婚約者は転生王子?政略結婚で嫁いで来たけど反対されているようなので王子と一緒に駆け落ちします

猫月九日

第0話 王子の秘密

「今まで隠してきて申し訳なかった。僕はずっと昔からローズの事を知っていたんだ」


 ドルン様が私に謝ってきた。


「昔から……ですか?」


 私がドルン様と初めて出会ったのは、かれこれ2ヶ月くらい前のことになる。

 思えば遠くにきたものだけど、そのドルン様が私の事をずっと前から知っていた?


「それも、ただ知っていたのとは違う。キミの境遇、どんな人なのか。それを初めて会う前から知っていたんだよ」


「……私、王族同士のパーティとかに参加した記憶がありません。人違いとかではないのですか?」


 もともと、国では腫れ物扱いされていた私だ。当然、王族同士の交流になど出たことがない。

 だから、ドルン様の勘違いだと思ったんだけど、ドルン様は首を振る。


「いや、間違いなくキミのことだよ」


 そして、ドルン様は私に優しく問いかけた。


「ローズ。キミは前世の存在を信じるかい?」


「前世ですか?」


 もちろん言葉としてはわかる。けど、それを信じているかと言われれば信じていない。


「僕は信じている」


 ドルン様は確信するように言う。


「なぜならば、僕には、前世の記憶があるのだから」


「えっ?」



「前世の僕はどこにでもいる普通の男だった」


 ドルン様は懐かしむように目をつぶった。


「当時の僕は、何をするにもうまくいかなくてね。物語の世界に逃げ込んでいたんだよ」


「そんな……ドルン様が……?」


 いつも私を引っ張ってくれた。いつも助けてくれた。今のドルン様からは全然信じられない。


「その中でも僕が好きだったお話があった。その名前は、『呪われ姫と茨の魔法』だ」


「呪われ……姫?」


 呪われ姫は私がいつも言われてきた言葉だ。


「そう、僕はキミを知っていた。ずっと前から知っていた。だって前世で大好きだった物語の登場人物だったんだから」


 私が本の登場人物?嘘のような話だった。。

 しかし、どこか納得がいった。これまでのドルン様を振り返ると、それくらいでもおかしくない。


 私は思い返す。

 私がドルン様に初めて出会った、私の運命を変えた、あの夜のことを。


---

お読みいただきありがとうございます。

プロローグになります。

1話は今日の17時頃投稿になっていますのでちょっとでも、続きが気になった方はフォローと☆さんをよろしくお願いします。

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