ネットストーカー
上谷レイジ
本編
「あれ? 礼司さん、お誘いありがとー。今日はちょっと忙しくて無理かも……って、あれ? またフレンドリクエストが来た?」
俺は、趣味でプレイしているソーシャルゲームで、ネット上で知り合ったフレンドとの会話に夢中になっていた。
俺は公務員をしており、日中は忙しいが、夜になるとゲームに夢中になる。最近、ゲーム内で知り合った女性フレンドが、俺に熱烈なアプローチをしてきていた。彼女の名前は、ネット上でのIDでしか知らなかったが、彼女の写真を見る限りは美人であり、彼は彼女との付き合いを楽しんでいた。
しかし、彼女のアプローチがどんどんエスカレートし、彼女がプレゼントを贈ってきたり、ゲーム外でも彼女と会うことを強要してきたことで、俺は怖くなっていた。彼女は、自分が会社員であることを明かしていたが、それ以上の情報は明かしていなかった。俺は彼女について、何も知らなかった。
その夜、俺は眠れずにネット上で彼女の情報を調べ始めた。彼女が書き込んでいたブログやSNSなどを見つけ、彼女がどんな人物かを知ろうとしていた。しかし、俺がその情報を知ったことで、彼女はますますエスカレートし、彼女の言動はますます恐ろしいものになっていった。
「おい、礼司。君、どうしたんだ? 何か悩み事でもあるのか?」
彼女の言動に疲れ果てた俺は、他のフレンドに相談することにした。俺は、自分がストーカーに遭っていることを告白し、友人たちは一斉に彼を励まし、彼女のアプローチを拒否するように忠告した。
しかし、彼女はそれでも諦めず、俺を付け狙い続けた。彼女は、俺に何度も電話をかけ、メッセージを送ってきた。そして、ある日、彼女は俺のもとに姿を現したのだ。
彼女は、俺の家までやってきて、インターホンを鳴らし続けていた。
「ねぇ、どうして電話に出てくれないの? 私、あなたが心配なの。開けてよ!」
彼女の口調は優しかったが、どこか狂気を感じさせた。彼女は玄関のドアを叩き続け、その音は俺の恐怖心を煽った。
その時だった。突然、玄関のドアが開き、そこには警察官が立っていた。
「何してるんですか! 警察です! 大人しくしてください!」
警察官を見た彼女は、一瞬怯んだが、すぐに落ち着きを取り戻し、自分の主張を始めた。
「私は彼の恋人なんです! 彼が私に黙って引っ越してしまって、それで会いに来たんです! それなのに、この人が私の事をストーカー呼ばわりするから……」
「そんな嘘ついても無駄ですよ。あなたは、彼と面識があるんですか?」
警察官は彼女を睨みつけながら、彼女に質問をした。
「……いいえ。直接会ったことはありません。ただ、彼は私が愛している人なんです。だから、彼に会うためにここに来たんです。」
彼女は、落ち着いた口調でそう答えた。
「そうですか……では、あなたの自宅を教えてもらえますか?」
警察官は、彼女の住所を聞き出そうとした。
「いや、それは言えないわ。個人情報だもの。」
彼女は、警察に個人情報を教えることを頑なに拒んだ。
「それなら、あなたを逮捕しなければなりませんね。このままずっとここに居座るつもりなら、公務執行妨害で逮捕します。さぁ、今すぐここから立ち去ってください。さもないと、あなたを拘束しますよ。」
警察官は、彼女に対して強い口調で言った。すると、彼女は急に態度を変え、警察官に媚びるような態度を取るようになった。
「ごめんなさい。私が悪かったわ。もう帰ります。もう二度と彼には会いませんから。本当にすみませんでした。許してください。」
彼女は、警察官に謝罪をし、その場から立ち去った。
その後、彼女は二度と俺のもとに現れることはなかった。だが、俺は、あの出来事以来、女性恐怖症になってしまい、女性と付き合うことができなくなってしまった。それ以来、俺は誰とも交際することなく、独身のまま三十歳を迎えてしまった。
そんなある日のことだった。仕事を終え、帰宅した俺は、何気なくテレビをつけた。ニュース番組を見ていると、あるニュースが目に入った。
『次のニュースです。本日未明、都内に住む二十代女性が遺体となって発見されました。女性は自宅で首を吊っており、自殺と考えられています。』
俺は、そのニュースを見て驚いた。なぜなら、その遺体は、俺が以前住んでいたアパートの隣人だったからだ。さらに、この被害者の女性は、俺がストーカー被害に遭った際に、俺を助けてくれた恩人でもあったからだ。
この事件をきっかけに、世間では、若い女性を狙った連続殺人事件として報道された。警察は、容疑者の捜索に乗り出したが、犯人は未だに見つかっていないという。
そんな中、俺はネット上のある噂を耳にした。それは、事件の犯人である女性の容姿に関する情報だった。その女性は、肌が白く、黒い長髪で、赤い目をしていたというのだ。
俺は、その情報を聞いた時、まさかと思い、背筋が凍る思いがした。しかし、警察がいくら探しても見つからない以上、俺にはどうすることもできなかった。
それから数週間後、事件が起こった場所の近くで、不審な人物がいるという噂が流れた。その人物は、十代後半から二十代前半くらいの年齢であり、身長160cm前後くらいで細身の人物だという。目撃者の情報によると、その男は、まるで誰かを探すかのように辺りを見渡していたそうだ。また、その男は、夜になると必ず人気のない場所に現れていたという。その男の正体について、様々な憶測が飛び交ったが、結局、真相は分からなかった。
ある日のこと、俺がいつも通りに帰宅していると、後ろから誰かにつけられているような気がした。怖くなった俺は、早足で歩いたり、後ろを振り向いたりしたが、誰もついてきていなかった。気のせいだと思い、再び歩き始めると、今度は肩を叩かれ、声をかけられた。恐る恐る振り返ると、そこには一人の女が立っていた。
「やっと見つけたわ。あなたに会いたくて、ここまで来ちゃったのよ。」
女はそう言うと、俺の腕に抱きついてきた。その瞬間、俺は身の毛がよだつような感覚に襲われた。そして、恐怖のあまり、体が震え始めたのだ。
「あら?どうしたのかしら?そんなに震えて……大丈夫?」
女が心配そうに俺の顔を覗き込んだ瞬間、俺の中で何かが弾けた。気がつくと、俺は女の顔面を殴っていた。殴られた衝撃で地面に倒れた女を見下ろしながら、俺は女に罵声を浴びせた。
「お前のせいで、どれだけ怖い思いをしたと思ってるんだ!ふざけんな!」
怒りに身を任せた俺は、何度も女の顔を殴り続けた。やがて、女は動かなくなり、そのまま死んでしまった。我に返った俺は、自分がしてしまったことに罪悪感を覚えた。それと同時に、とてつもない恐怖を感じた。俺は急いでその場を離れようとしたが、その時にはもう手遅れだった。いつの間にか、周りには大勢の人が集まっていたのだ。その中には、近所に住んでいる人たちもいた。彼らは、俺のことを人殺しを見るような目で見ており、中には悲鳴を上げている者もいた。
その後、俺は警察に連行された。事情聴取を受けた際、俺は犯行動機や殺害方法などを事細かく説明した。しかし、警察は俺を犯人だと断定し、有罪判決を言い渡した。
判決の理由はこうだ。
『被害者を殺害した時の状況から、被告人には殺意があったと認められる。よって、殺人罪が成立する。』
俺は絶望した。どうして俺がこんな目に遭わなければならないのかと恨んだが、もう遅い。刑務所に入ったら、二度と外に出られないだろう。そう思っていたのだが、なぜか釈放された。どうやら、裁判の途中で検察側が控訴を断念したためらしい。
なぜそうなったのか不思議だったが、その理由はすぐに分かった。それは、裁判で証言台に立ったあの女性が、マスコミを通じて真実を話したからだ。彼女は自分の罪を自白した後、俺に謝りたいと言ってきたらしく、裁判長はそれを許可したのだ。そして、彼女が俺と面会した時のことだ。
「ごめんなさい。私のせいでこんなことになってしまって……」
彼女は申し訳なさそうに言った。だが、俺の中では複雑な思いが込み上げてきた。確かに、彼女には感謝している部分もあるが、そのせいで、俺は殺人犯として逮捕されてしまったのだ。そのことを彼女に話すと、彼女は涙を流しながら謝罪してきた。それを見た俺は、彼女を慰めようとした。その時、ふと、俺は思った。もしかしたら、この人は悪い人ではないのかもしれない。そう思った俺は、彼女にある提案をした。
「……もしよければ、僕と一緒に暮らしてくれませんか?」
俺がそう言うと、彼女は驚いた様子で俺の方を見た。すると、すぐに嬉しそうな表情に変わった。こうして、俺たちは同居することになったのである。
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