第194話 竜王家の不和を望む者と、魔法の王子
「フェリス様……、何か、わたしたち、透けてきました……!?」
「うん。危ないし、ちょっと他の人に見えなくしてみた」
これは、姿を隠す魔法なのかな。
レティシア、レイ、フェリス様の姿を、ここにいるけど、見えなくしたみたい。
レティシアの姿も見えなくするのに、フェリス様とレティシアがくっついてるほうが、簡単だったのかな…? それならそうと言って下されば、抱き上げられても、びっくりしなかったのに?
「あっというまに、王弟フェリスは謹慎を解かれて、婚約者と婚礼前の旅だと……? どうなってんだ、この国は。ディアナ王は、美貌の王弟に懸想でもしてるのか? 甘すぎるだろう!」
篝火の下で、リリア僧らしき人達が、何かボソボソ話してる。聞きたいけど聞こえないーと思ってレティシアが懸命に耳を澄ましてたら、フェリス様が、魔法で細工したのか、急によく聞こえる音量になった。
陛下がフェリス様に懸想してたら、異母兄弟の因縁渦巻く近親相姦BLになっちゃうけど、そんな闇の気配はかけらもなかったわよ(あんまり詳しくはないけど、レティシアも現代日本人だったから、BLも知ってるよ~)。
陛下のフェリス様への陽だまりみたいな溢れる愛は感じたけど。
「王太后は常に王弟に厳しいが、マリウス王とフェリス王弟の関係は良好だ。あれがずっとディアナ攻略の壁だな。この七年のあいだも、あの兄弟に亀裂さえ入れば、もっと早くに……ディアナは……」
マリウス陛下とフェリス様が仲がいいのが、ディアナ攻略の壁……?
ん……?
この人たち、なんだか凄くとんでもないこと言ってない……?
「……フェリス様……」
「ね? レティシアに聞かせたいような楽しい話じゃないから……」
まるでフェリス様は、今夜の薔薇のマカロンは出来が悪い、とでもいいたげな顔をしている。
「私にはお菓子の話しかわからないから?」
「そんなこと思ってないけど。これからお嫁に来てもらう大事な姫に、何か不穏な話聞かれて、怖がられても嫌じゃない?」
不思議。
あのよそ者らしき男の人たちが、何かよからぬこと言ってても、フェリス様はとても冷静。
王太后様に嫌な事言われてるときみたいに、惑乱してない……。
「うーん。悪だくみをする知らない人より、王太后様のほうが怖いです」
王太后様の振る舞いのほうが、あなたをより傷つけるから。
「それは、そうだね」
フェリス様がレティシアの耳元で声もなく笑うからくすぐったい。
「あんな綺麗な顔して、しぶとい男だよなあ、あの王弟。あのおっかない王太后に、さっさと、手打ちにでもされときゃいいのに」
何言っちゃってくれちゃってんのよ!!
殴りたい、この、ガラの悪いリリア僧たち!!
「さすが邪神の僕だよなあ……、国王が竜王剣抜けないって話は、よかったと思うんだけどなあ、ディアナの国民と来たら、なかなかこっちが乗せようとしても、話に乗らないし……」
「あれって、元ネタはちゃんとあるのか……?」
「さあ? オレはそこまで聞いてないが、嘘でも本当でも、ディアナ王家に不和を起こせさえすれば、成功だろう……」
蒼い炎が、レティシアを抱いてないフェリス様の左手の上で燃えている。
ああ、これは、マーロウ先生が、ディアナの民は苦手な人が多いって言ってた火の魔法?
フェリス様は水神の家系の王子様だけど、火の魔法も使えるんだな……。
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