第69話 久しぶりに会うと少し気不味い
「ふぅ、やっと家に帰れた。こんな家でも久しぶりの我が家ってのは良いもんだな。」
あの後、茉央に詳しく事情を説明し、なんとか納得させた。結果的に明美は茉央の家に泊まる事になり俺はこうして我が家に帰ることが出来た。
久しぶりに一人になれたな。
この家ってこんなに狭かったんだな。まあ、家賃3万と考えれば妥当だが…
貯金も貯まったし引越してもいいけど、どうしたもんか。そんなに家に居るわけでもないし、それに6年も住んでれば愛着も湧く。
別に困ってる訳じゃない。今すぐ引っ越す必要もないか。
家に入りテレビでも見て寛ごうとしていると、妙に部屋が小綺麗な事に気がつく。
半年も開けてた割に埃一つない。
出発の時はドタバタしてたから、最低限の掃除しかしてなかったのに…
荒らされてる様子もないし、強盗って事もないだろうが…じゃあ、誰かが掃除してくれてたって事か?一体誰が?
草介は誰にもこの部屋の鍵を渡していない。それなのに家の中に入れる人物がいる訳がないのだ。
俺の家を知っているのは隆二だけ。だが、あいつがそんなに気が効くとは思えない。一体誰が…
知らない人が家に入って来ていたとなれば気になって夜も眠れない。
考えてもわからないものはわからない。隆二に聞くのが手っ取り早いか。
「なんだ?さっき会ったばっかだろう。」
「聞きたい事がある。俺の家に誰かが掃除しに来た形跡があるんだが、心当たりはあるか?」
「ああ、それな。あの子だよ、榎本美月ちゃん。お前が行った後まだ家がこっちにあるって知って毎日掃除しに来てたんだ。仕事が落ち着いてから行ってるみたいだから…今日もそろそろ来るんじゃないか?」
隆二の野郎…勝手に鍵を貸しやがったな。
それにしても美月ちゃんか…毎日来てくれてたなんて本当にいい子だな。でも、今会うのはちょっと気不味い。何故なら俺は彼女にキスされた後、一度も会っていない。
なんとなく彼女の事を避けてしまっていたのだ。
自宅のインターホンが鳴る。
「悪い、切るぞ。」
「ちょっ——」
無理矢理電話を切り、玄関口まで行く。
ドアの前にいるのは恐らく美月ちゃんだ。どうする…まあ、出るしかないのだが…心構えが必要だ。
深呼吸をし、息を整える。
……よし、落ち着きて来た。大丈夫だ。
俺はゆっくり扉を開ける。
扉の前にいたのは案の定、榎本美月だった。
「お久しぶりです。草介さん。」
「久しぶり、美月ちゃん。」
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