第25話 待っていた ※フェリベール王子視点

 レティシアをパーティーに招いて、彼女と再会する。スタンレイ辺境伯に招待状を送ったら、参加するという返事があった。ここで、どうにかする。そうすれば、全て元通りになるはずだから。


 パーティーの開催日、俺は会場で招待客と挨拶する。正直面倒だけど、やらないと父に怒られてしまうから。主催者である俺の役割は、参加者たちをもてなすこと。


 きっと、彼女も来てくれるはず。だから、それまでの辛抱。


「お招きいただきありがとうございます、フェリベール王子殿下」

「ようこそ。来てくれてありがとう」


 次々と訪れる貴族の連中と挨拶しながら、俺は彼女の到着を待っていた。もうすぐ来るだろう。きっと、俺に会いに来てくれているはずなんだ。


「ッ!?」


 その時、会場内に見覚えのある女性が見えた。間違いない、レティシアだ!


 横には、見知らぬ男性が居る。彼女は、その男と一緒にいた。久しぶりに見たら、俺が知っている彼女よりも、ずっと綺麗に見えた。大人びたというか、色気があると言うのか。


 服装がドレスだからだろうか? それとも化粧しているからか? どちらにせよ、レティシアが魅力的に変わったのは事実だった。


 この短期間で、彼女は変わっていた。だけど、とても良い変化だ。


 美しくなったレティシアが、俺ではない別の男に笑いかけている。その光景を見て怒りが沸き上がった。なんで、そんな男と笑い合っているんだ。


 ダメだ。怒りそうになった感情を、どうにか落ち着かせる。冷静になれ。やるべきことは、話し合い。ここで、焦ったりしたらダメ。


「ど、どうかしましたか?」

「いえ、大丈夫です。申し訳ありません」


 挨拶の途中だった中年の貴族が、戸惑った様子で俺の顔を見てきた。動揺して変な態度を取ってしまったようだ。早く元に戻さないと。冷静になるんだ。そして、早くこの挨拶を終わらせてしまおう。


「大丈夫なら、良いのですが」

「えぇ。大丈夫ですよ」


 うん。俺は落ち着いている。レティシアと一緒に居る男が、スタンレイ辺境伯なのだろう。噂通りの男だった。あれなら、俺が負けるはずがない。勝負の結果は、目に見えている。


 不安だったのは、スタンレイ辺境伯が噂と違った場合。もしかしたらレティシアが気に入っていたら、色々と大変だったかもしれない。でもアレなら、考える必要など無かったな。戻ってくるように言えば、彼女は戻ってくるだろう。俺のもとに。


 彼と話し合って、婚約を破棄させよう。そして再び、俺とレティシアが婚約する。これで全てが元通りになる。


 当初の予定では、俺とレティシアの立場について、ハッキリさせるために仕組んだこと。俺の方が立場が上であることを理解させるための作戦だったが、失敗だった。


 しかし、彼女を失いたくない。仕方ないので、譲歩する。認めてやるので、夫婦として一緒に過ごそうじゃないか。


 レティシア達が近付いてくる。話し合いを無事に成功させよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る