第319話 サリアの災いを呼ぶ姫 17
「僕もだ。レティシアがいてくれると、僕の言葉の通じる人が、僕の宮にいてくれる、と安心する」
不意に、レティシアが初恋だと思うぞ、フェリスの、との精霊さんの声が耳に蘇って、レティシアは林檎のように真っ赤になってしまった。
それは誤解なの! 精霊さんの! 精霊さん、政略結婚したことないって言ってたし。
「レティシア? 頬が赤い。熱が……?」
「ふ、フェリス様。貌が近いです」
「うん。寄せてるから」
「いえ、そうではなくて……」
うわーん! 物凄い綺麗な貌がドアップで攻めて来るよー!
精霊さんが初恋とか言うから、なんか緊張するじゃないー!
「……熱はないようだが」
フェリス様はこんな方だしね……!
大真面目な天然と言うか……。
いやこんなちびちゃん相手に何か意識する訳ないけど……!
「だ、大丈夫です! ちょっと、いっぱいいっぱいに……!」
「何がいっぱいいっぱいに? やっぱり、レ……精霊さんが何か余計なことを……」
うわーん、余計に顔を寄せて来ないで欲しいー!
「そんなことないです! フェリス様のお貌が近すぎて、緊張しただけです!」
「僕の貌に? 何か凶悪な相でも出てる?」
フェリス様はちょっと悩む風。
「え? いえ、きょうあくな相は全然……」
とっても優しそういつものフェリス様だけど。
「そうか。よかった。サリアの占い師をどうしようかと思ってたから、悪い顔になってたかと」
にこっと笑うフェリス様。
「サリアの望みが花嫁交換なら、それを希望してるのは占い師ではないと思うので、占い師を責めても、たぶん可哀想です」
日本で言うと社畜のようなものだからね、サリアの占い師は。
ディアナは竜王陛下と魔法の権威が強いので、魔術師や占い師ももっと立場が強いのかもだけど……。
「レティシアが優しいのは愛しいけど、僕の花嫁への無礼は詫びて貰う。二度と不心得を起こさないように」
「サリアの叔母様はきっとフェリス様を気に入られて、レティシアには惜しいと思われたのだと……」
「何故? レティシアの母上の首飾りを返して貰おうと、僕があまりお奨めじゃない首飾りを贈ったから?」
あんまり褒められた話じゃないと想うが、と肩を竦めている、美しい婚約者様。
「だって……フェリス様、夢に出て来る王子様みたいですもの」
「……? 僕の? レーヴェの貌が? 夢に出て来る王子様……?」
それは些か疑問を感じる、と首を傾げている。フェリス様って、本当に……。
「竜王陛下より、フェリス様のほうが如何にもな王子様っぽいです。竜王陛下はやんちゃ! てかんじ」
「竜王陛下がやんちゃ……さすがレティシア」
何かツボに入ったらしく、フェリス様が大笑いし出す。
「んと、とにかく。いまいちな変人の王弟殿下だと思ってレティシアに押し付けたら、もったいなかったわ、て気を変えられたのかと……」
でも、国内ならレティシア関係、叔母様のよくない我儘で何とかなることも多々あるとして、ディアナは他国だからそんなことしちゃ絶対ダメ……せっかくの縁なのに、おかしな国だと疑惑を抱かれちゃう。
「いまいちな王弟なのも変人なのも本当だけどね。レティシアくらい心のひろい姫でないと、僕の御相手は大変だと思うよ」
フェリス様の自己評価はおかしいんだけど(そこはもう少しくらい竜王陛下風でもいいですよ!)、厄介払いしたつもりの呪われた王女のレティシアの婚約者が、こんなにどう見てもきらきらと煌めいてらしたら、叔母様も惑乱して暴挙に出ちゃうのかなあ……(出ないで欲しいけど!)。
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