終わりの時間と空想デート

雪異

第1話 ゴミのある暮らし

 サイクルというのは見てて疲れる。食べて出したり、飲んで出したり。開いては閉じて、切ってはくっ付けて、壊しては直して、燃えて冷えて混ざって溶けて。忙しいなあ。一度止まってみてはどうか?止まって動いて。これもサイクルの一部か。


「何うだうだ言ってんですか!ゴミまみれの不衛生野郎!」


 辛辣な言葉を投げかけ、ストレスと解放のサイクルを担う。これも必要な役割という事なのだろう。


「勝手に納得いってんじゃないですよ!てめーのゴミまみれの部屋をどーすんだって言ってんでしょーが!」


 そういう事だそうだ。


 ここでサイクルの話に戻るのだが、片付けのサイクルというのは、物を使用し、元の場所へ戻すことにより時間、空間の効率化を図ることが主な目的である。物の位置が決まっていれば探す時間は省け、あらかじめ場所が決まっていれば、空間も効率よく使うことが出来る。次も使うならば片付け、使わないならゴミ捨てという訳だ。納得は出来る。


「分かってんならさっさと取りかかってくださいよ!一々もったいぶるな!」


 待って欲しい。あくまでそれは、片付けのサイクルを受け入れたら、の話だ。


「はあ?」


 人間は古来より不老不死を求めてきた。しかし、数々の試みは失敗に終わってしまった事は周知の事実だ。


「だったらどうしたって言うんですか」


 つまり人間はサイクルとしては最もポピュラーな、生と死に抗おうとしたという事だ。誰もが知っている決まりきったサイクル。この絶望的なサイクルに抗うことを、彼らは今も尚諦めていない。


 そして、失敗に終わったからと言って何もかもが無駄になった訳じゃない。いくつかの試みは科学を発展させ、医療を進歩させた。


 なんと素晴らしいことだろう!


 無意味だと分かっていても、サイクルに抗うことで意味を生み出せるのが我々、人間なのである。では私の場合はどうだろう?ゴミが発生したら分別して、決まった日に捨てる。このサイクルに抗うことが無意味かどうかは、いつか、誰かが決めるのではないだろうか?


 その日のことを考えると、私を取り囲むプラスチックや紙容器たちが煌めいて見えて仕方がない。


「……」


 しかし、このままでは今後口をきいてくれなくなりそうだったので、仕方なく片付けを始めることにしたのだった。




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