第26話 色んな事情を抱えてる

「あら?仲直り出来た見たいね。」


 店内へ戻って来た俺を茜さんと金城さんが出迎える。


「おかげさまで…なんとか機嫌治ったみたいです。」


「それならいいわよ。それにしても、こんな小さな子まで探索者になるなんてねぇ。うちの美月と同じくらいじゃないの?女の子なのに大変ねぇ。」


 言われてみれば、確かに金城さんと美月ちゃんは二人とも18歳で今年高校を卒業したばかりだ。

 探索者というのは危険な仕事で男女比も圧倒的に男の方が多い。別に男が強いという話ではなく、単純にそんな仕事に就こうとするのを許す親が少ないからだ。探索者になる者は両親がいなかったり、膨大な借金があったり、実家との縁を切っていたりと複雑な事情を持った人間が多い。


 金城さんの事情は本人から聞いている。確か、母親の治療費を稼ぐ為に探索者になったと言っていた。探索者に成らざるを得ない程、追い込まれているという事は母親の病気もそれなりに重いものだと予測される。


 もうこんな時間だし、早く家に帰した方がいいよな。


 時刻は21時を回っている。病弱の母親がいるのであれば一刻も早く自宅に帰りたいだろう。


「それじゃあ、今日はこの辺で。また来ますね。」


「待ってるわ。気をつけて帰るのよ。…ああ!草介くん、探索者とはいえ女の子なんだから送ってあげなきゃ駄目よ。それじゃあね。」


「わかってますよ。ご馳走様でした。」


 俺は金城さんの手を取り店を出た。


「さてと…金城さんはどこ辺に住んでるの?途中まで送ろうか?」


 家までついて行く気はない。送るとしても途中までで十分だろう。彼女が断るならそれはそれで構わない。茜さんはああ言ってたが探索者には【ステータス】という特殊な力がある。その辺の一般人に負けるわけなどないのだから。



「その…家は結構遠くて…いつもはバスで来てたんですけど、もう終電終わっちゃてて…」


 しまった…田舎の方ならバスの時間が終わってる時間だ。送り届けてやりたいが、あいにく俺は酒を飲んでしまった。これはタクシーを使うしかないのか?だが、タクシーは高過ぎる。クソ…背に腹は変えられない…か。


 財布を見るとボス戦前に受けた依頼報酬の5万円が入っている。これだけあれば彼女は帰れるはず。


 財布からタクシー代を出そうとすると彼女の口から出た言葉は俺の想像を遥かに超えた内容だった。


「あの…私を泊めてくれませんか!!」



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