22nd mission 最初の町に到着っす!
――俺達は、港に向かって車を走らせていた。永遠に近いくらい長く続く一本の馬車道。それを真っ直ぐ……ひたすら真っ直ぐ進み続ける俺――進藤大我と、そしてグランティーノ・ファミリーのボスの娘で、今は両手両足を拘束されており、また胸には
いつまでも景色の変わらないその長い一本道に嫌気がさしてきた俺は、静かな車内の中でようやく口を開いた。
「サマンサ。お願いしたい事がある」
俺は、そう言うと自分のポケットから3重に折りたたまれた紙を1枚取り出してそれを後ろに座る彼女へ右手だけハンドルから手を離し渡した。サマンサが俺からその紙を受け取ると彼女は訊ねた。
「なんだこれ?」
「……地図だ。しかも、俺達が今いる所から目的地であるシタデラクア港までの道のりを事細かに書いてくれている超絶便利な地図だ。これをお前にやる。だから、見つけて欲しいものがある」
「なんだ……?」
サマンサがそう問いかけると俺は、大きく溜息をついて答えた。
「……もう疲れた。そろそろ休憩したい。……さっきから一向に景色が変わらないし……何なんだここは? とりあえず近くにある町をその地図から探してみてくれ」
「町ぃ~?」
彼女は、そう言いながらも手を使って地図を開こうとしていたが、しかしうまくいかない。何度も何度も片手で開けようとしていたがうまくいかず、ついに両手で彼女は折りたたまれた地図を開こうとした。――しかし……。
「……あっ、開かない?」
サマンサは、驚きながらも段々少しずつその表情に怒りを纏わせだしてイライラしながら彼女は地図を開こうと両手でこじ開けようとしていた。
「……ぜんっぜん開かないぞ! これェ!」
彼女が困っていると前に座っていた俺が、サマンサの状況をミラーで確認。俺は、地図の開け方について説明し忘れていたのを思い出し、申し訳なさげに言った。
「すまん。……それ、魔法でロックがかかっていてな。人差し指とかでトントンと地図を叩かないと開かねぇんだったわ」
サマンサは、怒った表情になって怒鳴り声を上げて言った。
「……それを先に言えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
その後、彼女は怒りながらも地図を開く事に成功し、中身を見るのであった……。助手席に座っていたアリナもサマンサの見ている地図を前から顔を覗かせて一緒に見ていた。
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俺は、しばらく彼女らの返事を待ち、黙って運転を続けていたが、なかなかサマンサから応答がない。かなり長い時間が過ぎた所で俺は、少しだけ怒鳴った声でサマンサに聞いた。
「……おい。それで、近くに町はあるのか?」
すると、後ろから声が聞こえてきた。
「……凄いわねぇ~。この地図! 家のファミリーには、まだない技術だわ」
しかし、その声というのはサマンサではなくアリナの声だった。アリナの声の後にサマンサが答えた。
「お嬢、我々もこの地図の技術を盗んで利用しましょう」
「ええ! そうね!」
俺は、彼女らのその会話の後にハンドルを握りながら突っ込んだ。
「……だから、何処に町があるんだよ! 俺を休ませてくれよおおおおおおおおおおお!」
*
――それから、少しして俺達はようやく町に着く事ができた。あれからもサマンサとアリナの会話は止まらなかった。結局1時間くらい車を走らせ続けて、俺はもうヘロヘロだった。
俺達は、町に着くとすぐ車から降りる。町の大通りの端っこに車を止めると俺は、車にロックをかける。このロックも魔法でできるらしく。降りた後にドアに手を触れて魔力を込めるとロックする事ができる。
そして、ロックを終えた後に俺達は車の周りをうろうろ歩いたりし始めた。町の至る所から視線を感じたが……気にしないようにしていた。
すると、サマンサが俺に言ってきた。
「……さて、それでこの町に降りてどうするつもりなんだ?」
「……そうだな。とりあえず、空も薄暗くなってきたし今日泊る宿とかあったら入ろう。サマンサとアリナは、文字が読めるだろう? 俺は読めないから……2人で宿屋を探しに行ってくれ」
「分かったわ」
アリナの元気の良い返事。それと逆に今度はサマンサのかったるそうな返事が返って来た。
「……はぁ、仕方ない」
彼女らが返事をした後に俺は一応、言っておこうと思って彼女らに補足として自分がこれからする事を言った。
「……俺は、これから車の方のメンテナンスとかをしてみるから……宿を見つけたらまたここまで戻って来てくれ」
「分かったわ!」
「はぁ……」
そうして、全く異なる反応をする彼女らは、イタリア風の石とレンガでできた田舎っぽい町の暗闇の中に消えて行った……。その後ろ姿を見送ると俺は、早速車の方を見つめた。
特に俺が見ていたのは……トランクだ。サマンサとの戦いの中でトランクをけん玉に変化させて戦った影響で、少しだけ傷ついていた。
「……うーん。でもまぁ、これはどうしようもないかなぁ……」
ケンダ魔法を解除してトランクに戻しては見たけれども、傷とかはそのままだった。それなら、もう治す手段はない。
「はぁ……」
俺は溜め息をつきながら車の他の部分を見てみようと歩いて寄って行った。
しかし、俺が車の方へ集中し始めた丁度その時に……遠くから何者かが近づいて来ていた事をこの時の俺は、まだ分かっていなかった……。
――To be continued.
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