シュヴァリエの薔薇の姫は、氷の美貌の王弟殿下を幸せにする
(レティシアがセフォラを連れて来たわ)
(夢見のセフォラ。レティシアといいセフォラといい、フェリスてやっぱり面食いよね)
(違うわよ。フェリスは性格の優しい子が好きなの。強めのマグダレーナと強めのレーヴェ様に育てられてるから)
お目付け役のレイとハンナを伴って、セフォラを薔薇の庭に案内すると、薔薇たちがはしゃいでいた。
(レティシア)
(私達のレティシア、お帰りなさい、サリアで苛められなかった?)
(また苛められたら、言いなさい。イザベラもアドリアナもネイサンも私達が懲らしめてあげるわ)
薔薇たちの声を聴いていたら、レティシアはサリアの王妃の庭を思い出した。
「薔薇さん達、ありがとう。でも意地悪ダメ。もう枯れたりしちゃダメ」
(そうなの? 優しいレティシア)
(レティシア、サリアの姉妹たちを再生してくれてありがとう)
(サリアに帰らないでね、レティシア。ずっとここにいて。フェリスといてね)
「レティシア姫は薔薇の精霊たちにとても愛されていますね」
セフォラが微笑んでる。
きゃー、この薔薇さん達の声、セフォラにも聞こえてるみたい。
「え。いえ。ただ薔薇さんたちが、わたしが泣いてたから同情してくれて」
でもこんなに可愛いのに、やることが大胆すぎるの、薔薇さんたち。
私が泣いたごときで、意地悪で枯れちゃダメなの、絶対。
(そうよ、セフォラ、私たちはレティシアが来てくれて嬉しい)
(フェリスを幸せにする娘がやっと来たのよ、今回ばかりはマグダレーナに感謝ね)
(あらマグダレーナに感謝はどうかしら、マグダレーナ、いつもフェリスに意地悪だし……)
(そうねぇ。あんなにレーヴェ様にそっくりなのに、マグダレーナに虐められて、すっかり後ろ向きなフェリスになっちゃったの……だから私達にはレティシアが必要なの)
(そうよ。レティシアに愛されて、奪われたものを取り戻して、幸福に微笑うフェリスが見たいの。私達から可愛いレティシアを奪う者には容赦しないわ)
(しないわ)
(しないわ)
「ど、どこにも行かないので、私はフェリス様のところにいたいので、薔薇さんたち、何だかダークになってはダメです」
薔薇の精霊さんはやっぱり棘があるから、怒らせると怖いのかしら?
春のほんの短いあいだだけ咲いて、あっというまに風に乗って散ってしまう日本の桜の花とは違うかも?
「…………」
(セフォラが笑ってるわ)
(あら、フェリスじゃないけど、夢見のセフォラもあんなに可愛らしく笑うのね)
「レティシア姫は本当にお可愛らしい。フェリス様もシュヴァリエの薔薇たちも、レティシア姫に夢中な気持ちがよくわかります」
「……? 私は不吉な呪われたレティシアだったのですが、ディアナにきて、フェリス様がとてもとても大事にしてくださるので、ちょっとだけ可愛くなりました!」
自分で可愛いって申請はどうなの、だけど。
フェリス様がいつも僕のレティシアはとても可愛いって仰るから、レティシアが、私は少しも可愛くないのです! とフェリス様のご友人に言うのは憚られる。
ちょっとだけでも可愛いフェリス様の婚約者であらねば……ありたい……(希望)。
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