第78話 新たなる出立
「よぉ、ちよ!」
「……千縁、遅い」
「よお! いや、まだ時間5分前だからな!?」
翌日。
俺と鬼塚、神崎の三人は
「流石に今日は逃さねぇぞ〜?」
「……早く行こう」
「うぇ、ちょっ、待てよ! てか、今日はどうすんだ?」
俺の言葉に、二人は顔を見合わせる。
二人とも考えなしかよ……
「てか、ちよの目的はなんなんだ? なんか東城莉緒? ってやつのために学園対抗祭で優勝したってのは記事で読んだんだが……色男さんよお?」
「え、それ記事とかになってんの!?」
「うん」
恥ずかしい……ま、まあでも! そこまで広まってるなら会えないなんてことはないだろう。
(てか……確かに、目標か……)
有名になって、莉緒に俺が約束を果たしたことは伝えられた。
俺の最大の“目的”は、もう叶ったわけだ。
「俺は……」
俺は、あの日見た夢を思い出す。
『──は──だ』
「「!!」」
千縁の瞳が、一瞬、黄金に輝いた。
「俺は……王になる」
「……何?」
思わず鬼塚は聞き返す。
そこで、俺はハッとした。
(なんだ……今俺、【憑依】使ってないよな……?)
一瞬だけ、意識が【憑依】使用中のようにフワッとしたのだ。
まるで自分の人格が、裏に回ったような、あの感覚。
二人の前でボロを出さないためにも、“相棒”を【憑依】させておくことは多々あったが、今は使ってないはず……
(まあいいや。昨日の連続発動で疲れただけか)
俺は誤魔化すように、見つけた次の目標を告ぐ。
「そうだ。俺は……“王級探索者”になる」
「!!!!」「王級……」
二人は俺の言葉に、目を見開いた。
王級探索者……世界に五人の、“超越者”達だ。
彼らは全員、桁が外れた力を持っており、それぞれが個人で国を為すことを認められている。
……というより、誰も彼らに反対などできないのだ。
現在、彼らは全員、各々が探索者のための国を持っている。
「ちよは……王様になりたいのか?」
蓮が、戸惑いつつ聞いてきた。
「いや……そういうわけじゃないけど」
「じゃあ……なんで?」
ジッ、と美穂が見つめてくる……
少したじろぎながらも、俺は正直に答えた。
「だって……力がなければ、誰も意見なんて聞かないんだ」
「「……っ!」」
「……それより! お前ら毎日呼んでくるけど、用事とかないのかよ!?」
「ねぇよ! ってか、今うちはそれどころじゃねぇし……」
「……ない。取材なんかよりこっちのが大事」
おい!
予定断って来てんじゃねぇかよ!!
「って、え? それどころじゃないって……」
「ああ、それはな……」
蓮が、少し気まずそうに唸る。
「今、
「「え?」」
“悪童”鬼塚蓮が、ため息をつきながらそう言ったのだった。
〜〜〜〜〜
「やっ!!」
「ラア!!」
「……」
とりあえずのメギドだったが、俺たちは物足りなさを感じていた。
今戦ってる美穂と蓮は、それぞれ最大攻略層が36と34だった。
当然それ以上下に行くとソロで戦うのは不可能ということだ。
パーティだからといって、まだまだ互いに連携は取れてない。そのため今はあまり深くに行かないようにしよう、と34階層に潜っている。
「【貫通】!!」
「【地獄鎖】!!」
黄金の人狼と化した美穂と、鬼童丸を憑依させた蓮が同時に攻撃を繰り出し、全身に高熱を帯びたゴーレム……ヘルゴーレムは砕け散った。
「……ぁっちぃ!」
「……」
34階層レベルだと、二人も流石にスキルを解放するらしいな。
……いや、蓮は別に隠してなかったわけだけど。
「ふう……てか、ちよも戦えよ!」
「王級、なるんじゃないの? 魔力値」
「ああ〜まあ、そうなんだけど……」
正直、王級のなり方がわからない。
極級と王級には明確な区分がなく、テストでどうこうというものではないからだ。
(確か日本唯一の極級探索者、天星祐也は政府から直接指名されたんだったよな……)
王級になるために必要なものか……わからんな。
「……ちょっと、別のダンジョンにも行ってみるしかないか」
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因みになんですけど、深度Ⅰの【憑依】の際には千縁が【憑依】を言いません。
【憑依】─〇〇!で深度Ⅱの発動合図です。
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