薔薇の姫は、推しを語る  3

「レティシア……」


「何ですか、フェリス様? お顔赤いです、もしや御熱……? 御風邪……? きっとサリアで雨に濡れたから……早く御休みに……」


心配になってきた! レティシアの為にたくさん魔法使って、サリアに行ってくれたり、母様の庭の枯れた薔薇を再生させてくれたりして、御熱が出て来たのかも!


「いや違う……レティシアにびっくりさせられて……」


「私? 私、何かしました?」


「生きるときも死ぬときも一緒って……」


「え? え? だって、一緒です!  私はフェリス様の花嫁だから……」


「ホントに? レティシアはずっと僕といてくれる? 運命の乙女がどうとか言って、他の誰かに気軽に僕を譲ったりしない?」


「……ゆ、ゆ、譲りません!」


フェリス様が拗ねてはいけないので、レティシアは頑張ってそう言う。


いまのところフェリス様に運命の乙女の影はないし、レティシアはアドリアナにはフェリス様を譲るつもりはないので! 


「十年後も、我が妃にそう言って貰えるように、僕は頑張らないと」


「十年後?」


十年。とっても先のお話。


「うん。十年後、レティシアが大きくなって、僕が老けてても、そう言って貰えるように」


「老けたフェリス様……想像できません」


うーん、どんなかんじなの、老けたフェリス様? 


十年後も、御髭は生やさないで欲しいな、フェリス様の綺麗なお貌に。


幸い、竜王陛下もマリウス陛下も御髭ないわ。御髭反対なの。


「レーヴェは老けなかったそうだけど、流石に僕は歳はとると……」


「大人のフェリス様もきっとかっこいいと思います~」


十年後、二十七歳のフェリス様。


前世の雪と同い年だ。


どうか、その頃のフェリス様が、いまよりもっと自由でありますように。


いまよりもっと幸せでありますように。


いつでも望む。


十年後も、レティシアがフェリス様の隣にいられたら、それは嬉しいけど。


そんなことはわからないから。


「うん。十年経ったら、大きくなったうちのレティシアを誘惑するつもりだから、その頃にはいまよりかっこよくなりたいな」


「……? 気の長い話ですね」


夢のように、遠い未来のお話。


「そうかな? レーヴェが千年、死せるアリシア妃を想ってるのと比べれば、ちっとも長くないと想うけど」


「それは、そうですね……!」


竜王陛下はいまもアリシア妃が好きなのかな? 


逢えなくても触れられなくても話せなくても?


ずっと好きでいられるの? 


そんなに誰かを好きになったことがないから、レティシアには想像もできないような、長い恋だけれど……。


ディアナの娘たちはみな、竜王陛下のような愛情深い夫を望む、てマーロウ先生言ってたな……。


「僕は、成長していくレティシアと一緒にいられる」


「一緒に笑って、一緒に困ったりして、フェリス様と一緒に成長していけるといいなって……」


うちの叔父上や叔母上、大変、とか。


マクダレーナ王太后様がまた妄想で偉いことに、とか。


困ったときも、フェリス様と二人で一緒に頑張れるといいなあって。


……そんな風に想わせてくれる人に逢えて、サリアの女神様にも竜王陛下にも感謝してる。


朝、目覚めるのが楽しいから。


目が覚めても、レティシアにはもう誰もいないって悲しくないから。


フェリス様はどうされてるかな、早くフェリス様とお話したいなーて想うから。

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