第27話 アブラハムの競売

 スワルガの船内は全てが、街として機能している訳ではない。


 機関室。艦載機発着場。資材の格納庫。そんな巨大な空間が中心になっていた。それらを中心街として、蜘蛛の巣のように広がる通路沿いに、いかがわしい店とバラックが詰め込まれている。


 また制御室等、重要設備がある場所は、各勢力の拠点となっていた。


 逆に言うと中心から遠い場所ほど寂れてくる。船内奥深くとなると、船外バラック街よりも、中心まで行くのにかかる時間は逆に長くなる。


 アブラハムが指定した時刻はその日の夕方。指定した場所はそんな僻地の一つ、船体上部の砲塔跡だった。


 場所を聞いて僕は頷く。攻めるに難く守るに易し。僻地であるが、同じく僻地を勢力圏とするアブラハムには、己の庭にも近く、他の派閥の干渉を防ぐには悪くない選択だ。


 だがこの宿は黄衣派の勢力圏にあるため、砲塔跡まで、徒歩で一時間はかかる。僕たちは早めに出発する必要がある。準備することなど大してない。僕とフレアは宿を出ると奥地へ向かった。


 直線距離がどうあれ、荒れた道を通るのは時間がかかる。瓦礫にふさがれた通路、崩落した階段。それらを迂回してたどり着いた頃には、もう指定時刻に近くなっていた。




 ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇




 階段を上がりきると扉がある。アブラハムの私兵と思しき三人が警備中だ。


 アブラハムと呼ばれる集団は、古くからこのスワルガに居住していた、ある種の宗教的集団である。


 神の定めた戒律を守ることへの執念のため、他の都市から追い出された一族が、ここに移り住んだのが始まりだという。


 この街はそのような周囲に馴染めない者にも、住処を与える。無論、力があればの話だ。


 彼らも己の領域を守るために武力を溜め込み、気付けばマフィアと化していた口だった。だが最近までのアブラハムは、奥地に隠遁する危険物というだけであった。


 こうして表に出てくるようになり、武闘派として名を馳せるようになったのは、当代の指導者になってからである。


「アルテミシア商会の者だ。アポはとっているはずだ」


 話しかける僕に警備の男たちは言った。


「武器を預けてください」


「君たちは僕に交渉は決裂だ、と言っているのか」


 僕は拒否する。当然の話だ。武器なしで話し合いなどできるはずもない。丸腰なら脅迫すればいいだけだからだ。


「中にいる君たちの仲間が、武器を全て放棄するのなら、考慮の余地はあるが、そうじゃないんだろう。これは誰の命令だ? 好意からの助言と考えてほしいが、一度戻って命令内容を確かめて来るといい」


 警備は目を合わせ、それから一人が奥に去っていった。しばらくして帰ってきたのは別の男だった。


「どうぞ、そのままで構いません」


「だろうな」


 厄介なことになりそうだ。下位の構成員まで、意思が行き届いていない。組織がうまく動いていない証だ。それは上位者の統制に、何らかの問題があることを意味する。もしくは単純に、アルテミシアという貴族を軽視しているのか。少々の能力不足を咎めるつもりはない。無能なら手玉にとればいい。だが貴族を恐れない者には、それなりの対応が必要にになるだろう。


 集合場所に着く。


 砲塔は何かが内部で爆発したように、装甲が外に向けて開いていた。その形は花のようでもある。開口部からはまだスターライトが降り注ぎ、集合場所に立つ男たちを照らし出していた。


 僕らの他に顔を見せている勢力は三つだ。


 一つはアブラハムの集団。顔を見せているのは当代の指導者だ。恰幅のいいひげ面の男だが、狐のような目つきは抜け目のなさを感じさせた。その周りには十七名の護衛がひしめいている。本人が直接顔を見せるとは思わなかった。アブラハムは予想以上に、この取引に力を入れているようだ。


 もう一つは二人組。細身の酷薄そうな男と長身の護衛一人だ。護衛はフードのある外套で、顔を含め全身を覆い隠しているが、少しだけ出ている腕には鱗がついている。――変異持ちだ。よく見れば外套の下の身体の骨格にも、人と異なる形状になっている部分があった。変異持ちを受け入れており、重要な場にも活用する組織は限られている。おそらく独立派の一派、だろう。彼らもスワルガに大きな支部を持っている。


 最後の一つの三人組はよく分からない。どの男も金のかかった装束を身につけている。かなり有力な組織と考えられるが、特定できるような特徴がなかった。


 僕とフレアが到着したところで、アブラハムの指導者が声を上げた。低いがよく通る声だ。


「私はシモン・アブラハム。律法の守護者の長である。お集まりの三方には、急な招待に応じていただき、感謝に堪えない思いである」


 そこまで言い、そしてにやりと笑った。


「挨拶はここまでで、後は商売の話だ。どうせ全員、欲しいものは一つだ。ざっくばらんに行こうじゃねえか」


 ひげ面の男は手を挙げる。すると、物陰から商品が運ばれてくる。手持ち可能なケースである。三者の中心まで運ばれると、用意されたテーブルの上でケースが開かれる。中にあったのは、直径十センチ、長さ二十センチ程度の円筒だ。横には操作レバーがついていた。その周囲は金属製の網で保護されていた。


「もう噂は聞いていると思うが、こいつは周囲の重力を、好きにいじることができる、画期的な発掘品だ! おい、実演して見せてやれ!」


 その号令と共に、まず一抱えもある金属塊が準備された。重量は百キロ近いだろう。台の上に置かれたそれに向けて、円筒が向けられ、操作レバーが引かれる。


 その瞬間、金属の塊は、地面へ落ちていくときのように、円筒から離れる方向に飛び出し、水平に二十メートルほど飛ぶと、そこで思い出したように軌道を下げ、地面に落ちる。だが勢いは止まらず、そのまま壁に激突して轟音を立てた。集まった各勢力の代表は息を呑む。


「ご覧の通りだ! 納得できねえなら、何度でも見せてやってもいいぜ。ただしお触りは勘弁してくれ。そいつは買い取ってからのお楽しみだ」


 それから数度実験が行われるのを横目に、僕は確認する。


(どうだ? 真偽は確かめられそうか?)


(これは本物です)


 フレアは答えた。


(重力場への干渉が起きていますし、それをトールハンマーに要請しているのは、あの機械であることは確かです。内部も走査してみましたが、込み入って無駄の多い構造から推察すると、何かの実験用に作ったものが、そのまま捨て置かれた。それが発見されたというところでしょうか。直接触れることができれば、もっと詳しく調べられると思いますが、今はこれが限界ですね)


(これは他の動力機にも応用できる類のものか)


(不可能でしょう。このシステムは設計段階からして、動力機とは完全に別物です。そして、その違いを理解するには、ナノマシンレベルの解析能力が必要でしょう)


 それを聞いて僕は考える。


(それは安心だ。すると後はこの一品物の処理か)


「さあ、よくよく確かめてもらったこいつだが」


 数度の実験の後、ひげ面の男は言った。


「最高額をつけた奴にくれてやる。出せそうな奴らだけを集めたんだ。お前らにも面子ってもんがあるだろ。あんまり低い額にするんじゃねえぞ。それと事前に伝えたように取引は、全部ここで行う。後払い、分割払いは通用しねえ! 一括払いだけだ! ここで全額が払えなければどうなるか、分かっているな。それじゃ早い者勝ちだ!」


 そしてオークションは始まる。金額はまだ出ない。三者は見合う。




 ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇




 オークションで、まず考えなければいけないことは何か。僕は頭の中で確認する。


 絶対に必要なことは、妥当な価値を見積もることだ。


 ものの価格は需要と供給、必要とされている量と、用意されている量の差で決まる。単純に言うと必要とされている量が多いほど価値が上がる。用意されている量が少ないほど価値が上がる。


 たとえば、水。水は必要不可欠で必要量も多いが、供給される量も多いので、価格はそれほど高くはない。


 たとえば、高品質の半導体。必要とされている量は多いが、今の技術では製造不能のため、発掘してくるしかない。発掘品の量などたかが知れている以上、その価格は高止まりしている。


 無論、誰かが大量に発掘すれば、一時的に安値がつくこともある。世の価格はそういう風につけられている。


 だがこれは金をかければ幾らでも手に入る程度の、ありふれたものにのみ通用する話だ。今回のような一点物は話が全く違う。では、何が違うのか。


 問題は一つ、相場がない、そのことに尽きる。何かを参考に値をつける、ということができないのだ。


 だがどこかで決めなければならない。適当にではない。はっきりとした根拠を持って、決めなければならない。それができない者は食われるだけだ。


 では何を根拠とするのか。僕はこう考えている。利用価値―― それを手に入れ、利用することで、最終的にどの程度の利益が上げられるか。それこそが価格となる。


 非常に希少な性能があっても、利用できる条件が厳しければ、有用とはいえない。それだけでは、コレクションとしての価値しかない。手に入れた者に、解析し複製する技術があってやっと、それは有用となる。


 逆に機能はありふれていても、多様な用途に使えるものならば、それは十分に有用だ。


 資金というものは有限だ。アルテミシア商会でも、あらゆる仕事は全て、人に払う金、ものに費やす金、場所に費やす金、情報に費やす金、金を消費して動いている。この一品を買うということに費やす金を、他のことに費やすことで得られるものがある。故に限りなく希少であるからと言って、どのような品でも幾らでも資金をかけていい、などということはない。


 占有し、隠匿し、それから得られる利益を独占できたとしても、回収できる額には限界がある。それさえ含んだ先にある価格。それ以上になれば損が出る、それ以下となれば利益が出る、そんな価格が確かにあるのだ。


 それ以上の価格で、それを買ったとしても損になる。


 ほしい、それは確かだ。だが損はできない。


 相手はどれだけの価値を見積もっているのか。己の見積もった価値はいくらか。相手の方が低ければ、金を積んで解決だ。注意するのは熱くならないようにクールに。ただ、相手に冷静に諦めさせればいい。逆なら相手に損をさせてしまえばいい。


 さて、だが、ものごとは損得だけは決まらない。競られる品に少なくとも価値があり、明らかに有用なものである時、複数の者がそれを認め、競り合う時、相場は吊り上がっていく。ここからが心理の世界だ。


 せっかくならば勝ちたい。


 そして勝利とは、幾ら払ってでも物品を得ることだ。愚かなことに、そう認識してしまう者がいる。いや誰もがそうなのだ。その品を獲得するために、わざわざこんな僻地まで来たのだ。少々己の予測した価値を超えたからと言って、そこで諦めては、今までの手間が無駄になる。そう考えてしまう。


 そして引き時を誤るのだ。


 また愚か者はこうも考える。競争相手がここまで粘るということは、自分には分からなくても、それだけの価値があるということではないか。ならばやはり押してみよう。そうして粘り続けてしまうこともある。そして泥仕合になる。


 こうなれば得をするのは、出品した胴元だけである。さて、こういう場合、どうするのか。


 答えは簡単だ。オークションにしなければいいのだ。交渉する相手を間違えなければいい。交渉するべき相手は、この品の所有者であるアブラハムではない。本当の相手は、同じ品を欲する、二つの勢力の代表者なのだから。だからこそ僕は彼らをよく観察していた。そして付け入る隙は、既にそこにあった。


 ばかげた話だ。僕は笑う。こんなことをしなければ、まともな交渉ができただろうに。僕はこの場にいる一人の男と目を合わせる。さて彼とは敵同士だが―― どうなるかな。そして僕らは金額を吊り上げ始めた。




 ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇




 吊り上っていく金額に、ひげ面の男の顔がにやけてくる。変異持ちの用心棒を連れた男は冷静に価格についていく。その表情には焦りも困惑もない。淡々と吊り上げる、それだけだ。僕もそれに従う。三人組の代表は少し焦ってきているようだ。僅かに表情に、手足の動きに、呼吸に、不安の気配が漏れ出ている。だが、それでもついてくる。ついてくる限り僕らは吊り上げ続ける。


 そして、彼らが撤退の決断しようとしたその時、僕たちは即座に動きを止めた。


 残ったのは三人組だけだ。その表情には驚愕が浮かんでいた。アブラハムの指導者が笑いながら言う。


「おいおい、こんなところでギブアップか! まだまだいけるだろ! こんなところで諦めるのかよ?」


 だが、僕らは反応しない。そして残った一人を見る。そいつは莫大な金額を払うことが確定している。沈黙が続く。


「おいおい、本当に後悔しねえんだな?」


 ひげ面の男の声は強気だが、どこかに焦りがあった。僕は言った。


「ああ、もういい」


「いやはや勝てないねえ」


 酷薄そうな男も言う。やはり分かっている。


「プライズはあなたのものだ。さて、ただしあなたに払えるのであればね。払えないのであればどうなるか」


 そして阿修羅の凶相で笑った。


「分かっているな」




 ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇




 しらけた風が流れる。凶相の男は言う。


「さ、払いたまえ。どうしたんだい?」


 最高額をつけてしまった男は、既に隠しようもないほどに震えている。


「そうか、持ち合わせがないのか。それは困ったなあ。困ったね、困ったよ」


 分かりやすい話だった。この男にそんな持ち合わせはないのだ。では、なぜここにいるのか。簡単なことだ。オークションを泥仕合にし、大量の金をせしめるために、誰かが送り込んだのだ。誰が? 考えるまでもない。その下手人、アブラハムの指導者を僕と彼は睨む。


「ねえ、そこの偉い人、主としては責任をとらなくちゃねえ?」


 ひげ面の男は黙り込んだ後、言った。


「やれ」


 十数発の銃声が重なって響く。護衛たちの銃の引き金が全て引かれたのだ。その迅速な判断は評価したい。


 三人組はあえなく散る。彼らに身を守る術はなかった。


 だが僕には一発もあたらなかった。フレアが守ってくれたのだ。彼女は素早い動きで銃弾を払っている。変異生物としての限界は越えていない。こちらに来た弾数は多くはなかった。だからできたことだ。三分の二以上はもう一人の男に向けられていた。だが彼も無事だった。護衛である変異持ちが全てを受け止めたからだ。鎧を着込んでいるようだが、それで全て防げる訳ではない。身体の強度そのものが桁違いなのだ。男は、絶体絶命の状況で笑う。


「これは困ったねえ。せっかくこちらはあなたたちを尊重して、適正な売買をしようと、わざわざ二時間をかけて来てやったのに、こんな腐った茶番で迎えてくれるとはねえ」


 男は護衛に目を向ける。


「やれ」


 その瞬間、まるで雷光のように護衛は奔っていた。外套はその場に残し、彼は一歩で距離を詰めている。その姿はまるで二本足で立つ竜だ。


 ひげ面の首が飛んだ。右腕の爪が横に一閃されたのだ。


 そのまま勢いに乗って竜は踊る。銃を持つ護衛たちの間に、旋風のように飛び込み、嵐のように蹂躙した。一瞬で十七人は死んだ。肉片は血の海に沈んでいた。


「ははは、馬鹿め。私を嵌めるには百年早いぞ」


 酷薄そうな男は満足げに頷き、そして僕を見た。


 殺してしまったか。仕方のないことだが、僕は嘆息する。この町の支配層の一つが空白となったのだ。以後の混乱が想像できる。だが、彼がやらなければ、僕がやっていた。だから大筋で問題はない。今はこの危険な男への対応が最優先だった。さあ、最後の交渉を始めようか。


「アルテミシアの青年、死ぬか、戦うか、好きな方を選んでいいぞ」


 男は言った。その瞳は興奮に濡れ、話が通じる様子ではない。無論、話し合いなど不要である。この場にあった問いは最初からただ一つだ。


 どちらが手に入れるのか。


 それだけだったのだ。だがこのままでは勝ち目は薄い。だから僕は言う。


「持ち主は死んだ。今や、この品に所有権はない。だから拾った者が新たな所有者となる。そういう考えでいくのか?」


 男は目を細めた。そして僕とフレアを見る。こちらの戦力を値踏みしているのだ。笑みが漏れる。勝てると踏んだのだ。


「だが」


 と僕は言う。


「血みどろの殺し合いは優雅ではない。そうは思わないか」


「では、どうする? チェスで決めるかね」


 男は勝者として振舞う。僕は敗者としては振舞わない。


「それじゃそちらも納得できないだろう。どうにもあなたは、その護衛の戦力に随分と自信があるようだ。彼に僕と彼女をまとめて始末させれば、それで万事うまくいく、と。そう考えているのが見えている」


「ほう」


 男は僅かに表情を改める。


「確かに認めよう。この用心棒は強い。あなたたちをまとめて始末できる、そう思っているよ」


 男の答えに僕は返した。


「だが、考えてみてほしい。僕らが二人がかりで、自分の身も省みず、あなただけを殺しに行った場合、あなたが死ぬ可能性はどの程度あるかな。あなたが死んだ後で、護衛が僕ら二人を殺したとして、あなたに利益はあるかな?」


 僕は男の目を見た。男は僕を睨み返す。視線だけで人を殺せそうな凶相である。だが僕はひるまない。


「……何を考えている」


 先に折れたのは男だった。僕は笑った。


「こんな趣向はいかがかな。護衛同士で戦い、勝った方が拾う。どうだい? これで少なくとも僕たちは傷つかずに済む。護衛の方も、自分の力に自信があれば、どうということはないだろうね。勝てばいいだけなのだから。勝敗も自動的に決する。護衛を失った方に勝ち目などない。無事に逃げられたら、ましな方だ」


 僕の言葉に、


「は、は」


 男は笑った。


「勝てると思っているのか。彼が誰だか分かって言っているのか。竜人ドラゴンレイスの名を知らないのかい!」


「知らないね。それに彼が何であろうと、僕の答えは変わらない。僕は最も大きな利益の残りそうな選択を、しているだけだからだ」


 その答えに男は感に堪えぬと、大笑いした。


「ははは! いいねえ! 乗ってやろうじゃないか!」


 僕はゆっくりと後ろに下がりながら言う。


「見学者が巻き込まれた場合は、自己責任としよう。否やはないだろうな」


「くく、面白い男だねえ」


 男も素直に下がる。僕は待機しているフレアに目を向ける。


(フレア、いけるな。力を常人並みに制限する必要はない。変異持ちとして力を使っていい。それで勝てないようなら、全力を出しても構わない。ただしその場合は、もう一人も始末する必要があるから、先に言ってくれ)


 フレアは力強く前に出る。


(あなたは本当にろくでもない人間ですね)


 彼女はそう漏らして、いつもの訓練の構えを取った。そして僕は静観している男から目を離さず、いつでも銃を抜ける体勢をとった。


 男も銃を所持している。動きに注意しておく必要があった。だが僕の様子に男は両手を広げる。


「はは、抜かないよ! こんな楽しい見世物はなかなかないからねえ!」


 その酷薄な瞳は流れる血を期待しているように、濡れそぼっていた。

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