第102話 魔獣包囲網

 那覇ダンジョン5階層


 約2週間前に魔人と戦った場所。

 沈んでいった島も元通りになっており、まるで何もなかったかのように思える。


 全員で毒邪龍ヒュドラの背に乗り湖を渡る。


「お前さんも良いのを持っとるの〜。これなら儂が引退しても大丈夫そうじゃの。」


「何をおっしゃってるんですか。

 虎吉さんは俺たち探索者の憧れなんですよ。

 まだまだ現役でいて下さい。」


 戦い方を見る限りまだまだ現役だ。

 俺よりも格段に強いしパーティメンバーへの気配りも上手い。

 引退はまだまだ先の話だろう。


「そうは言われても儂も歳じゃ。

 そろそろ隠居生活を送りたいんじゃよ。

 鳳凰院の様に既に儂を超えた探索者もおる。

 後はあいつを支える仲間たちやライバルが出来れば…と思っておったがそれも大丈夫そうじゃしのう。魔人の件が終われば引退しようと考えておるよ。」


 物思いに耽るように上空を眺める虎吉。

 何を思い出しているのかはわからないが、俺にはその顔が少し寂しそうに見えた。


 島へと辿り着いた一行は順調にダンジョンを攻略して行く。

 洞窟内も特に何か起きる事もなく、ボス戦まであっという間に辿り着いた。


 5階層のボスはフレア・ベル・ドラゴンと呼ばれるサラマンドラの上位種であり、その見た目は赤い鱗を持つドラゴンだ。


 基本的には西園寺さんが前衛で斬りかかり、空へ逃げると金城さんが魔法で迎撃するという流れで一方的に戦いは進んでいく。

 俺と虎吉さんは取り巻きのサラマンドラを迎撃しながら2人のサポートに回っていた。


 絶え間のない攻撃に押され続けるドラゴン。

 鱗が剥がれ落ちていき、西園寺の刀を防ぐには心許無くなって来たが、彼女の攻撃が止むことはない。

 とうとう、彼女の刀がドラゴンの首を斬り落とした。


 思ったより呆気なかったな。


 もっと苦戦するかと思っていたが、西園寺さんと金城さんの2人で殆ど片付けてしまった。


「どうした?物足りんといった顔をしておるぞ。」


 考え事をしていると虎吉がこちらへ歩いて来た。


「いえ、物足りないというか…呆気なかったなと思いまして…」


 俺の言葉を聞いた虎吉さんは呆気に取られた様な顔をした後、いきなりガハハと大声で笑い出した。


「そりゃそうじゃ。儂らは大した戦っておらんからな。ボスを倒した実感が湧かないのも無理はない。」


「…そう…ですね。みんな元気そうですし、早く先へ進みましょう。」


 全員特に疲れている様子もない。

 下へと進もうと思ったそこ瞬間、下層へと続く道の前に誰かが立っているのが目に入った。

 地面に片手を付き、何かをしている。


 まさか、あいつは——


 いち早く危険を察知した俺は振り返り叫んだ。


「魔人だ!奴は地面を操るスキルを使う。逸れないよう注意しろ!」


 前回の様に分断されることを恐れた俺は、逸れないよう近くに居た虎吉さんの側による。

 しかし、魔人である透吾の狙いはそれではない


「何度も同じ手を使う訳がないでしょ♪

 今度は…総力戦さ。」


 ボス部屋の周りの壁が開き、そこから魔獣が多数の魔獣が入ってくる。

 変異種やボスばかり…どれも一筋縄ではいかない魔獣たちだ。


「これは…囲まれてしまったのう。」


 周囲は魔獣たちに囲まれている。

 魔人は透吾一人だけだ。


 透吾は俺たちの前に姿を現し、両手を広げ高らかに声をあげた。


「さあ、戦いの始まりだ。今度こそ逃がさないよ♪」


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