『間違え』
「先輩、正座してください」
部室に入るなり、突然、そう言われた。
「俺、悪いことした? 何かの間違えじゃない?」
「それです、間違えではありません。間違いです」
なんのことか分からないが、何かが彼女の逆鱗に触れたのは間違えない。
「いえ、間違ってます。特に、それは絶対にだめなやつです」
「今、間違えなく、ナチュラルに心が読まれたよね!」
「この際ですから、言わせてもらいます」
彼女からの圧が強い。
「どうして、Web小説投稿サイトでは、『間違い』を『間違え』と書いてる人が多いんですか?」
確かに思った以上に『間違え』を使ってる作品が多い。
「使い方を間違えてる?」
「そこは『間違え』で間違いないです」
良かった、間違えてはいなかったようだ。
「あまりにも『間違え』が多いので、今どきの口語表現として『間違い』を『間違え』と言うのかとか、どこかの方言かとも思ってこれまでは静観してたんです。
まあ、少々意味が違っててもそこまで大きく間違っているわけではなかったですし」
「しかし、『間違いない』と『間違えない』ではニュアンスが変わってきます。
ここに至って『間違い』と『間違え』が区別できてないなと思ってしまい、気になって気になって」
彼女は、ため息をつきつつ椅子に座った。
俺も正座をやめても良いのではなかろうか。
「まあ、文法的には『間違い』が名詞で、『間違え』が動詞ですし、大抵の場合は『間違い』を使用していれば間違いない気がしますけどね」
言われてみると、『間違えてほにゃらら』というような使い方でしか使用しない気もする。
とりあえず、『間違い』と『間違え』を意識して使い分けて貰えれば良いだろう。
使い分けは各人で調べて貰うのが一番だ。
「これまで間違えて書いていた人はなぜ間違えていたのか知りたいんですけど、聞くのも憚られてもやもやしてたんですよね。
だれか真相を教えてくれませんかねぇ」
―― 解説 ――
777文字のオリジナルは、
https://kakuyomu.jp/my/works/16817330654624974190
で公開しています。
ジャンルとしては創作論・評論としていました。
まあ、長いこともやもやしていたネタをせっかく投稿を始めたので吐き出しておきたかったやつです。
実際、間違えてるのが良い悪いではなく、どうしてこのように書いていたのか理由が切実に知りたいです。
結局、理由がわかるまではまだまだもやもやが収まりそうにありません。
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