嘘つきのあめ。
弥生 あまね
序章
ヒトが産まれたのは約500万年前だと云われているが,その時人類は何を想ったのだろう?
白紙に彩られた其の世界で,ヒトは何を創造し何を書き出すのだろう。
或いは,何の縛りを付け足すのだろう。
──人類はある意味愚かなのだ。
何でも書き足せる,その真っ白な白紙こそが我々人類を縛るモノであると言うのに。
100万年前,人類が漸く繁栄してきた頃,突如として人類に“痣”が目視された。其の痣は後に“浮痣”と呼称される事となるが,当時の人類は其れを“神の印”だとして一部の人間を崇め奉った。
仄かに赤みが掛かった,薔薇模様。
神が描いたとしか考えられない黄金比で彩られた其の痣が浮き出ると同時に,痣がなかった者たちにも例外なく痣が浮かび始めた。
仄かに青みが掛かった,椿模様。
仄かに黄色みが掛かった,歪な弧。
人類はその痣を土台に,本来なら平等であるべき人間を痣を基礎に呼称しつつ,階級制度を設けていった。
繁殖能力が低く,一番痣の綺麗な薔薇模様の『愛』
続いて一番浮き出やすいとする椿模様の『精神』
最後に,歪で醜い弧の『月影』
其の階級制度が創造されてから,およそ1000年が経とうとしていた。
階級制度は定着し,痣による様々な特徴を研究しながら,人類は月影への冒涜をし初めて居たのだ。
差別と呼称される其れは,主に雑務を職業とする精神達のストレス発散場所,愛による無差別な暴力等が挙げられた。
──只,醜いだけなのに。
──只,歪なだけなのに。
自分の意思で動く事すら許されぬ奴隷に,何故我々が。
月影をやがて飲み込んでいった憎しみは,ある一人の小説家により表現された。
が。
人類全員がその小説に阿鼻叫喚し,“月影人権回復運動”と称される反社会的組織が暴動する中,人知れず病院で夏を騙っていた精神が存在した。
名を,
これは,そんな精神が自殺未遂を犯してまで会いたいと願った少女,
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