第4話 婿殿について尋ねてみる

「ちいさい姫といえど、きっと、私の悪評は聞いておろう? 

私の妃では、この宮廷ではあまり楽しく過ごせぬかもしれぬが…」


 フェリスが、レティシアの小さな手をとる。


「……あの」


「ん?」


 聞きにくい。

 でも、気になる。


「どうぞ、何でも遠慮なくご質問を。姫?」


 遠慮して言い淀んでいたものの、フェリスに促される。


「どうして、フェリス様は悪く言われるのですか」


「うーん。どうしてだろうね」


 困ったように、彼は笑った。


「私としては、邪魔にならぬように、気を付けているつもりなのだが…、何だろう、ただそこに居るだけで目障りな男なのかも知れない」


 現ディアナ国王マリウス陛下は、フェリス様より十歳年上の二十七歳。

 フェリス様とは母親の違う異母兄弟だ。


「そんなことないです。フェリス様は目障りじゃないです」


 謙遜? だとは思うのだが、思わずぶんぶん首を振って、真面目に否定してしまった。

 悪い言霊になってはいけない。

 ちゃんと否定しておかなくては。

 この国に、言霊の概念があるのかは謎だが。


「……ありがとう。レティシア」


 ちょっと眩しそうに、嬉しそうに、フェリスが笑った。

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