第121話 移動準備を

店舗の準備が進む中、クロエ達は城に向かう事になる。

「ゴウ様は来てくれないのですか?」

「城では色々あったからね、それに自分が表に出過ぎると権力のしがらみから抜けれなくなりそうなので。」

「ふん、軟弱者め。」

「ローズ!失礼ですよ!

ゴウ様お許しください。」

「かまいませんよ、それより頑張ってください、援軍を得られるかはクロエさんの頑張り次第ですから。」

「はい、頑張ります。」

俺はクロエを見送ったあと、ミユキとアヤカ、カスミの3人を呼ぶ。


「ゴウさんどうしました?」

「今のうちにクロエさんの国を見てこようかなと思ったんだ。」

「魔族に攻められているとか聞きましたけど大丈夫でしょうか?」

「俺の移動手段に攻撃は効かないよ、それより向こうに渡る港を作ろうと思ってね。」

「渡る港ですか?」

「そう、もし援軍を送ることになったら向こうにも大きな港があった方がいいしね。」

「お兄ちゃんのチカラって港も作れるの?」

「そっかカスミちゃんは知らなかったね、俺は今別の場所を拠点にしてるんだ。」

「この東京駅じゃなくて?」

「そう、それでこの前まで此処にいなかったんだけど、その場所に港を作っているんだよ。」

「そうなんだ。」

「カスミさん、凄く綺麗な港なんですよ、一緒に行きましょう。」

短期間ではあるがアヤカはカスミに懐いたようで姉妹のように仲良くなっていた。


「そうね、アヤカちゃんと一緒にいたいけど、みんなの事もあるし・・・」

カスミはこれまで一緒にいたクラスメイトの事を考えていた。

「どうする?此処に残ってもいいよ。」

「ちょっと相談してくる。」

カスミはリュウタ、マナブ、そして友人のナオコに相談する。


「ゴウさんに付いて行くか・・・

たしかにゴウさんとの繋がりは大事にしておきたいな。」

マナブはゴウとの繋がりを大事にするべきだと考える。

ゴウの機嫌一つで自分達の環境は一変する、カスミを通してでも縁を強める事が最重要ととらえていた。


「なんでカスミが行く必要があるんだよ、あんな小学生を侍らせるような奴、マコトと大差ないじゃねえか。」

リュウタは反対の立場を取る、当初こそマコトを断罪してくれた恩を感じたのだが、カスミがゴウにベッタリな事に苛立ちを覚えており、その上、ミユキ、アヤカと歳の違う美少女を側におき慕われているのも面白く無いのであった。


「リュウタ、お前はゴウさんに口が過ぎるぞ。

カスミさんが親戚のゴウさんと旅行に行くだけじゃないか、なんの問題がある?」

「問題も何も、カスミの安全はどうなるんだよ!」

「安全も何も親戚じゃないか。」

リュウタは下世話な想像をするのだが、マナブは親戚でそんな関係は無いと想像すらしていない。

二人の意見が分かれる中・・・


「カスミはどうしたいの?」

ナオコとカスミは二人で話していた。

「私はお兄ちゃ・・・ゴウさんに付いて行きたいかな。」

「それで決まりじゃん。」

ナオコはあきれたように結論を出す。


「でも、みんなが大変な時に私が離れるのは・・・」

「大丈夫よ、大変って言ってもお店の準備しているだけだし、大した事ないわ。」

「でも・・・」

「でもじゃない、カスミ、こんな世界に来たのよ、自分に正直になってもいいんじゃない?」

「ちょ、ナオコ、なんの話?」

「もう顔がそう言ってるわ、前に話していた好きなタイプの人ってゴウさんの事なんでしょ?」

「えっ!な、なんのはなしよ。」


これまで女子会などで好みのタイプなどを話したことはあったがゴウの名前を出した事は一度も無い、カスミは動揺が表情に現れていた。


「顔に出すぎ、たしか頼れるお兄さんみたいな人で、優しくて面倒見がいいんだっけ?」

「ちょ、ちょっと、ち、違うからね!」

「違わないでしょ、ゴウさんに甘えてるカスミの表情、やばい事になってるからね。」

カスミは隠しているつもりかもしれないが女の子達から見れば一目瞭然、すでに公然の事実として認識されていた。


「えっ?」

「私達女子はみんな応援してるから、行ってきたら良いよ。

あっ、でも〜結果報告はよろしく、帰ってきたら女子会だからね。」

「ちょ、ちょっと、ナオコ!誤解だから!ねっ!聞いてる!」

リュウタだけが反対の意思を出すが、クラスメイトの多くもカスミがゴウに付いて行く事を応援した為、リュウタも渋々納得するのであった・・・


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