とある女盗賊と金髪巻き毛の美少年
夏生めのう
第1話 序章
「ふぅ、後ここを済ませれば全館の掃除やっと終わるわね」
それはもぅピカピカに、朝から真っ青な蒼天が広がる天気の良い日の出来事。
ギギギギギーーーー
歪む鈍い音をたてて古い錆び付いた鎧戸の窓がゆっくりと開いた
それは永らく使われていなかった、埃まみれの3階建ての旅籠の窓辺。
身を乗り出しニコニコと満足そうに立っていたのは、緩やかなウェーブが美しい長い艶めく髪をクルリと大判の麻スカーフで巻いた一人の美少女だ。
掃除の作業中とはいえぱっと見は実に質素な身なりだが、それだけに逆に元々の素材の良さが溢れんばかりに光る美少女。
年齢は今現在13歳。
この国の女性の結婚適齢期~15歳という初婚年齢基準を考えればソロソロいいお年頃といえた。
今でこそまだ幼い、幼児特有のあどけない子どもっぽい丸みがどことなく抜けない。
しかしこの国の女性が殆ど結婚するという年齢ともなれば、きっと誰もが振り返る美女に育つことだろう。
既に楽々予想出来る抜群の可愛らしい容姿だ。
そんな成長の先がうんと楽しみな、姿勢の良いスラリと身のこなしが機敏な愛くるしい少女の名前はレダといった。
~今現在、経営が奇跡のV字回復中で巷で話題の繁盛店、善良な気の良い老夫婦が営む宿屋「レダ亭」看板娘である。
レダの掃除真っ最中の旅籠外壁は、よくある木造の組み木と漆喰作りではなくて蜂蜜色の石材を贅沢に使い、中々の上等な品の良い建物。
壁面にユーモラスな表情のガーゴイルの石像が守り神の如く取りつけられている。
怪物が口から吐き出す雨水を路面にぶちまけ、道行く人を怒らせぬようチャンと配慮した位置に雨樋の役割で、出入口横の何も今は花1つ生えてはいない小さな庭に向かって設置されている。
ガーゴイルの隣には突き出す手摺り無しの素朴な剥き出しのテラスがあり、窓辺を彩る花々の為の雨水貯水用の古びた樽が1つ見捨てられたかに置かれていた。
急な飛び込みの臨時雇いとして働いていた、溌剌としたキラキラの明るい生気を発散するレダは、自身で調合した潤滑油を扉蝶番にもう一度さし、ギィギィ開け閉めしつつ鎧戸の稼動の様子を確認しだした。
「うんバッチリね!」
やっと満足そうにフゥと息を吐くと、他の鎧戸にも同じくチュッと先細の油差しで潤滑油を注いでは廻る
美少女は錆びて動きが悪い場所に注入し、各各少しずつ馴染ませてゆく。
一寸づつ継ぎ足し、少しずつ動かし続けもうイイ頃だなと言う頃合いを見計らい同じくパァンと大きく開け放つ。
そんな要領で、華奢な両腕で残り全ての窓をテキパキと開け放った。
扉の重量もなんのその。
弱そうに、か細く見える腕だったが、実際は結構な力持ちっぽい様子だ。
「うん、さいっこー」
ウーンと伸びをし、豊かな風を十二分に室内に取り込むと、埃よけの掛かっていた椅子をゴトッと引っ張り出す
「そろそろ食事を取った方がいいかもね
~お腹がすいていては何も出来ないってものよ」
埃だらけの掌を、ミントの蒸留水をしっとり染みこませた手ふき布で丁寧に拭く。
フンフンと下界を見下ろす様に窓縁に腰掛け、細かい図案のパッチワーク、色取り取りの鮮やかな布地を丁寧に組み合わせた巾着袋から一塊の包みを取り出し膝に乗せる
本日の自分の昼食~
香ばしくローストしたクルミと、しっとり甘く煮たベリーのジャム入りスコーンだ。
レダはあむっと美味しそうにパクッと食べ始める。
飲み物はボトルに詰めた蜂蜜入りレモネード、酸っぱさと蕩ける甘味で疲れが吹き飛び労働後は最高の飲み物だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます