第89話 魔人戦⑥
湖に現れた大鯰が水中の奥深くへ消えて行く。
「次から次へとデカブツばっか出て来やがって…」
直後、大地が大きく揺れ始める。
「始まったみたいだね。このままだと30分もしない内にこの島は沈む。僕ら魔人はダンジョン内を自由に移動できる手段を持ってるからどうとでもなるけど、君らはどうかな?」
こいつ、島ごと俺たちを沈める気か。
「金城さんを手に入れたいんじゃなかったのか?」
「沈む直前に助ければいい。そのくらい出来るに決まっているだろう。君はダメだけどね♪」
島が沈むまで約30分。
その間にこいつを倒すしかないか。
大抵のスキルは所有者を倒せばその効果は消える。この大鯰も同じ筈だ。
「甚大、僕が榊草介を引き付けている間に茉央ちゃんを捕まえて。そのくらいなら君にも出来るだろ。」
「な…わかったよ…」
透吾の言い方に少しムッとした甚大だったが、彼のひと睨みで怯えてしまう。
「行かせると思うか?」
「僕の相手をしながら甚大に構っている余裕はないだろ。」
あいつの言う通り、2対1で勝てる相手ではないのはわかっている。だけど、今の消耗した金城さんではあの巨人には勝てない。
時間がない中で、金城さんの回復する時間を稼がなければ…
「そう言えば、お前らのその体、一体どうなってるんだ?魔人ってのは一体なんだ?」
見え透いた時間稼ぎだが、乗ってくれるか?
見たところ透吾とか呼ばれてるリーダー格の男はお喋りだ。乗ってくれる可能性はある。
「う〜ん、まあいいや。話してあげよう。」
「透吾!」
「いいんだよ。誰にも知られず存在するなんてつまらないだろう?僕らの事を話すいい機会さ。」
よし、食いついた。
「僕らはあの日、太雅を囮にする事で変異種から逃げ切った。暫くして状況を確認する為戻って来たらなんと太雅が生きてたんだ!
見た目は既に以前の太雅じゃなくて化け物と同化していた。僕たちは原因を探る為、脱獄した後、何日も何日もダンジョンに潜り続けたんだよ。
どうせ地上に戻っても捕まるだけだしね。
太雅は僕たちのことは分かるみたいで襲ったりはして来なかった。そうして彼を観察して気がついたのさ。あいつは何を食べてるんだ?ってね。僕たちが食べていた携帯食料は一切分け与えていない。何も食べずに生きれる訳がないからね。
太雅を尾行し続ける事で漸く掴んだ。魔人になるには、特別な魔獣を喰らう必要があるってね。太雅は偶然にもお前達が倒したデモンラビットの破片を飲み込んでしまったんだろう。死にかけで食うと不完全で醜い姿になる。
榊草介…ここまで聞いて僕たちの姿に見覚えはないかい?」
なるほどな…何処かで見た事があると思えばそういう事か。
歪な化け物の魔人はデモンラビット、巨大化の魔人は2回層のボスであるトロール、そしてこの男の下半身はデモンワーム。
どれも俺が倒して来た魔獣ばかりだ。
「気が付いたみたいだね。これは僕らだけの復讐じゃない。僕らと魔獣の怨念も込めた復讐劇さ!」
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