黒いコンペイトウ
沙耶
第1話
路地裏にコンペイトウの入ったビンが転がっていた。ラベルには小さい文字で「虹色に出会えたらラッキー☆」。中には黒いコンペイトウが一粒きり。色とりどりの仲間たちは既に旅立った。誰かにおいしく食べられて、今頃は跡形もなくなっているだろう。残されたコンペイトウは(このまま誰の記憶にも残らず消えていくのか)と寂しく思っていた。
ある日ビンの近くに一羽のカラスが飛んできた。同じ色の塊が気になったようだ。おいしそうには見えないが、微かにいい匂いがする。おそるおそるビンにクチバシを入れて取り出し、思い切って飲み込んだ。
黒い塊はカラスの胃の中で溶け始めた。表面の汚れがなくなり、あらわれたのは虹色のコンペイトウ。誰の目にも映らずにひっそりと輝き、少しずつ消えていく。満足そうなカラスを残して。
黒いコンペイトウ 沙耶 @SayaPhotoba
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