薔薇の姫は、推しを語る  2 

「買い被ってない?」


「買い被ってません。私の推しのフェリス様は御一人でも為すべきことを為し、多くの人とともにあれば人々を牽引なさる方と……」


職務がどうこうとか、王子様がどうこうとかいうより、何て言うか持って生まれた性格なんじゃないかしら。


「僕が凄い立派な人みたいだ」


「フェリス様、立派な方です」


レティシアが推しに盲目な訳ではなく(ちょっと盲目だけど!)、麗しの婚約者にメロメロという訳でもなく、普通によく出来た方だと思うの。よく出来過ぎてて心配になるくらい、かな。


「ほんと? 褒め過ぎじゃない?」


くすくす微笑いながら、フェリスがレティシアをひょいと抱き上げる。


「きゃー」


くまちゃんと一緒にレティシアは上昇する。


位置も高いけど、フェリス様のアップが……。


それにしてもフェリス様、もともと凄くお美しい方だけど、何だかちょっと柔らかい雰囲気になられたような……?


「フェリス様、急に抱っこしないでください」


「ごめん。レティシアが可愛すぎて」


でもレティシアもなんかこの位置にもちょっと慣れて来たような……?


んしょ、とフェリス様のほうに腕を伸ばして、バランスをとる。


「さっきもね、レティシアの嫌がることをしない夫にならなくては、てレイと話してたの」


「……? 私の嫌がることを、フェリス様がなさることは想像できませんが……あ! 一人であぶないことしないでくださいね! いつのまにか、フェリス様、サリアにも一人で行かれてて、驚きました。あんなに凄い嵐の中……」


「レティシアも来たよ」


「そうなんです。あれはどうやって行けたか謎ですが、きっと金色のドラゴンさんが、フェリス様が危ない! て私を飛ばしたんだと思います!」


原理はちっともわかんないけど、金色のドラゴンさんと遊んでたと想ったら、いつのまにかサリアにいたフェリス様の腕の中にいたので、フェリス様を心配されたディアナの竜が、レティシアを遣わしたに違いない。


「僕があぶない……うん、そうだね、危ないと言えば危ないよね、お相手とか……」


何故かフェリス様がレティシアの話に笑いを堪えてる。


ここ笑うとこなの? 相変わらずフェリス様の笑いのツボ、謎過ぎる。


「危ないところに行くときは、フェリス様は私を一緒に連れて行かないとダメです!」


自分の実家を危ないところ扱いはどうなのと想うけど、安全かっていうとそれもうーんなので。


それに危ないから、フェリス様は独り歩きしちゃダメ!  


リリア僧なんて竜王陛下の絵焼いちゃってたもん! 竜王陛下そっくりなフェリス様も危ない!


「危ないところに行くときは、僕は常にレティシアは置いて行きたいんだけど、心配だから」


「ダメ。ダメです。夫婦は一蓮托生なのです」


「一蓮托生?」


「生きるときも死ぬときも一緒です!」


「レティシア……」


フェリス様、赤面してしまわれた。なんで? いまのおかしかったかな?

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