文芸部 部活日誌

水城みつは

はじめに

きみ、文芸部に入らないかい?」

ちょっと上から目線な物言いでそう声を掛けられた。


 読んでいた本を閉じ顔を上げると、上級生の女の先輩だった。

「文芸部ですか?」

「そう、文芸部だ。絶賛新入部員募集中でね。

入学早々放課後の図書室で毎日読書に勤しんでる君は文芸部に入るべきだと思うのだよ」

確かに、あたりを見回しても俺以外で新入生っぽい生徒は見当たらない。

というより、ここ数日間でも放課後に図書室で読書をしている人はほとんどいなかったように思う。


「文芸部って、小説やエッセイとか書いて、文集作ってる部活ですよね」

確か新入生への部活動紹介でそう言っていた気がする。

「俺は読む方自体は好きですが、書くのは苦手で……

それこそ、読書感想文とかも全然書けなくて、むしろ嫌いな方なんですが」

「ああ、それは全然気にしなくて良い」

先輩はニッコリ微笑んでそう言った。いや、今思い返すとニヤリと悪い笑みを浮かべたと表現すべきだったかもしれない。

「うちの部は特に書くことは強制していない。まあ、ぶっちゃけ、幽霊部員でも構わないんだ。

それに、部員になると部室で読書も可能だし、図書室と違って飲食自体も禁止しているわけでないから飲み物を飲みながらの読書も可能だよ」

執筆の義務がないとなればかなり条件は良い。今の図書室より環境が良さそうだ。

そう考えているのが伝わったのだろう。

「会員制のネットカフェやマンガ喫茶と思って入部しないかい?」

甘い言葉で誘ってきた先輩に、

「入部します!」

うっかり、そう答えてしまった。


うっかり、そう、うっかり答えてしまったのだ。

甘言に乗せられた結果どうなったかは今後語ることになるかもしれない。

そんな文芸部の日常を綴ろう。




―― 解説 ――


このエピソードは、文芸部のネタはKAC2023およびその後の777文字で書いた短編版を再編集して連載版としてまとめるにあたり、プロローグ代わりに追加しました。


そもそも、なぜ連載版?の文芸部ネタを書いているかと言うと、なんとなく毎日更新を続けてしまっているため、新ネタはないので再編でお茶を濁そうとの魂胆です。

どうしてそんなことになっているかなどは今後の話や既出の短編版を読んで察していただければ幸いです。

不定期、かつ、メタな創作ネタや愚痴が含まれる作品となりますが、今後もよろしくお願いします。





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