26th mission 昔遊び対決
「……くらえっ!」
男の鋼の糸が俺の手に襲い掛かってくる。俺は、すぐにそれを躱そうと体を横転させて回避。そして、糸を避け終えてからすぐにこの手に握りしめたけん玉を鎧の男を目掛けて投げ込んだ。
「……ボール・スラスト!」
岩石でできたけん玉の玉が、男の銀色の体にぶつかろうとしていた。しかし、岩石球が鎧にぶつかった途端に彼の鎧は、カコンッと音を立ててぶつかり、そのまま跳ね返って来る。
男は、言った。
「……言っただろう! 俺の鎧は特別製だぁ!」
そして、すかさず男はベイゴマを投げてきた。
「くらえ! ショット・ハリケーン!」
鋼のベイゴマが空中を回転しながら近づいて来る。その強烈な一撃が俺の元にやって来るこの一瞬の間に俺は、すぐ……もう一度避けようと足を動かして、体を反転させつつ、手に持ったけん玉を投げ込んだ。
――しかし、それでも……奴の鎧を砕く事はできない。すぐに玉が跳ね返って来るが、俺はそれを狙っていたとばかりにこっちへやって来る玉にけん玉の持ち手をぶつけて、更なる攻撃を仕掛ける。
「……ベースボール・ブレイク!」
2発目の岩石球が男の鎧に向かって飛んで行こうとした。しかし、やはりそれでも男の鎧に俺のけん玉が当たってもカコンッ! と爽快な音を立てるだけで奴の鎧は無傷だった……。
――硬すぎる……!
そうとしか言いようがなかった……。鎧には、傷1つつける事ができない。この鋼を打ち破る事ができればこの野郎に特大ダメージを与えられるというのに……。
すると、男が笑いながら俺に言ってきた。
「……ばかめ! 何度も言わせるな。俺の鎧は砕けない。いい加減、そんなカスみたいな攻撃はやめろ。俺の鎧には、傷1つつける事なんてできやしない! くたばるが良い!」
すると、男突如として今度はもう片方の鎧の纏われていた方の手に自分の掌をかざして詠唱を始めた。
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……長い詠唱の後に俺の手に纏わりついていた銀色の鎧は、形を変えて分裂をして……とうとうその姿をベイゴマへと変化させた。
「……!?」
――なんだって!? 俺は、驚いた。すると、驚いている俺に向かって男は得意げに告げるのであった。
「……悪いな。俺のベイゴマは別に1つではない。増やす事なんて簡単さ……」
そう言うと男は、鋼の糸にベイゴマを3つ全て一気に巻き付けて投げの構えを取り出す。
――それに対して俺も手に持ったけん玉を構えて攻撃の姿勢をとった。……しかし、そんなポーズをとったは良いが……実際に俺は次に何の技を相手の何処に叩き込めば良いのか皆目見当もついていなかった。
「……どうする?」
ボソッと相手に聞こえない位の音量で独り言を言った。……だが、実際にそうだ。どうすれば相手を倒す事ができるのか? それが全く分からなかった。鎧を狙っても意味がないし……。でもだからって他に狙える場所なんて……
――と、男の体のあちこちを見て弱点らしき箇所を探しまくったが実際には全然見つかりはしなかった。何処もかしこも銀色……いや、待てよ。
俺の視線がある一点に集中する。これは、間違いなかった。1つ……いや、2つだけ狙える場所があったのだ。
俺は、すぐに攻撃するターゲットを定めて、そして次に何を出すかを心の中で決定づけた。
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「…………」
「…………」
俺達はお互いに睨み合い、そして次なる一手を繰り出そうとした。
――俺と男の目がほぼ同時に見開かれる。その瞬間に俺達は、それぞれ技を繰り出す時のポーズをとって、武器を投げ込んだ。
「……ケンダ魔法!」
「……ベイゴ魔法!」
両者の牙がぶつかり合う。魔術と技術の合わさった戦いが展開されるのであった。俺は、けん玉の糸の部分を持って、けん玉の持ち手の部分と玉の部分を両方、狙いを定めていたあの場所に向かって投げた。
男は、すぐに俺のけん玉の進行方向を見て気づくのだった。
「……なっ!? 鎧の装着されていない手を狙いに来ただと!?」
男が、そんな事を言う。しかし、気づいた時にはもう遅い。俺のけん玉が男の右手目掛けて激突しにかかっていた。
「……くっ! 簡単にやらせると思うなよ!」
しかし、攻撃が当たろうとしたその直前に男のベイゴマが突如として前から俺のけん玉にぶち当たって来る……!
「……甘い! ショット・ハリケーン! 一砲撃目ェ!」
男の鋼のベイゴマが俺のけん玉に当たって、凄まじいパワーで正面衝突をする。そして、やがて……両者の武器は、お互いに跳ね返ってしまい、お互いに最初の攻撃は不発に終わってしまう。
だが、それが俺の狙いではなかった。更にそこから俺は、自分の元に帰って来たけん玉の姿を見てすぐに糸から手を離し、持ち手の部分に持つのを切り替えた。
空中に浮いた持ち手の部分をガシッと掴むと、すかさず俺はまだ空中の上で浮いた状態のけん玉の玉の部分を今度は鎧のついていない左手に向かってぶん投げた。
「……スカイ・ブランコリン!」
俺の岩石球がとんでもない角度から左に急接近。後、一歩という所で男の腕に当たろうとしていたが……しかし、それさえも男は自身のベイゴマを岩石球にぶつけてきて、自分の腕を守るのであった。
男は、言った。
「……これで、お前のけん玉の攻撃は全て封じた。ふふふ……勝った! これでやっとお前を倒す事が出来たのだぁ!」
そして、3発目のベイゴマをそのまま俺の元に飛ばしていった。
「くらえ! ショット・ハリケーン! 三砲撃目ぇ!」
ベイゴマの超高速の回転が俺の腹に襲い掛かる。しかし、俺はその攻撃を受ける直前に自分の口元を吊り上げていやらしく微笑んで男に見せつけた。
「……へっ! ば~かめ。今回のスカイ・ブランコリンは……一味違うんだぜぇ!」
「何……!?」
度肝を抜かれた表情を見せる男だったが、もう遅い。俺は、自分の元に跳ね返って来た岩石球が空中を移動する様子を見上げながらけん玉の持ち方を変更するのだった。持ち手のスティックの部分が上に来るようにけん玉を持つと俺は、そのままこちらへやって来た岩石球をそのスティックの部分をバットのようにしてカキィィィン! と撃った。男は、その光景に驚いた表情で言った。
「……なんだと!?」
そんな男の様子を見て俺は、更に得意げに告げた。
「……へへへっ! 今さっき思いついた合体技だぜ! 名付けてベース・ボルンコリン! ベースボールブレイクとスカイブランコリンの合体技だぜ!」
その一撃によって更に放たれた岩石球が接近してきたベイゴマに激突! そして、火花を散らし合いながらも……激しい戦いの果てにお互いのベイゴマとけん玉が弾き返されて行くのだった……。
「……なっ!? 何ィ!」
男の方は、とてもショッキングな表情をして俺の事を見てきたが、しかし俺の方はどうって事のない顔で男の事を見ていた。何故なら……
「この攻撃がこれで、終わると思うなよ……。コイツは、ただのベースボール・ブレイクなんかじゃない……。今回の「野球」は……千本ノックだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺は、そう言うや否や自分の元に帰って来たけん玉の玉の部分を再びスティックの部分でカキィンッ! と撃った。爽快な音がして、それと共に玉がまたしても男の元へ飛ばされていった。今度の狙いは、男の右手。肩まで鎧が装着されていないその生身の状態を俺は、狙った。
今回は、さっきまでと違い男がベイゴマを投げてきちゃいなかった。だからこそ……この攻撃を決める事は最重要であった。
――いける! 今度こそ、この野郎を倒せる!
俺は、そんな風に勝利を確信した。男の方も敗北を悟って緊張に満ちた表情を浮かべて小声で何かを喋り出した。
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――しかし、その時だった!
「……2人ともちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
向こうから女の声がした。それも聞き覚えのある声で、少し低めだった。俺と男は、その向こうから聞えてきた声を聞いて一端、お互いに攻撃する事をやめて、声のした方を見てみた。すると、そこには見覚えのある全身が黒服の女と、白いドレスに手足を拘束されたお姫様みたいな人がお姫様抱っこされた状態で現れた。俺は、彼らの事を見て言った。
「……サマンサ。……と、アリナ?」
俺達の戦いは、そこで中断したのだった……。
――To be continued.
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