死後、あなたを待っています。

冬蘭 瞬翔 -とうらん しゅんと-

第1話 煽り運転と死後

「どこ…?」


どこを見ても真っ白な空間。

かすかに聞こえる風の音。


「そうか、やっぱり死んだのか。」


状況を理解するまで時間がかかったようだ。

だが、なぜ状況把握できたのかは謎だ。



そう、ここはあの世。

人が死んだら一度は来る場所。



この死人は『相葉 詩月(あいば しづき)』

21歳で亡くなった。

普通の家庭に生まれ、普通に暮らし、スポーツ推薦で少し良い大学に行っていた。



急に真っ白な空間の底が抜けた。


「な、何!?」


落ちた先には大きな人影が見えた。

詩月はしりもちをついて少し痛がった。


「相葉 詩月…いや、魂番号8億4163万2638…」


誰かはわからないが、とても低い声で呼ばれる。


「えっと………僕のこと…ですか…?」


だんだん姿が見えてくる。

詩月はおそるおそる近づく。


「私に近づくとは、いい度胸だ。」


詩月は止まり、その姿を確認した。


整った顔立ち、オレンジ色のウルフカットの髪型、赤い豪華な服装に金色のアクセサリーの数々。

一言いうなら『イケメン』

だが、同じ人間にしては、少し怖かった。


「今は、詩月と呼ばせてもらおう。」


その『イケメン』は偉そうに言った。

詩月は少し目を逸らした。


「自己紹介が遅れた。私は、”閻魔”だ。」


詩月は疑った。

詩月の知っている”閻魔様”は、大きくて、屁げが長くて、怖い表情をした方だと思っていた。


「まあ、疑うのもわかる。だけどあからさまに表情に出すのはやめてよw」


詩月は自分では顔に出していないと思っていたので、まさか考えていることがわかるのかと思った。

詩月はあまり顔に出ないと周りからよく言われていた。

疑うことを知らない詩月はここで確信した。



「さて、本題に入ろうか。詩月、君の過去を見せていただく。」



閻魔様は、後ろにある本棚から一冊の本を手に取り、とても大きな机に本を置き読み出した。

3分経った頃、閻魔様がその本を閉じ、詩月に近づき口を開く。


「詩月、勿体無い人間だぁ…」


詩月は不思議には思わなかった。

自分でわかっていた。

亡くなるずっと前のこと、亡くなる直後のこと。


「相葉 詩月、人間の平均的な生活をしていて、何事も不自由がなく、普通な人間だった。スポーツが他の人間より少しズバ抜けていて、もっと頑張れば世界も取れたくらい。だけど…」


閻魔様は呆れたように言った。


「大学の単位が取れなく、留年が確定していた。高速道路で留年の電話を受けた後、一車線の道路で煽り運転をして自爆…と…

哀れだねぇ、親御さんもどう思うか…」


詩月はまた目を逸らした。

すると、閻魔様は詩月の顔をもちあげ、


「現実から目を背けるな。お前がしでかしたこと、この地獄で反省してもらおう。」


詩月は自分ではわかっていたが、強気になった。


「あぁ、受けてやろうじゃないか。早く連れて行け。」


閻魔様は思わず笑みが溢れた。

詩月は真面目な顔で閻魔様を見つめた。


「詩月‼︎合格っ‼︎」


詩月は「はぁ?」と言ってしまった。

閻魔様は微笑みながら


「詩月、君に二択、地獄の生活を選ばせよう。

ひとつ!このまま地獄の罰を受ける…」


詩月は険しい顔で閻魔様の話を聞く。


「ひとつ!鬼として、地獄にきた人間を懲らしめてやる!

さぁ、どっちがいいかい?」


詩月は意味がわからなかった。

急に今後の死後の人生を選ばされて…だが、詩月の答えは一択だった。


「鬼、鬼になるよ。痛いのやだし。」


閻魔様は笑顔で詩月を抱きしめた。

詩月は嫌がって離れようとするが、優しい抱かれ方だが力が強く、振り解けられなかった。


「詩月〜、ありがとよ!期待してよかった!」


詩月は嫌がりながら


「わかったから、わかったから離して…」


次第に苦しくなる詩月を見て、閻魔様は手を離した。


「では、鬼として新たに誕生する詩月に、この私、閻 魔 様 から、名前をさずけようではないか!」


閻魔様は考え出した。ブツブツと候補を言っていく。


「ツヨヨ…ダサいな…オバカ…可哀想か?」


詩月は黙って聞いていたが、どれも悪口にしか聞こえなかった。

すると閻魔様は閃いたように言った。


「アオリ!どうよ、私にしては考えたぞ?」


詩月は「まぁ、これでいいか…」と呟き


「わかった、アオリね。」


閻魔様は「あっ!」と大きな声で言い


「詩月…いや、アオリ。私は次の人が待ってるから鬼の呪文を唱えるね」


詩月は(呪文とはなんだ…そのままじゃダメなのか?)と思いながら呪文を聞いた。


「鬼になぁ〜れ♡」


(安直だな)と思いながら聞いていると震えがきた。

全身が震えに震え、立つこともできなくなった。

1分経った頃か、自然に震えが収まった。

途端に、自分の額に違和感が出てきた。


閻魔様が鏡を持ってきて、アオリに見せた。

鏡の向こうに見える自分の姿は、小さい角が生えた自分だった。


「うんうん、特に不備はなさそうだ。じゃあ!地獄の世界へ!」


と言ったタイミングでまたそこが抜けて落ちていく………











あとがき

はじめまして、作者の『冬蘭 瞬翔(とうらん しゅんと)』です。

「死後、あなたを待っています。」第一話閲覧ありがとうございました。

小説自体、書いたことはありましたが、数年ぶりに書いたので手探り状態でした。これでも中学生の時文芸部でした。

絶対誤字脱字や、おかしい部分、あると思います。多めに見てください。

1話…長いですね…すいません。

この物語は、3、4年前くらいから想像だけで製作していた物語で、想像の中で完結したので文字に書き込みました。

これから、気分で書いていこうと思います。また見てくれると嬉しいです。

ツイッターやインスタグラムもやっています。

そこではこの「死後、あなたを待っています。」の作者である私が書いたイラストを投稿していこうかなと思っています。よければそちらもよろしくお願いします。

では、また2話でお会いしましょう。


ツイッター・インスタグラム

@Syunto_01_18

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