桜の雨に僕は濡れて。
日向
すれ違い。
まだ、桜は顔を出さず閉じこまっている。
静かに息をひそめて少し先のその時を待っている。
「暑いなぁ。」
緩坂を下りながらそんな独り言を呟く。
まだ三月半ばだというのに視界の奥では陽炎が揺れている。
だらだらと丁字路を曲がろうとした時、君が現れた。
二人がすれ違う。僕と君が横に並んだ時、ほのかに懐かしい匂いがした。
淡く何かが香る。でもその香りが何かはわからない。
それらを身にまとう君に惹かれた僕は、その揺れる後ろ姿を見た。
君は振り向かない。
顔を戻す途中で視界に入るカーブミラー越しの君の横顔。
何故か僕はその煙のように消えてしまいそうな横顔が鮮烈に頭に残った。
一瞬の出来事だったけど今日で一番のハイライト。いや今週一かもしれない。
後にそのハイライトは更新されることになるがそんなことを知らない僕はさっきより大きくなった歩幅で家に帰った。
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