第37話 真実

 「コイツは・・・」



 巨大化したパンケーキちゃんの姿を見たホーステイル国王は腰が抜けて座り込む。



 「そうです。あなたが喉から手が出るほど欲しかった最強種族のケモ耳族のパンケーキ様です。あなたはケモ耳族を手なづける為に、いえ、契約をする為に国中から最高品質の甘い果物を集めていたのです。ケモ耳族と契約を交わす方法は一つです。ケモ耳族に甘い食べ物を与え、その食べ物を気に入って自分の名前にすることです。そして、契約者も自分の大好きな食べ物の名前に改名する事で契約が成立するのです」



 私がパンケーキちゃんにビスケットを与え、パンケーキちゃんは最初はビスケットと名前を付けた。私もマカロンと名前を変更したので、ケモ耳族と契約が成立したのである。



 「あなたは、ケモ耳族と契約を交わし、世界征服を企んでいたのでしょう。しかし、パンケーキ様は、マカロンさんという聖女のような清らかな心の持ち主と契約を交わしました」



 「くそーー。我が長年かけて最高品種の果物を作らせていたのに、先を越されたのか!」



 ホーステイル国王は悔しそうに地べたを這いずり回る。



 「ケモ耳族と契約を交わすと、不思議なポケットというスキルが手に入ります。その不思議なポケットは、ケモ耳族を喜ばす為に、甘い物ならなんでも取り出せる不思議なポケットです。しかし、ケモ耳族の為に使用しなければ、何も出てこないポンコツなポケットだったので、ケモ耳族はポンコツ種族だと間違った伝承が伝えられるようになったのです」


 「もしかしてお前はケモ耳族にまつわる禁書を全部読んだのか?あれは、暗号文字が使われているので、全ては解読されていないはずだ」


 「私の前では暗号文字など、何の意味もありません。少し考えれば簡単に解読出来るのです」



 リリーちゃんのドヤ顔が眩しい。



 「マカロンちゃんに怪我をさせたのはお前かぁー!」



 パンケーキちゃんの真っ赤な瞳が光輝く。



 「パンケーキ様、落ち着いてください。マカロンさんは自分で転んで怪我をしただけです。ホーステイル国王には、きちんとした法の裁きを与えるべきです」



 リリーちゃんがパンケーキちゃんを止めに入る。



 「パンケーキちゃん、私のために怒ってくれてありがと。少し膝を擦りむいただけで問題ないわ。後はリリーちゃんに任せましょ」



 私が優しくパンケーキちゃんに声をかけると、パンケーキちゃんは元の姿に戻っていく。



 「マカロンちゃん。早くマカロンを作ってよ!」



 いつもの食い意地のはったパンケーキちゃんに戻って私は一安心した。



 「ホーステイル国王、あなたは世界征服を企み、オーブスト王国を私物化しました。また、財をなすために第二王子に命じて、果物の価格の操作をしました。あなたは国王には相応しくない人物だと私は弾劾します」


 「うるさい。うるさい。うるさい。オーブスト王国は我の国だ。我の好き勝手にして何が悪い。お前なんかどっか行けー」


 「まだ、おわかりいただけないのでしょうか?」


 「何が言いたいのだ!」


 「私が暗号文字を読めたのは、本当に私が頭が良いからだとおもったのですか?」


 「違うのか」


 「違います。あの暗号文字は正統派王家に伝わる王国文字なのです。私達ダンディライオン家は、古い昔にあなた達一族から王位を奪われた正統なる王族だったのです。全て、秘密の書庫の禁書を読む事によってわかったのです」


 「・・・」



 「秘密の書庫の禁書が読めないあなたは正統な王族ではないのです。私の意見が正しいのかどうかは、国民投票にて決定をいたしましょう。その間は、あなたは王ではありません。よろしいでしょうか?みなさん」



 誰もリリーちゃんに逆らう者はいなかった。それは、リリーちゃんの言葉を信じた事もあるが、最強種族のパンケーキちゃんと、いつのまにか聖女になっていた私が、リリーちゃんの仲間であるからである。そう、私達を恐れて誰も逆らえないのであった。


 

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