第67話 睡眠はしっかり取ろう

 長かった…探索者なのにダンジョンを探索することもなく、ただただ魔獣と戦い続けて半年。得られたモノは大きく、多大なる戦闘経験とトップランカー達との交流、スタンピードの報奨金を集める事ができた。


 いい経験だったな。金も結構貯まったし、貧困生活とはおさらばだ。レベルも相当上がり、トップランカーに並んでも遜色ないレベルまで到達している。


「さてと、久しぶりに休むか。」


 スタンピードの救援に行っている間はギルドに泊まるか野営だったのでまともな睡眠を取れていない。草介は布団でゆっくり眠りたい気分だったのだが……


「……なんでお前がいるんだ?」


「……緊急時に一人は危険だから二手に分かれると氷華先輩の指示です。じゃなきゃ私が来ませんよ。」


 空港に着いた途端、見知った顔に出会った。

 ここ半年、毎日顔を見合わせては睨まれ続けた。草介の二人っきりで会いたくない人間ランキングNo.1に位置するこの女、岩垣明美。


「お前じゃなくても良かっただろうに。」


 出来れば伸晃が良かった。


「相性ですよ。貴方と伸晃はスピード型で魔力が限りなく低い。魔法を使えず戦闘スタイルも似てる二人を揃える必要はないでしょう。」


 恐らくだが、氷華に騙されてるな。強いていうなら俺と伸晃、氷華と明美の戦闘スタイルが似ていると言えなくもないが、厳密にいえば全員役割は違う。


 氷華は万能型の魔法剣士。中・近距離戦を得意とし、攻防兼ね備えたスキルを使う。

 明美は守護を得意とした支援型魔法使い。大地を操るスキルを使用し味方を護る。近距離に持ち込まれてもメイスで対応出来る。

 伸晃は遠距離補助型の弓使い。スキルと敏捷力を駆使し、身を隠し遠距離からの射撃で味方を援護する。

 そして俺は毒などの状態異常スキルを得意とする剣士だ。多対一の局面を得意とし、一番高い敏捷力で戦場を駆け回り毒をばら撒く。耐久力は低いが耐性のお陰でそれなりに硬い。


 氷華の考えなんて手に取るようにわかる。仲の悪い俺たちを少しでも仲良くしようと思いこの様な手段に出たに違いない。長く一緒に出れば打ち解けられるとでも思ったのだろうか。浅はかすぎる。半年も一緒に居て関係は良くならないのだ。今更無駄だ。


「了解。まあ、お前も旅行だと思って羽を伸ばせ。なんかわかんない事あったら電話しろよ。教えてやるから。」


「ちょっと待って下さい。何処に行くんですか。」


 これ以上一緒にいる必要もないので自宅に帰ろうとすると、袖を引っ張り引き止められる。


「何処って…家だけど…」


「私も連れて行って下さい。一緒に住むよう言われてるんです。」


 は?氷華のやつ何考えてるんだ?


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