金平糖彗星
潮
一日目・昼
ミーンミーンミン…ガタンゴトンガタンゴトン
「ん、、、うるさいな」
命を燃やす蝉の叫びで、普通列車の酷く空いた車両の中目を覚ます。腕時計に目を向けると、短針は四時を示していた。
目覚めのぼやけた視界に外の景色を入れる。徐々にピントが合って行く世界には、普段生活している都会とは違い、一面の田んぼが広がっていた。
「おお、なかなか近づいてきたっていう感じがするなあ」
見渡す限りは山と田んぼ、田んぼの近くの小さな家。全然まだここは古郷でも何でもないのだが、それでも少し郷愁に駆られる。
「え~っと、スマホスマホ…あれ、通知来てる」
”母:何かスーパーでアイス買ってきて、お金は返す。待ってるよ”
「母さん、人使い荒いのか優しいのか…」
今は、そんなお使いも少しわくわくする。今日から1週間、社会人一年目の夏休みを使って海の近くにある実家に里帰りをするのだ。大学進学を機に一度も家には帰っていなかったから、かれこれ四年ぶりになる。
”私:OK,適当に大きな箱のアイス買って行きます”
何の他愛もない返信を送り、折角起きてしまったし、と車窓の手前に頬杖をつき外を眺める。聞こえる蝉の声、揺れる車体、照り付ける太陽、遠くで太陽の光を反射する海。あの海の近くに私の家がある。たった四年、されど四年。一体どれだけ変わってしまったのだろう、そんなことを思いながら、見てもいないのに追懐して、ただ電車の到着を待った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます