第7話 あやしい姫様
(なんだか、姫くらいの子と話してるかんじじゃないな。大人と話してるみたいだ)
それにしても。
フェリス様、綺麗なだけでなく(あれ、なんだか微妙に失礼な言い方になってしまった…)、なかなか勘の鋭い方なのかも。
せっかく優しくして頂いてるんだから、怪しい不気味な姫だと不審がられないように、気をつけねば。
我ながら、どうにも怪しい姫なのだけれど。
レティシアは、ディアナに政略結婚で嫁がされた、サリア王国の先代王の娘だ。
それは間違いのない事実なのだけれど、五歳のレティシアの頭の中には、
日本という国で、二十七歳で交通事故で死んだ春乃雪の記憶がある。
日本という国は、探しても探しても、こちらの世界の地図にも、歴史の本にもなかったので、いわゆる小説や漫画でよく読んだ異世界転生という離れ業を、雪はとげたのだと思う。
転生なんてアニメや映画で見るもので、自分で体験するものだとは全く思っていなかったのだが。
二十七歳。
初恋も初デートもなく、薄給で残業に身を捧げ、確かに未練で化けて、ジゼルになりそうな死に方ではあったが…。
でも最初から転生ならいいけど、まさか、このもともとのレティシアちゃんの魂を弾き飛ばしたりしてないだろうな…、こんな小さい子にそんなご迷惑かけてないだろうな…、と我ながら激しく不安だ。
そこらへんの原理はどうなっているのか、雪にはさっぱりわからない。
不慮の事故で死んで、こんなきらびやかなファンタジーな世界に、王家の者として生まれ変わっても、まさかまさか他人様にご迷惑はおかけしてないだろうな、と思ってしまう雪レティシアは、典型的な ザ 日本人の庶民である。
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