Vol.27

何処 環

第1話 半生

幼いころから泣き虫だった。

別に悪いことをしたわけではないのに、人に何か言われただけですぐに涙が出てくる。

ひどく落ち込み、そしてひどく明るくなる性格で、周りからは変人と思われていただろうか。

幼いながらもそんな自分が嫌いだった。


いつも人と会話をしていると、相手を怒らせてしまう。

会話の途中で変なことを言う癖があるみたいで、その都度、相手が変な顔をする。

その顔が嫌いだった。


小学生の頃は、よくいじめられていた。

変わり者の行動や仕草が鼻についたのだろう。

当時は、なぜいじめられているのか分からなかった。


中学生の頃は、最も変人だった時期だと思う。

授業中に大声で自慢話をするような変人具合をかましていた。

浮いている人間であるにもかかわらず、委員などを率先して行ってみんなを引っ張ろうとした。

その結果、みんな離れていった。

遊びに誘われることも少なく、自分から誘えば変な顔をされる始末だ。

SNSではクラスメイトが仲良く遊んでいる写真が投稿されていた。

当時は、なぜみんなに認めてもらえないのか分からなかった。


最後のトリは、中学の部活動である。

最初は卓球部に入りたかったのだが、母親から野球部に入れとせがまれた。

毎日毎日、野球部という言葉が僕の頭の中を洗脳してくる。

そして野球部に入ることに決めた。

親に変な顔ではなく、笑顔になってほしかった。

しかし周りは全員経験者で、監督はスパルタである。

試合には出れず、毎日怒られ、手にはマメができた。

皮肉を言われ、嫌味を言われ、からかわれた。


そんな中学三年間を過ごした。


僕は鬱になった。


生きる意味を考えるようになった。


人が苦手だったが、孤独も嫌いになった。


生きるだけで辛かった。



そんな僕の、27年間のお話。

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