓が開始される事となったのだった……。






























  ――To be continued.

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