3-2

東十条商店街


S.A.が、鼻歌を歌いながら、楽しそうに歩いている。


S.A.「ララララ~……んっ!」


S.A.は、一軒の洋服屋の前で立ち止まった。服を見て、値札を見て、店へ入った。


S.A.「すいませーん。あそこに飾ってある服見せてもらえませんか?」


店員「えー、いいですよ。」


店員は、ショーウィンドウに飾ってあった服を取り、S.A.の元に戻ってくる。


店員「どうぞ、ご試着ください。フィッティング・ルームはあちらになります。」


S.A.「はい。」


S.A.は、店員から服を受け取ると試着室に向かった。


その様子を物陰から丼と雀が見ている。


丼「あの服を買うんでありんすね。」


雀「多分な。服屋に入ったんやし…。」


S.A.が、大きな紙袋を持って店から出てくる。


丼、雀、再び物陰に隠れる。


S.A.「あー、いい買い物をしたわ。次は何を買おうかしら?」


S.A.が、ゆっくりと歩いて行く。


丼、雀、ゆっくりとその後をつける。


S.A.「さっきは、気がつかなかったけど、今、確か、ドシンドシンと歩くような音がしたような……」


と言いながら急に振り返る。


丼と雀は物陰に隠れるが、丼の大きな腹がポストの陰からはみ出している。


S.A.「やっぱり、気のせいだったのかしら。」


と言って、また歩き出す。


5,6歩、歩いてから、また呟く。


S.A.「やっぱり、音がする。今度はバサバサという羽の音が聞こえたような……」


S.A.が、振り返る。丼の腹が今度は電柱からはみ出ている。よく見ると、その腹の後ろに、大きな羽のような物が見えている。


S.A.「やっぱり、音がしたような気がしたのは、気のせいか!」


と大きな声で言った。


丼「雀、どうやら、まだ見つかっていないようでありんす。大丈夫でありんす。」


と雀に小声で言った。


雀「ほんまか?

すでに見つかってんちゃう!?」


とそれに応えた。


S.A.は振り返った。


S.A.「見つかってるに決まってるでしょ。そんなデカイ体、完全に隠せてると思ったわけ?」

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