第99話 百花の庭を、手を繋いで、ずっと一緒に歩いてね

「まあ、見て、サリアのお姫様……、いつのまに、ルーファス王太子殿下とまで仲良く……」


「何と……さすが、あのフェリス王弟殿下を虜にした方は、お小さくても私共とは違いますね……」


何を言うとるのじゃ、五歳児相手に。


フェリスと、ちゃんと顔は出したし、疲れ果てたし、もう宮に帰ろうか、という話になって、王太子と連れだって中庭に戻ると、美声じゃない雀が囀っている。


ルーファス王太子は、女官からの逃亡を諫められたものの、大好きなフェリス叔父上に遊びに来ていいと許可を貰ったのでご機嫌だった。


レティシア的にも、ルーファス王太子様が遊びにいらしたら、フェリス様、最高ですよね、な、そう思うだろ、て同担トークできるかしら……と楽しみではある(だいぶまちがい)。


大失敗しちゃったけど、王太后にもお逢いした!


次回はもっとうまく話を収められるように、図書宮で嫁姑本?後宮陰謀もの?でも読もう! その方面はこれまで全くカバーしてなかった!(必要なさすぎたため)


ところで、王太子とは手を振ってにこやかに別れたけど、これはずっと、手を繋いで歩くものなのかしら? なんだか手を繋いでるの、レティシアとフェリス様だけの気がするけど……。


「フェリス様」


「ん?」


「どうして、私達、ずっと手を繋いでいるのでしょう? フェリス様が歩きにくくありませんか?」


「レティシアが迷子にならない様に」


「??……なりません。王太子殿下ではありませんので」


「僕と手を繋いでるの、いや?」


「いえ。そんなことは……、」


「何なら、肩に乗せてても可愛いと思うけど、レティシアのサイズ的に……」


「う…、それは子供っぽいから嫌です」


うーん。こんなところで肩に乗せてもらうのは嫌だけど、フェリス様は背が高いから、あのぐらいの位置から人を見るのってどんな感じかなーと興味はある。


夢で金色のドラゴンに乗せてもらって、下界の街並みを見下ろしたとき、楽しかったなー。


「そう? 可愛いと思うけど。じゃ、手繋いでて。……僕が、心細いから」


「フェリス様が?」


それは嘘だと思うんだけど、たぶんレティシアを心配してくれてるんだよね。


お庭の薔薇や春の花たちの香りは心地いいのに、ねっとりと空気が重い。

何というか瘴気が纏わりつくような気がするので、フェリス様と手を繋いでると確かに安心する。


「ご覧になって、フェリス様よ、やはり素敵……あんなに怒りっぽい、お行儀の悪い、我儘なお妃様を迎えられて可哀想……」


「まあ、あの方が王弟殿下のお妃さま……? とても可愛らしいけど、恐れ多くも、王太后様に口答えをなさったって……ねぇ、あんなちいさな方が本当に……?」


好奇心、揶揄、羨望、嫉妬、たくさんの視線とひそひそ声が纏わりつく。


そうです。


私が、買ってはいけない、だいぶ強めのお姑様からの喧嘩を買ってしまったお馬鹿さんです……、しくしくしく。


「雑音は聞き流して、前を向いて、顔をあげててね? ここにいる御令嬢方のなかで、 僕のレティシアが一番可愛いし、一番優しい姫君だよ」


「それはだいぶ謎ですが、フェリス様の激甘採点には感謝です」


うん。でも、妬まれても仕方ないかも。


レティシア的には、結婚のご挨拶のお茶で、側妃の相談はないでしょ!  何寝惚けてるのよ! 

と怒ったけど、もしかしたらずっとずーっとフェリス様のことが好きで好きで好きで、どんなお話だろうと、一縷の望みをかけてた姫君がいるかもだものね。


フェリス様はこんなに素敵なんだし……(ちょっと中身は天然だけど)。


大丈夫です!  

レティシアが、果物みたいに側妃選ぶとかある訳ないでしょ! ですけど、ちゃんと、うちのフェリス様をとっても大事にして下さる、真実の恋でしたら全力応援しますよ!  とも公表できないので、すみません……仕方ないので、恨まれておきます……。

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