第5話 不思議な少年

ベリーのスコーンはあっと言う間に、レダが今し方に出会ったばかりの少年のお腹に消えた


如何にも名残惜しそうに〜


残念そうに小さな手指を、少々お行儀悪くペロペロッと子猫の如くに舐める様に苦笑したレダはハーブ香るお手ふきを広げて渡してやる



「お姉さま、『レダ亭の美女姫』レダ様ですよね?」


『美女姫?!』


ええええええええええナニソレ?!



予想外の返事にレダは思わずブーーーーっと吹き出す



「『美女姫』だなんて褒めすぎよ

でもーーー

私の事、あなたもしかして知ってるの?」


「うん♡

もっちろーーーーんのろんッッ!」


元気よくハキハキした明るい声


「この町で

レダお姉様の事知らない男の子がいたら僕会いたいもーーーーん♡」


全然悪びれた様子も無く

レダが名も知らぬ、正体不明の美しい少年はフフン♪と微笑んだ


実に得意げな表情を、キュートなエクボと共に浮かべる



「……喉渇いていない?

たっぷりの蜂蜜入りレモネードだなんて、凄く素敵な飲み物でしょ?」



レダはパッチワークの巾着の中より

レモネードを詰めてきた貴重な最後の一本のボトルを取り出す


駄目押しに彼の興味を引くようにタプンと


〜しなやかな掌で瓶の長い首を摘まみ、美味しそうに中身を揺らした


チャプン♪〜

濃くとろみのある魅惑の液体がガラスボトルの中で揺れる



ゴクッ……、思わず細い喉が動いたのを見定めてから


「あなたの名前は何というの?

でもぅ、本名じゃ無きゃイヤよ?」


レダは交換条件としてニッコリ問い掛けした



流石なレダ亭これぞしっかり者&看板娘の手腕


金髪巻き毛、エメラルドグリーンの冴えた瞳を持つ少年が面白そうにフフフッと又笑う


「僕の名前はマリウスだよ」


「では差し上げるわ♡」



きゅぽんとコルク栓を抜くが早いか、マリウスと名乗った美少年は目を細め、煽るように一気にグーッと飲みきった


最後の一滴も遺さず、満足げに目を細めた少年


まるでゴロニャンする子猫のような可愛らしさだ


『トロトロの幸せそうな笑みがたまらないわねぇ』


レダは心の中でそんな事を呟いた


ーーーハッとする



『ひょっとしてあの男達、いたいけな子どもを誘拐する人さらいだったのでは?!』


ーーーだったら罪悪は倍増しだ


『むしろ罪状を大いに割り増ししたって足りないくらいだわ!!』



正義感の人一倍強いレダはプンスカする


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