筋肉はブチ切れた

『筋肉はブチ切れた。必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃくの脂肪を除かなければならぬと決意した。』


「第5回のお題の『筋肉』用の書き出しはこんな感じだけど、どうかな?」

後輩の無言のジト目が辛い。


「先輩、ホントにそれで大丈夫と思ってるんですか?」

「あー、いやー、『筋肉』ネタが何にも浮かばなくて……」

そう、筋肉と無縁な男子高校生にこのお題は難しすぎる。

今回のお題は期間が3日あるものの、すでに2日経っている。


ちから先輩のことでも書いたらどうです?」

言われてみたらその手があった。

数合わせで入ってもらった幽霊部員だが、時々部室に現れては筋トレをして帰っていく。

筋トレ命な感じの奴だ。


『筋肉の多い生涯しょうがいを送ってきました。』


ぱこっ!

丸めたノートで叩かれた。

「なんとなく止めないといけない気がしました」

腕組みをして睨んでくる後輩の後ろに鬼が見える。

「そもそも、パロディやメタフィクションネタはどうかと思います」

「いや、俺としてもメタ的なネタはなるべく後にまわしたかったんだ。

まさか、5回目で切り札を切ることになるとは……」

机に肘を付き両手を口元で合わせた。いわゆる、ゲンド……


ばこっ!

再び丸めたノートで叩かれた。


「しかし、『筋肉』のお題で書ける気が全くしない」

やはり、普段から縁のないお題は難しい。

「別に無理して書く必要なくないですか?」

あきれた口調で言われるが、俺はデイリーミッションとかがあるとこなさないと落ち着かない方なのだ。

「書かないと負けた気がする」


「実際、負けた方が昼ごはんを奢ることになっている」

課外授業が終わったのか、丁度先輩が入ってきた。

実はこのお題投稿による七番勝負を行っていた。

最も俺はこれらの投稿が初執筆で中々厳しい勝負でもある。


「で、今のところどっちが勝ってるんですか?」

「先輩は『ぬいぐるみ』が書けなくて、1勝1敗2引き分けだね」

今のところ互角の勝負となっており、この『筋肉』は落とせない。

「先輩『ぬいぐるみ』が苦手なんて少し意外です」

先輩は、ひどく赤面した。



―― 解説 ――


777文字のオリジナルは、

https://kakuyomu.jp/works/16817330654297312531

で公開しており、KAC2023 第5回「筋肉」用の応募作品として執筆しました。

この時点でなぜか、お題につき1作ではなく、毎日投稿を行っており、「筋肉」お題の3作目という、作中より更に追い詰められた状況となっています。

KAC2023応募作品は、

https://kakuyomu.jp/users/mituha/collections/16817330653961619236

でまとめて公開してあり、お題縛りの777文字✕15作品というマゾっぷりが見られます。


なお、オリジナルの小説タイトルが「筋肉はブチ切れた」で、エピソードタイトルは、「走れ筋肉」でした。

ちょうど、カクヨム近代文学館の投稿が始まったところであり、「走れメロス」がたまたま目に入ったことからこのネタとなっています。

当初、総パロディも考えたのですが、あんまりだったので文芸部ネタとなりました。

そのお陰で文芸部ネタがシリーズ化したと思えば良かったのかもしれません。


なお、パロディではないのですが、カクヨム近代文学館を読んでて試してみたくなったので、「異世界のすゝめ」として、純文学風で短編を書いてみています。

https://kakuyomu.jp/my/works/16817330655014898248

『異世界純文学』って響き的には良さそうなのでみんな軽率に書いてみて欲しい。

なお、純文学って何かと問われても全くわかりませんので悪しからず。




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