お天気キャスターのお姉さん、転生して天気魔女になる

青木タンジ

第1話 気象予報士が生中継のさなか転生する

「はい、本番5秒前、4、3、2、、、」


「みなさん、こんばんは、気象予報士の水鳥明子です。今夜の天気ですが、外はとても風が強いですね。会社や学校などからお帰りの際には、飛ばされないように気をつけてください。それでは各地のお天気をみてみましょう。」


時刻は16時55分。

私は、夕方のニュース番組でスタジオの外からお天気を伝えている。いわゆるお天気お姉さんだ。


「・・・以上です。スタジオの神永さん!お戻しいたします〜」


外は寒いので笑顔を絶やさず。。お天気お姉さんも大変だ。 次は1時間後の中継になる。


「水鳥さん、次の17時55分からの中継だけど、雨が本格的になりそうだからレインコート着用でお願いします。」

「はい、傘があったほうが視聴者に伝わりやすいですかね?」


「そうだね、じゃあレインコートと傘のセットでお願いします。」

「わかりました。」


外の様子を温度計を使っても数字だけだと視聴者に伝わりにくい。寒いだの、暑いだの言ってるだけでも難しい。


なので、時には小道具も使って今の状況や注意すべき点などを伝える。たまに熱のこもった演技(小芝居?)必要だ。もお天気お姉さんもなかなか大変なのだ。


「じゃあ、スタジオの神永さんからの呼びかけで中継入ります。」


「、、、ではここで、お天気です。スタジオの外には水島さんがいらっしゃいます。水島さん、外の様子はいかがですか?」


「はい、水島です。こちら、先ほどの中継から1時間ほど経ちますが、この間、風がものすごく吹いてきました。さしている傘がもう飛ばされそうです。雨も降り出していますので、レインコートも、、、きゃぁ〜」


「あっ、水島さん、水島さん! どうされましたか?」


イヤホンから聞こえる神永さんの声がだんだん遠くなっていく。カメラに向かってしゃべっていたはずなのになぜ? あっ、そうだ何かが頭にぶつかって、、、


ばっさっ


「おいっ、中継ストップ! 一旦、スタジオに戻して! 水島さん、水島さん、水島さん? 大丈夫ですか?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


あ〜、なんだか温かい。 

中継は風が強くて雨が降っていたからレインコート着ていたはずだけど、ここはポカポカしていて陽だまりの中みたいだな。。。


「、、ぉ起きなさい!」


「えっ? ここどこ? えっ? お母さん? 」


「誰があなたの母ですか。 私はこう見えてもまだ、、おっほん、起きましたか」


「はい、、、えーとっここは、、、」


「天界です」

「え? てんかい?? って天国ですか?」 


「まあ似たようなものですね」

「ってことは、私、、、死んだんですか??」


「まあ人間界で言えばそうなりますね。」

「え、え、え、ええええっ〜」


ちょっと死んだ?ってどういうこと?? 私、たしか中継で外にいてマイク持って話していたら何かが頭にぶつかって、えええーそうか当たりどころが悪かったのかな、、そうか死んだのか私、、、昨日もコンビニ買ったおにぎりのお釣りをレジ横にあった寄付箱に入れたから天国行けるよね。うん、間違いない。


「時にあなた、面白いことをしていましたね」

「え? は?」


「ほら、人間界の天気を教えている」

「あ、気象予報士ですか?」


「そうそう、それは天界への冒涜です」

「え? そ、そんなつもりはありません。ただみんなが知りたい情報を電波、というか大勢の人に伝えていただけで」


「それが冒涜です。いいですか、そもそも天気というのは自然界が作り出しているものです。それを人間界のものたちがとやかく言うもではありません」

「とやかくなんて」


「だまらっしゃい」

「ひえっ」


「というわけで、あなたはこのまま天界にはいけません。罪を償ってもらいます。」

「つ、罪?」


「そうです。これから、人間界とは別の世界に転生してもらいます。そこでまっとうに生きて、徳をためなさい。」

「と、徳?をですか??」


「そうです。徳です。善い行いをすればたまります。私はあなたをずっと見てますよ」

「は、はい」


「では早速、転生してもらいます」

「あ、待って。」


「なんです?」

「これって、いわゆる異世界への転生ですよね。なにかチートな能力とかもらえるんですかね?」


「チート?能力? ないにを言っているんですか。なにも付きません。そんなものついたら徳もなにもないでしょう。」

「え? じゃあ単なる生まれ変わり? それはちょっと、、、」


「なにを言っているんですか! ただ、これから転生する世界は人間界とは違って魔法を使います。科学がなく、皆、魔法で生活をしています。」


「魔法か・・・ちょっと面白そう。だったら、上位魔法とかみんなが持ってないような魔法を使えるようにしてもらえると、、、」


「馬鹿おっしゃい!! あなたは徳を積みに行くんですよ。普通の、生活する上で最低限の魔法だけです。さっさと行きなさい。それとどの世界に転生するかはあなた次第。死んだときの記憶によりますからね。さあ強く念じて。罪を償い、徳を積むのですよ」


「ひええええっ〜罪ってなにも悪いことしてないしぃぃ、ああああっ〜〜〜」

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