異世界旅行

カティ

第1話 異世界転移?

俺は桐谷ゴウ30歳、しがないサラリーマンだ。

今日は営業も上手く行き、空いた時間で営業に来た町の観光をしていた。


「鉱山跡地ねぇ・・・」

俺は銅山跡地に建てられた観光施設に来ていた、ここはトロッコ列車に乗り、実際の坑道まで行けるのだ。

馴れない乗り物に少しテンションが上がりながら坑道を目指す。


だが、俺のテンションとは違い乗っている人は少ない、高校生ぐらいのグループと母娘連れぐらいしか乗っていない。


どうやら田舎にありがちな寂れた観光地なのだろうか・・・

少し不安になりつつも昔に作られた煉瓦造りのトンネルに入っていく。

ノスタルジックに感じていたのだが、いつまで経ってもトンネルを抜けない。


「長いトンネルだな・・・」

俺はこんなものなのかと思っていたのだが、学生グループが騒いでいる。


「なんで抜けないんだ?」

「子供の頃に来た時はもっと短かったわ。」

「どうなってるの?」


どうやら地元の学生のようだがその言葉から不思議な事が起きている可能性を少し感じる・・・


すると前に白い光が見えてきた。


やっと抜けるのか、学生達は騒いでいたが子供の頃の記憶と違っただけなのだろ、俺は少しのガッカリ感と安堵の気持ちが入り混じった状態で止まったトロッコ列車から降りようとする。


「おじさん、降りちゃだめだよ、ここ駅じゃないよ。」

家族連れの子供が俺に声をかけてくる。

「あれ、止まったから降りるのかと思っちゃったよ。

お嬢ちゃんありがとう。」

「うん♪」

「こら、アヤカこっちに来なさい、すいませんウチの娘がご迷惑をおかけして。」

母親が俺に頭を下げている。

「いえいえ、アヤカちゃんは間違っていた自分を引き止めてくれたんです。

優しい娘さんですね。」

「お恥ずかしい話です、知らない人について行かないか心配でしょうがないんです。」

「お母さん、恥ずかしいから言わないで。」

アヤカは頬をぷくっとふくらましている。


俺は母娘の会話を微笑ましく見ていたのだが・・・

「えっ?トロッコが消える?」

俺達が乗っていたトロッコ列車が消えて行くのだ。


「なに、何が起きてるの?」

「おい、なんなんだ!ここは何処だよ!」

「トンネルがないわ!ねえどうなってるの!」

周囲は一気にパニックになる。


白い空間に俺と母娘、そして学生が5人の計8人が取り残されていた。


「どうなっている?

・・・誰だ!誰かいるのか!」

俺は前方に俺達以外の人の気配を感じる。


よく見ると女の人が土下座をしている。

「えーと、あなたは?

そして、なんで土下座をしているんですか?」

「申し訳ありません。

私はあなた方がおられた地球とは別の世界の神です。」

「神様!」


「えっ、うそ、これって!」

「だよな!」

学生達が騒ぎ始める。

「えーと、君達は何が起きているかわかっているの?」

俺は何か知っているように騒ぐ学生に聞いてみる。


「おじさん、異世界転生に決まっているじゃん、俺達選ばれたんだよ。」

「そうよ、悪役令嬢になって死亡エンドを回避するのよ。」

「なんで悪役令嬢系なんだよ、これだけ数がいるんだから冒険物だろ。」

「違うって、生産系ってのも有りだろ。」

「すいません、みんなも落ち着いて、えーと・・・」

最後に話していた娘は俺を何と呼ぶか迷っているようだった。

「俺は桐谷ゴウだ、桐谷でもゴウでも好きに呼んでくれ。」

「では・・・ゴウさん。

私は前田ミユキです。

私の事もミユキと呼んでください、

それと友達が騒いでしまってすみません。」

「それはいいんだけど、なんでみんな興奮しているんだい?」

「え、えーと、恥ずかしい話ですがお話とかである異世界転生の話が自分に来たので興奮しているのかと・・・」

ミユキは照れくさそうに話している。


「あ、あの、話をさせてもらっていいですか?」

学生の勢いに押されて存在感の無かった神様が手を振りアピールしていた。


「すいません、話の腰を折ってしまいました、それで何でしょう?」

「・・・そちらの皆さんがおっしゃる通り、異世界に来てもらう事になります、転生じゃなくて転移という形になりますが。」

「断ることは?」

「申し訳ありません、帰る手段が無いのです。

あなた方には謝罪するしかありません。」


「それで俺達はどんなチートがもらえるの?」

「チートですか?」

「そう!どうせアンタの失敗か何かで異世界に行くんだろ?

俺達がやっていくのに必要なチカラをくれよ。」

「それは、ご用意しようとは思っておりましたが、どんな物がよろしいのですか?」

「そりゃ、アイテムボックスに魔法、錬金術、剣術、体術、あっ、身体能力の向上と聖剣もほしいな、あとは・・・」

学生の一人が思いつくまま、次々と言っているが、神を名乗る女性はワタワタしている。


「待ってください、そんなに言われても一人に全ては無理ですよ。」

「無理なの?神様なのに?」

「神様でも無理です、そりゃ最上級の方々なら何とかなるのかも知れませんが・・・」

「なに?あんた下っ端なの?謝罪するなら上の人が来るんじゃないの?ねえ?」

神様に詰め寄っていく男を近くの女が腕を引っ張り引き止める。

「マコト、止めなよ!」

「ちっ、ならアンタに何が出来るんだ?言ってみな、それ次第で謝罪を受けるか考えてやるよ。」 マコトと呼ばれた男は納得していないのか不機嫌そうに言葉をぶつけている。


「私が出来るのはあなた方それぞれの望みを聞き、それに合ったチカラを最大限まで差し上げたいと思っております。」

「へぇ、俺達の望み通りってか。」

「はい、ただチカラを差し上げるにもそれぞれ魂の容量がありますので何でも詰め込むような事は出来ないのです。」

「なんだよ、使えねぇ・・・まあいいや、それでどうしようか。」

マコトは少し考える・・・


「じゃあ、俺は最強のチカラと無限アイテムボックス、不老不死と、あと見た目を美男子にしてくれ。」

「そんなに入りません、そもそも最強のチカラなんて定義がありません。」

「なんだよ、これも駄目か、なら今言った中で出来るのはなんだよ。」

「不老と美男子、アイテムボックスは容量制限付きなら何とかなりそうです、この中で1つ選んでください。」

「1つ?そんなの使えるかよ!」

「ですが、貴方の魂だと、これでも限界で・・・」

「あー使えねぇ、くそっ!」

「それでどうしますか?」

「ダメダメ、そんなのじゃ無双できねぇ、少し待てよ。」

「え、えーと、なるべく早くしてほしいのですが・・・」

「なんだと、アンタのミスでこうなったのに時間もくれないのかよ!」

「すいません!でも時間があまり無くて、他の方で決まった方はいませんか?」

「なんだよ!俺は後回しって言うのかよ!」

「そんな訳じゃ無いんです、でも決まって無いなら・・・」

「うるせぇ、そこで待ってろよ!」

半ギレのマコトは女性を怒鳴り散らし、あーでもないこーでもないと時間を費やしていた。

その雰囲気に周りの人達も声を上げづらくなり、無駄な時間が過ぎていく・・・


二人のやり取りを聞いていた俺は少し同情していた、たしかに女性のミスではあるのだろうがこの人は誠意を持って対応しようとしている、たしかに取り返しのつかない事ではあるのだが、これ以上俺に責立てる気は無くなっていた。


「それなら、私を先にお願いできますか?」

俺は手を上げる。

「ええ、大丈夫です。

貴方が望むチカラはなんでしょう?」

「俺が望むのは・・・」


「あら、まだ終わってないのかしら、やっぱり首になる神は駄目ね。もういいわ、後は私がやっておくから貴女はサッサと退職しなさい。」

急に別の女性が現れ、述べた言葉に全員の視線が集まるのであった。

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